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吸血鬼ですが、何か? 第3部 訓練編  作者: とみなが けい
22/23

蔵六はとんでもない量の武器を屋敷にため込んでいた…四郎がプーチンの首を撥ねに行かないか心配する俺…

俺はジャグジーに入り堪能した。

身体中をアブクが通りすぎ弄ばれ、四郎が変な声を上げてしまうのも非常に判る。


風呂上がりの俺は自室からパソコンを持って1階の暖炉がある広間に行き、武器庫から九九式小銃と小型のピストルを持ってきてテーブルに置くとパソコンを開いて調べ始めた。

どうやら小型の拳銃は南部式小型拳銃と言う物で、只でさえ威力が弱いと言われている南部十四年式拳銃で使われる8ミリ南部弾よりも、さらに威力が低い7ミリ南部弾という弾丸を使う物だった。

世界でも最底辺の威力の日本警察官が使うピストルよりも威力が弱い。

俺は地下で戦った狼人の事を思い浮かべた。

あの頑丈で狂暴な体にこのピストルの弾を撃ち込んで効果があるのだろうか…いやいや無理無理~!と俺は頭を振った。

まぁ、離れた所から攻撃できるけれど、いざその場にいたらこのピストルを撃ち込むより催涙スプレーを噴射して狼人が混乱している隙に逃げだす方がよっぽど現実的だと思った。

俺は気を取り直して九九式小銃を調べた。

弾丸の口径が7・7ミリ。

南部一四年式の口径が8ミリでそれより小さいけれど拳銃用の弾と小銃用の弾では威力がけた違いに大きい。

小銃としては大口径だ。

九九式小銃はその当時世界で使われている各国の小銃と同じレベルの破壊力があると知って少し安心した。

色々検索すると近距離ならば人間の頭を吹き飛ばす威力があるとの事だ。

俺は近距離から大口径小銃弾で頭を撃たれて破裂した人間の頭の写真を見て顔をしかめた。

このくらいの威力なら悪鬼の頭を撃ち抜けば一撃で殺せるだろう。

戦場を知り兵士の心理を知るベテランの兵士が戦闘中に必ずヘルメットをかぶる理由という記事を見つけて読んでみたが、頭の保護という理由の他に、頭に小銃弾を受けて頭が派手に破裂して吹き飛ぶ姿を仲間の兵隊に見せて士気を下げないためだとも書いてあった。

