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吸血鬼ですが、何か? 第3部 訓練編  作者: とみなが けい
19/23

屋敷の秘密はまだまだ解けない…そして、はなちゃんが立った…だがしかし…

俺が新しく淹れたコーヒーを飲みながら真鈴はユキちゃんとlineのやり取りをし、四郎はポールさんがアメリカ大陸に仲間と上陸した時の頃の日記を呼んでいた。

俺はパソコンでこの屋敷周辺の古地図などを調べて蔵六が所有していた土地の変遷を調べていた。


確かに大正11年の12月に蔵六と親族が所有する土地に隣接する広大な土地、およそ8万坪の土地の所有権が横浜に存在した商会に移転している事が判った。

ただ、所有権を移転したのちに特に何を建てるでもなくほったらかしの状態だ。

そして、木戸商会を調べると明治初期の横浜にアメリカやフランス、カナダなどの資産家達からの出資を受けて横浜在住の日本人、木戸吉亮きど よしすけが設立した物と判った。

木戸商会は海外との輸出入を行い、そこそこに儲かっていたらしいが太平洋戦争も終わり、これから本格的に商売再開と意気込んでいた筈の昭和22年に解散している。


現在の登記簿を調べると木戸商会解散の時、蔵六から購入した8万坪の土地は岩井テレサと言う日本の姓と外国の名を持つ女性の所有になっている事が判った。

俺は興味を持ち、岩井テレサで検索をしようとした時にポールさんの日記を読んでいた四郎と、スマホでユキちゃんとの会話を続けていた真鈴が同時に声を上げた。


「ふわぁ~終わった終わった!

 やっとユキちゃんがお休みなさいってさ~!」

「ポール様はここまで考えていたのか!

 そして仲間も!」

「真鈴、お疲れ~。」

「四郎、どうしたの?」


四郎と真鈴が同時に話し出したのでまぁまぁと俺は制した。


「うむ、じゃあ真鈴から話してみるが良いぞ。」


四郎が言い、真鈴はスマホをソファに置いた。


「今ユキちゃんとlineでやり取りしてたけど、かなり四郎にぞっこんみたいだよ。

 結構やり取りしたから四郎覚えておくんだよ。

 次に会った時にぼろを出しちゃ駄目だよ。」

「うむ、判った。

 真鈴ありがとう。

 さて、今ポール様がシュプクト、これは前にも言ったがポール様が仲間とアメリカ大陸に上陸したところだが、フランスで質が悪く組織化した悪鬼の集団との抗争で大陸に逃れたポール様とその仲間たちも質の悪い悪鬼を討伐するための強力な組織造りを進めていたようなのだ。

 ヨーロッパで勢力を延ばしつつある悪鬼の集団に対抗するべく仲間の中から数人が世界の各地に赴き、実力が有るポール様はもっと南に拠点を作るべくルイジアナにやって来たそうだ。

