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吸血鬼ですが、何か? 第3部 訓練編  作者: とみなが けい
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訓練地の死霊屋敷に到着、すぐにお昼ごはんだと思った…

俺と真鈴は四郎の言葉にぎくりとした。


「ま、まぁ、四郎。

 それは死霊屋敷に着いてからね。」

「あ、そうそう!スーパーに言って食材買おうよ!

 四郎、なんか美味しいアメリカ南部料理作ってよ~!」


真鈴が料理に話を逸らした。


「まぁ、息抜きも必要だし旨い料理は士気を上げるからな。

 スーパーで食材を見繕って作れる料理を作ってあげよう。」

「楽しみだな~!四郎がいた農園てアメリカのどこだっけ?」

「ルイジアナだ。」

「ルイジアナってどんな料理を食べていたの?」

「うむ、われの居た農園はニューオーリンズから少し内陸に入った所でなバトンルージュからもそう遠くない所だった。

 ポール様はフランス人入植者の一員として初めは仲間と共にフランスからアメリカ大陸に渡り、シュプクトと言う所にいたが、その後仲間と別れてルイジアナに移ったそうだ。」

「シュプクト…なんか変わった名前の所だね。

 それに、ポールさんの仲間ってやっぱり吸血鬼達なのかな?」

「うむ、シュプクトはアメリカの大陸の北の方だな。

 シュプクトとは先住民の呼び名をそのまま地名にしたようだな。

 ポール様の仲間も恐らく吸血鬼だと思うぞ。

 ところでルイジアナと言う名前のルイはフランス、ブルボン王朝の名前がついているようにフランス語を話すものも多かったな。

 その他スペイン人、アフリカから連れてこられた黒人は勿論、様々な先住民族もいたな。

 結構色々な民族がいたぞ。

 われのような日本人はおそらく他にいなかったようだが。

 料理なんだがケイジャンとかクレオールとか聞いたことは無いか?」

「テレビでケイジャン料理とか聞いた事があるよ。」

「そう、ケイジャン料理と言うのは、まぁ、庶民の味と言うかな?

 クレオール料理と言うのは上流階級の料理と言えば良いか…辛みはケイジャンの方が強い物が多いな。

 われはどちらも良く食べた。

 また、ルイジアナではコメも良く作られていて、われもブレッドとライスが半々、ケイジャンとクレオールも半々と言う感じの食生活だったぞ。

 黒人奴隷が作る豆とくず肉を使った煮込み料理も良く食べた物だ。」

「へぇ、アメリカでもコメを食べていたんだね。」

「ルイジアナはコメの産地としても有名だぞ。

 日本のコメとは少し毛色が違うがな。

 先住民のアコラピッサ族やアカタパ族などの友人がいて素朴な料理も食べたぞ。

 あと、ザリガニ料理が旨かったな。

 海も比較的近かったから時折魚貝類も食べたな。

 だが、当時は新鮮な魚と言う訳では無かったから魚臭さを消すためにスパイスは強めに利かせていたぞ。」

「え!ザリガニ食べるの?」

「何を言う、ザリガニはルイジアナの名物だぞ。」

「そうなんだ~。」

「たしか、アメリカザリガニって日本人が食べるために輸入したのよね。」

「おお!日本でもザリガニを食べるのか?

 あれは旨いぞ。

 あとは…まぁケイジャンスパイスがあればな…大抵のケイジャン料理に使うのだが…」

「それ、日本でも売ってるかな、四郎、材料があれば作れる?」

「うむ、パプリカパウダー、ガーリックパウダー、クミン、オレガノ、チリペッパーと胡椒、塩があれば作れるぞ、何かと使うから材料があれば作り置きしておこう。」

「あ!スーパースーパー!あれ結構大きいから食材結構種類がありそう!」


真鈴が大型スーパーの看板を指さし、ランドクルーザーを駐車場に入れた。


「真鈴は気楽そうだけど…俺は四郎が言う訓練が少し不安だよな…」


車を降りて俺は四郎に小声で言った。


「彩斗、お前は物事を為す前から最悪な事ばかり考えるな~それが用心と対策を考える事に繋がれば良い指揮官になれそうだが、お前はどうも失敗した時逃げる時殺される時ばかり考えて怖がるだけだ。

 それは直さないとな。

 そんな考えでは今までの人生で欲しいのに手に入れられなかった物が沢山有ったのではないか?

 その原因をお前は周りの状況や人のせいにしてきたかも知れないが、一番大きな原因はお前の考え方なのでないか?

 悪い想像はそれが強くて恐れていたら余計に悪い結果を引き寄せる物だぞ。

 なに、今は不安な事は考えずにどんな食材があるか見ようじゃないか。」

「彩斗、四郎、早く行こうよ~!