全くその通りだ、戦争ですぐ隣のヘルメットをかぶらない兵士の頭が破裂してびっくり人形のようになったら俺は絶対に動けなくなる自信がある。

戦争は恐ろしいと俺はつくづくと思った。


こんなものを街中で撃つ訳にはいかないだろう。

下手をすると巻き添えで関係無い人間を殺してしまうかも知れないし、大きな音を出すと騒ぎになってしまう。

やはり街並みや住宅街ではナイフかせいぜい弓矢、後はスタンガンか催涙スプレーで悪鬼を混乱させて、その隙に四郎に仕留めてもらうしか戦う方法が思い浮かばなかった。

その後、九九式小銃の分解手入れの仕方など調べていると四郎が見慣れない変な形の筒と握りこぶし大の物を持って広間にやって来た。


「彩斗、武器庫の奥に何やら厳重に梱包されたものがあるので開けてみたらこんな物が出てきたが、いったい何だろうか?」


四郎がそう言いながら筒と塊をテーブルに置いた。

筒は3~40センチほどの丸いパイプに棒と紐が付いていて、棒の先に湾曲した板がついていた。

塊の方は、これは中央部が膨らみ、縦横に溝が走っている手榴弾のような形をしている。

四郎が手榴弾のようなものを手に取って手毬のようにポンポンと上げ下げしている。


「その筒もこの塊も結構重いな。」

「…四郎…それ、危ないかも知れないからそっとテーブルに置いて…」

「ん?そうなのか?」


四郎が手榴弾のような物をテーブルに置くところりと転がった。

俺は顔の血が引いて固まったが、四郎がテーブルから落ちそうな手榴弾のような物を手に取って置き直した。


「四郎、それに絶対に触らないでね…今調べるから。」

「うむ、判ったぞ。」


俺は筒に八九式と刻印が打たれているのを見つけパソコンで調べた。

八九式重擲弾筒と言う物が出てきた。

これは擲弾と言う爆発する弾を撃ち出す武器と言う事が判った。

そして、鉄の塊は…その弾で擲弾筒の説明の写真に出ていた九一式手榴弾と言う代物と同じだった。

九一式手榴弾は打撃信管と言って、安全ピンを抜いて信管を木やヘルメットなどの堅い物に当てると信管が発火して7秒ほど後に爆発する危険な爆発物なのだ。

擲弾筒の弾丸にもそのまま手榴弾としても使える代物だった。

俺はそっと丁寧に九一式手榴弾を手に取り両手でしっかりと持った。


「四郎…これと…同じのはどれくらい武器庫にあったの?」

「ん、まだ全部開けていないが奥に木箱が10個ほどあったな。

 開けた木箱にはこれ以外にも先が尖った鉄の物が一緒に詰め込まれていたな。」

「どれくらい…詰め込まれていたの?」

「うむ、かなりぎゅうぎゅうに詰め込まれていたな、まあ、どれも湿気を防ぐように彩斗の台所にあるビニール?

 そう、ビニール袋に入っていたぞ。」


俺は四郎の言葉を聞いてパソコンの画面を見た。

先のとがった物…それは擲弾筒と一緒に写っている八九式榴弾だろう。


「彩斗、手が震えているぞ。

 寒いか?」

「いやいやいや大丈夫だよ。ちょっと武器庫に行こうか。」


俺は手榴弾を大事に両手で抱えて慎重に歩きながら四郎と武器庫に行った。

恐る恐る開いた木箱に近づくと、それぞれビニール袋に入れられて乾燥剤が入れられた九一式手榴弾と八九式榴弾がずらりと並んでいた。

5~60発くらい入っているだろうか。

そしてその奥にはさらに木箱がうず高く積まれていた。

危険な木箱を見て固まった俺の肩を四郎が叩いた。


「どうした彩斗?」

「四郎、これは非常に危険な物なんだ…ここにこんなに置いてあると…」

「こんなにあると?」

「火事にでもなったら屋敷が粉々に吹き飛ぶかもしれない。」

「…火薬が…詰まっていると言う事だな…危険か?」


四郎は目を細めて小声で尋ねた。


「…凄く危険」


俺は小声で答えた。

四郎はやはり小声で言った。


「そっとこの場を離れよう。」


俺と四郎は足音を立てないように武器庫を出てそっと階段を下りて行った。

あと数段で1階の玄関ロビーに着くと言う時に勢いよく階段を下りてきた真鈴が四郎の肩を勢いよく叩いた。


「おまたせ~!自由時間まだ大丈夫だよね~!」


肩を叩かれた衝撃で四郎の体が俺にぶつかり、階段を踏み外しそうになった俺の手から九一式手榴弾が零れ落ち、服に引っかかってピンが抜け、そのままこつんと音を立てて床に落ち、しゅうしゅうと煙を吹き出した。