 残った仲間はシュプクトで組織を充実させ、ゆくゆくはポール様が築いたルイジアナの拠点や他の仲間が築いた拠点に更に仲間を派遣して組織を拡大させる予定だったようだな。

 この頃から悪鬼同士の抗争が世界に拡がっていたようだ。

 当時のわれはそんな話は聞いておらなんだが…」


四郎は微かに悔しそうな表情になった。


「われはまだ実力不足だったのか、ポール様の仲間と思われなかったのかも知れんな…」

「四郎、落ち込まないでよ。

 ポールさんも色々考える事があったのかも知れないしさ。」

「そうだよ四郎、ポールさんの仲間も拠点造りで色々忙しかったのかも知れないしね。

 それに四郎の棺にその日記を入れたと言う事はいつか四郎に手を貸して欲しいと思っていたと思うよ。」

「それもそうだな…今更考えても仕方ないか…ところで彩斗の方は何か判った事は無いのか?」

「うん、蔵六の土地を買った会社が判ったよ。

 横浜にある木戸商会と言う所だけど昭和22年に解散してるようだな。

 今は岩井テレサと言う人が所有しているようだね。

 当時何歳だか判らないけど、もうかなりの歳になってると思う。        

 未だに相続とか発生していないから土地の名義は彼女のままだよ、だけど、何も活用していないんだよね。

 相当なお金持ちであの土地を売ったり貸したりして活用する必要がないかも知れないし…」

「そうか…」

「彩斗、ジョスホールと言う会社と何かつながりは無いの?」


真鈴がはなちゃんを抱きあげながら尋ねた。


「木戸商会は外国から何人かの人が出資しているけど今の所有者の岩井テレサと言う人も、もう少し調べないと判らないな。」

「そうなんだぁ。」

「さて、明日も早いぞ、そろそろ眠るか。」


四郎が立ちあがり、暖炉の火を消し始めた。

真鈴がはなちゃんを抱いて立ち上がった。


「そうね、私もそろそろ寝ようかしら。

 今日ははなちゃんと寝るんだぁ~。」

「はなちゃんは真鈴と一緒に寝るの?」


俺が尋ねるとはなちゃんが顔を俺に向けた。


「ワラワハマリンガ…オツキノソイネヲシテモベツ二…カマワン」

「わぁ、はなちゃん段々お話し上手になって来たね!さあ、寝よ寝よ~!」

「明日も鍋とすりこぎで叩き起こすからな~。」


階段を上って行く真鈴の背中に四郎が声を掛けた。


「は~い、おやすみなさ~い。」


俺は真鈴を見送るとコーヒーとお菓子が乗ったワゴンをキッチンに押してゆく。


「彩斗もおやすみ。」

「四郎、おやすみなさい。」


俺は寝室に戻るとベッドに倒れ込んだ、昨日よりもこの屋敷になれたのか枕もとのスタンドライトを消してぐっすりと寝た。


耳元でガンガン!と鍋をすりこぎで殴る音に叩き起こされた。


「起きろ!彩斗!起きるんだぁ!」


四郎は俺が身を起こすとにやりとして部屋を出て行った。


真鈴の部屋のドアを勢い良く開ける音に続いて、何かがぶつかる音か細い悲鳴と四郎の何とも言えない悲鳴?と言うか戸惑ったような声が聞こえてきた。

戦闘服を着ようとした俺は何事かと廊下に出ると鍋とすりこぎを持った四郎が足元を見て何とも戸惑った表情を浮かべていた。

その足元にははなちゃんがすっくと立って四郎を見上げ、何やら文句を言っていた。

俺が近づいてゆくとはなちゃんはどうやら四郎が勢い良く開けたドアに吹き飛ばされて部屋の奥まで吹き飛び壁に叩きつけられてしまい、非常に怒っているようだ。

寝ぐせなのか何なのかはなちゃんの髪はかなり乱れていた。


「シロウナニヲスル!コノウスラデカイウツケモノガァ!」

「いや…その…」

「ダマランカァ!」


四郎が弁解しようとするとはなちゃんは右手を四郎に突き出した。

その瞬間、四郎の体が後ろに吹き飛び壁に叩きつけられた。


「…うわぁ、凄い、四郎が飛ばされた…」


俺は四郎に駆け寄った。


「おお彩斗、凄い念動だ、こんなの初めてだぞ。」


四郎は壁にしたたかにぶつけた後頭部を手で押さえながら立ち上がり、はなちゃんに謝っている。


「これは失礼した。

 まさかはなちゃんがドアの前にいたとは思わなんだ。

 どうか許してくれ。」

「フン、コレカラハキヲツケロ!」


はなちゃんは腕を組んでそっぽを向いた。

この騒ぎで真鈴が目を覚ましたらしい、部屋から真鈴の声が聞こえた。


「もぅ~、なんの騒ぎ~?

 あ!あああ!はなちゃんが!はなちゃんが立った!はなちゃんが立った~!」


真鈴の興奮した声でアルプスの少女ハイジで聞いた事があるような台詞が部屋から聞こえてきた。

はなちゃんは真鈴の方に向いた。


「マリン、ネゾウガワルイ!ネテルトワラワノハラニエルボー!アシモトニイドウスルトアタマニカカトオトシ!シンダイカラニゲタラ、シロウガワラワヲドアデ…コノママデハワラワノカラダガモタヌ~!キィイイイイ~!ナナナ、ナンテヒダァ~!」


はなちゃんはそこまで叫ぶと廊下を走って行き、最初にはなちゃんが座っていた椅子がある部屋に駆け込むとバタン!とドアが閉まった。


「はなちゃん!ごめんね~!はなちゃ~ん!」


真鈴がはなちゃんの部屋に走って行き、ドア越しにはなちゃんに謝っているがドアは開かなかった。

中からはなちゃんの声が聞こえてきた。


「モウ、ワラワハマリントハソイネシナイ!コノ…アバレオンナマリン!」


真鈴はドアの前で膝をついてうなだれていた。


「ま、まぁ、真鈴、暫くはなちゃんをそっとしといてやれ…それと…早く服を着ろ、朝の散歩だぞ。」


そう、真鈴はノーブラで薄いTシャツにパンティだけの姿でいたのだ。


「うん…そうだね…ちょっと待ってて…」


真鈴がゆっくり立ち上がり、のろのろした足取りで頭を垂れ猫背でお尻をぼりぼり掻きながら部屋に戻って行くのを見送った四郎と俺は顔を見合わせてため息をついた。

物凄くエロっぽい姿だが、中年か初老の生活にくたびれ切った女性のようなオーラを振りまいている真鈴の姿に俺は全然色気を感じなかった。


「…彩斗も急げよ。」


俺も自分の部屋に戻り朝の散歩の準備をした。







続く



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