 あんたらがドア閉めないと鍵を掛けられないよ~!」


車から離れてスーパーに向かう真鈴が俺達を振り返り手招きをしていた。

俺達が車のドアを閉めると真鈴はカギを車に向けてロックした。

俺達はスーパーに入りカートを押して食材を買い付けた。

四郎はスパイスコーナーで先ほど言っていたケイジャンスパイスの材料が全部揃い、ホクホク顔だった。

また、魚売り場で新鮮な魚に改めて感動していた。


「まったくこんな内陸なのに新鮮な魚が手に入るとはな…われの時代とは大違いだ。

 われの時代は食材の魚があると少し離れた所でも魚の臭いが気になった物だったぞ。」

「四郎の時代に冷蔵庫があればね~、今日は何を作ってくれるの~?」


「真鈴は食いしん坊だな。

 まぁ、今日の料理は君らの訓練次第だな。

 とりあえず野菜の他に魚とチキンとビーフは買っておこう。

 もしもキャンプをするなら火を焚いてチキンジャンバラヤで済ますかも知れないしな。」

「それも美味しそうじゃん!」

「屋敷に泊まるならなにか煮込み料理かな?

 黒人が良く作る豆と肉を煮込んだ物とか…スパイス強めのフライドチキンも良いな。」

「それも美味しそうじゃん!」

「彩斗や真鈴が食欲があれば良いけどな…まぁ、どんな時でも食える体作りも訓練だと思うが良いぞ。」

「うん!それだけは自信あるわ!」


真鈴が気合を入れて頷いた。

四郎がやたらにナッツバーやシリアルバー、チョコレートバーを買い込んで真鈴が四郎の甘い物好きをからかった。

俺達は買い物を済ませ、荷室に積みきれない物は後部席、四郎の隣に積んで出発した。

死霊屋敷のゲートを開けてランドクルーザーを入れた。

車の中から四郎が屋敷を見上げた小さく手を振った。


「屋根裏の住人達が窓からこちらを出迎えてくれているぞ。」


俺と真鈴も見えないながらも屋敷の屋根裏の窓に手を振った。


「この前の狼人の一件でわれらに友好的になってくれたようだな。」

「あたし、2階の可愛い女の子にお土産買って来てるんだ~!」


真鈴が屋敷の玄関前にランドクルーザーを停めながら言った。


「それは良い心がけだな。

 何を買ったのだ?」

「うふふ、それはあとでね~」


俺達は屋敷玄関横のシーサー像!の下からカギを出し、玄関扉を開けた。


「お邪魔しま~す。」


俺達は自然に頭を下げて挨拶をした。


「四郎、あの子、いる?」

「ああ、階段のところにちょこんと座っているなリラックスしてわれらを見ている。」

「そう、良かった。」


真鈴はランドクルーザーに戻り、真鈴の荷物の中から子供ほどの大きさの可愛らしい服を着てつぶらな瞳の女の子の人形を取り出して大事そうに抱えて持ってきた。


「この前四郎が人形喜ぶかもって言うから買って来ちゃった。

 大学の近くにドール専門店があったからね。

 どこに置けば良いかしら。」

「真鈴、それは良いアイディアだな。

 階段の踊り場に置けば良いと思うぞ。」


真鈴は階段を上がって踊り場の横に人形を座らせた。


「四郎、どう?喜んでる?」

「うん、興味深そうに見て、人形の頭を撫でたりしているぞ。」

「それは良かった!」

「さて、荷物を運び込むぞ。

 自分の部屋は彩斗と真鈴で適当に決めろ。

 終わったらあの戦闘服にブーツ等装備をつけてここに集合だ。

 かかれ!」


「イエッサー!」


俺達が元気に返事をして四郎に敬礼をした。

四郎は苦笑いを浮かべた。


「別に軍隊じゃ無いからそんな事はしなくて良いぞ。

 それにわれは従軍した事無いからな。

 さっさと荷物を運び込もう。」


俺達はまずキッチンに食料品や食器などを運び込み、2階の部屋を俺、真鈴、四郎が使う部屋を決めてそれぞれの荷物を運び込みセキュリティショップで買った戦闘服に着替え、それぞれの装備を付けて玄関ホールに集合した。

既に戦闘服に着替えた四郎が待ったいた。


「遅いぞ君達!

 さて、君達の装備を点検するかな…」


四郎は立っている俺と真鈴の装備を上から下までチェックし始めた。

靴ひもの縛り方を直され、装備品をつけたベルト、それを釣るハーネスの高さを調整された。

そして、防刃チョッキとヘルメットを着てベルトの後ろに付けたポウチに薬局で買った靴擦れ用のパット、傷用の絆創膏、手拭いなどを入れてくるように言われた。

更に先日俺達にくれた小雀ナイフと子猫ナイフをベルトに着けてまたここに戻るように言った。

それらを着けて再び玄関ホールに戻ると、四郎は書斎から足を折りたためるテーブルを持ってきていてその上に置いてあるそれぞれ水が入った水筒と一人当たり3本づつのナッツバーを持つように言われた。

俺達がナッツバーをポケットに入れて水筒をベルトに装着すると四郎が腕にはめたSINNの103を見た。


「昼飯にはまだ少し時間があるから敷地を一回りしようか。」

「うん、いいね!」

「どんな所かワクワクするわね!」


俺達は四郎の後をついて屋敷を出ると敷地の外れの山まで歩き始めた。

この時すでに訓練が、結構きつい訓練が始まっている事を俺と真鈴はまだ気が付かなかった。


四郎の後をついて歩きながら、爽やかな5月の風をそして美しい自然の風景を俺と真鈴は楽しんでいた。







続く




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