パソコンの説明を見たが7秒後に爆発して半径10メートル以内に破片が飛び散り突き刺さる。


「うわ!まじか!大変だ!」


俺は煙を吐く手榴弾を見て叫んだ。


「彩斗!どうする!」

「四郎、あれを拾って屋敷を出て遠くに投げて!早く!遠くに投げて!」

「うむ、判った!」


四郎が俺の体を飛び越えて手榴弾を掴むとものすごい速さで玄関ホールを突っ切り外に出た。


「なに?なに?どうしたの?」

「真鈴!伏せろ!」


真鈴に覆いかぶさった俺は視界の外れで玄関ホールの外で四郎が手榴弾を投げる態勢に入ったのを見た。

その直後に凄い音がして爆風で玄関の扉が勢いよく閉まった。


「きゃぁあああ!なに!なによ!」

「武器庫に手榴弾があったんだよ!」

「え?ええええ?」


呆気に取られた真鈴を置いて俺は玄関ドアに走った。

ドアを開けると数メートル先の草が頃焦げになっていて、黒こげの草の方を向いて立っている四郎がゆっくりこちらに振り返った。

俺は息を呑んだ。

爆発から離れていたとはいえ爆風と破片をもろに食らった四郎の顔や体の前面から白い煙が出ていて戦闘服の生地にぼつぼつと穴が開いていた。

四郎の血まみれの顔にいくつかの穴が開いていて、そこから黒い破片がじわじわと押し出されて傷口が静かに閉じて行く。


「うわぁ…グロイ…四郎手榴弾を投げたら伏せるんだよ。

 そんなの常識だよ。」

「彩斗…お前、投げろとしか言わなかったぞ…われはそんな常識は…知らん。

 しかし、これは痛いな。」


尚も顔から薄い煙と破片を押し出しながら傷口が閉じて行く四郎はプルプル震える手でポケットからエコーを取り出して火を点けた。


「うむ、確かに凄い威力だな。

 もう少し爆発が近かったらわれも危なかったと思うぞ。」


エコーの煙を吐き出しながら、顔から突き出ている手榴弾の破片を指でつまんで引き抜きながら四郎は言った。

完全に閉じていない頬の穴からも煙が出ていた。

四郎が、ん?と言う顔をして口の中で舌を動かして、手榴弾の破片をペッと吐き出した。


いや、普通の人間だったら絶対死んでるってば…


「四郎!大丈夫?」


大声を上げて駆け寄って来た真鈴は修復途中の四郎の顔を見て顔をしかめた。


「うげぇえええ!気持ち悪い!グロイし痛そう!」

「真鈴、もう少しすれば元に戻るから心配するな。

 それにしても凄い威力があるな…街中では使えんがいつか何かの役に立つかもしれん。

 彩斗、あの筒はあれを撃ち出すものなのか?」

「うん、そうだよあの筒は八九式重擲弾筒と言って今の奴だと200メートル…え~と」

「222ヤードね。」

「真鈴サンキュー。

 222ヤードは飛ばせるんだよ。

 木箱に入っていた先が尖った奴は八九式榴弾と言って670メートル…」

「744ヤードという所かな?」

「真鈴サンキュー。

 という感じで遠くまで擲弾、あの爆発する奴を飛ばせるんだよ。」

「なるほど、小さな大砲と言う所だな。」


四郎は感心したように唸った。


「そうだよ四郎。」

「でも、これはちょっと使えないわね。

 街中で使ったら巻き添えが出るしあの音だし、この敷地でも場所によったらあの凄い音は1回や2回はともかく、沢山撃ったりしたら近くを車が走っていても聞こえて通報されて大騒ぎになるかも知れないものね~。」

「まぁ、いつか使い道があるかも知れんからこれも使い方を覚えるとしようか。

 しかしこの擲弾筒と言う物は悪鬼退治のために作られた武器なのかな?」

「まさか、四郎これは戦争で人間を殺すために作られたものだよ。」


四郎は複雑な顔をしていた。


「何と人間用か…てっきり蔵六が悪鬼を倒すために作らせたと思ったぞ。

 これは人間相手か…悪鬼よりも恐ろしく狡猾で情け容赦無いな…」


考え込む四郎に俺は、今世界では狂った権力者が理不尽に他国を侵略して敵兵どころか民間人相手に散々な惨劇を起こした末に勝利がおぼつかなくなると核兵器で脅しをかけていると言おうと思ったが止めた。

今それを言えば四郎はひどくがっかりするし、狂った権力者の首を撥ねに行くと言い出しかねないからだ。

今世界を覆う暗雲に関しては俺達はどうしようもない。

俺は自分のちっぽけさを悲しく思った。


「彩斗、とりあえずはあの小銃とピストルが使えるかどうかと手入れなどのやり方を確認しよう。」

「四郎、服が穴だらけだね。

 これ、着替えを何着か用意した方が良いね。

 それと…四郎の顔を見てると気絶しそうだから顔の血を拭いてよ。」


真鈴が実用的な事を言った。

その通りだと思った。


その後暖炉の広間で俺達はネット検索で見つけた手順に従って小銃やピストルを分解して、また組み立ててその構造を理解しようとした。

四郎は小銃とピストルの銃身を窓にかざして覗き込み、傷や亀裂が無いか確認した。


「どうやら使えそうだな。」


四郎が尻のポケットからメモを取り出した。


「武器庫には小銃が6丁、ピストルが14丁、錆びたりしていなくて使えそうなものが日本刀6振り、槍が長槍が5条、手槍が5条と言う所だな。

 あと、あの物騒な擲弾筒が3門、弾だが小銃の弾が5千発、ピストルの弾が4千発、擲弾の弾が恐らくさっき投げた物が300個、先のとがった奴が300個という所だな。」


真鈴がため息をついた。


「ちょっとした戦争騒ぎを起こせる量ね~」

「これは…警察とかに見つかったら大騒ぎになるし、あそこに集中しておくのは色々な意味で危ないよね…」

「うむ、少なくとも小銃やピストル、擲弾筒の弾は分散しておかないと何かあった時屋敷が粉々に吹き飛ぶな。」

「四郎、どうする?」


俺が尋ねると四郎はため息をついた。


「やれやれ、午前のハイキングの出発を遅らせて危険な物を移動させようか。

 屋敷から見える所に物置があったな、そこに…あとは地下室、可能な限り分散しておいておいた方が良いな。

 だが、まだこの屋敷はわれらの物にはなっていないのだろう?

 すぐに見つかる所に置いて騒ぎになってもかなわんぞ。」

「それもそうだね、買い付けをした時に瑕疵担保責任の免責をするからと言えば、契約までの間に売主がここに来る事も無いと思う。

 もう、俺達の私物も持ち込んであるからと言えば更に屋敷に他の人間が入る確率は低くなるね。

 それまではあまり危険は冒せないね。

 正式にこの屋敷が俺達の物になってからいろいろ手を打つしかないよ。」

「四郎、この屋敷がわれらの物になるのはどれくらいの時間がかかるのかな?」

「今日中に電話をして買い付けの振り込み、書類作成を急いでもらって何とか来週中に契約完了かな?」

「まぁ、それはしょうがないな。

 それでは武器庫は火気厳禁と言う事で午前のハイキングに出かけよう。」


数分後、俺達は準備を整えて玄関ホールに集合した。


リュックにはもちろん4本の2リットル水入りペットボトル、そして弓と矢がテーブルに置いてあった。

四郎はその他に九九式小銃と南部小型拳銃、そして、リュックに八九式重擲弾筒が括り付けてあった。


「四郎、それ持って行くの?

 重すぎない?」


俺は小銃などを指差した。

小銃ピストル擲弾筒とその弾薬で10キロ以上の重さになる。

そして四郎はペットボトル入りのリュックも担いでいるのだ。


「うむ、これらがどれくらいの威力があるかどれくらいの命中率か弾の交換にどれだけかかるか等調べなければならないぞ。

 なに、これ位余分に持たないとわれの訓練にならんからな。」


四郎は笑顔を浮かべて玄関を出て行った。

俺と真鈴は重いリュックと弓矢を担いで四郎の後を追った。

時刻は午前11時近く。

昼飯はナッツバーに決まった。







続く



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