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吸血鬼ですが、何か? 第3部 訓練編  作者: とみなが けい
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死霊屋敷の秘密が…そして俺が大事な事を言いそびれた事が発覚、はなちゃんに罵倒される

黙り込み俯いた俺達にはなちゃんは続けて言った。


「イチゾウ…シヌコトデ…ヤットヤスラギヲ…エタト…ワラワハ…オモウ…ミライエイゴウ…コドクニイキツヅケルヨリハ…」

「…市蔵さんに黙禱しようよ。」


俺が言うと真鈴も四郎も頷いてこうべを垂れた。

3人でしばらく黙祷をした。

俺もこうべを垂れて市蔵さんの冥福を祈りながら、死なずにずっと生き続けると言う事はどういう気分なのだろうか?と考えた。

俺や真鈴は年老いていつか必ず死ぬ。

しかし、歳をとらず永遠に生き続ける四郎はどう思っているのだろうか?

不老不死…共に生きた人達が年老いて亡くなって行くのを自分は変わりない姿で見送り続ける。

それは実は残酷な刑罰なのかも知れない。


やがて四郎は顔を上げた。


「この中に入って見よう。」


四郎が身を屈めて闇の空間に入り左右の壁を手探りしてスイッチを入れると裸電球が中で幾つか灯った。

3人で中に入るとそこは幅2メートルほどの廊下になっていて左右の端に屋根裏に上がる階段と1階に降りる階段があった。

四郎が廊下の壁に扉を見つけ横に開いた。

俺達はその中を覗き込んで息を吞んだ。


「なんと…」


四郎が呟いた。

扉の向こうは日本刀や槍、拳銃や小銃まで置いてあるちょっとした武器庫だった。


「たぶん、市蔵さんが手に負えなくなった時にこれで…」


真鈴が壁にかかっている拵えが立派な日本刀の埃を指で払いながら言った。


「うむ、あるいは市蔵の存在を知った人間達が押し寄せた時に戦うために用意してあったのかも知れんな…市蔵を逃がすために押し寄せた人間達と戦うために…一人で使うには武器が多すぎるのもそれなら納得できる。

…もしかしたら他の悪鬼がやって来た時の為か…」


俺たち3人は小部屋に並んだ武器を見つめた。


「ここはあとで念入りに調べよう。

 この槍などは穂先が錆びているが、中には幾つか使えそうなものがあるかも知れん。」


階段を上ると大きな扉があった。

恐らく屋根裏に出るための物だろう。

俺達は1階まで階段を下りて、地下に降りる階段と外に出るための扉を見つけた。

錆びついて重くなった扉を引き開けると、屋敷の裏庭に通じる場所に出た。

振り返ると扉の外側は外壁と同じ素材で、扉を閉めるとよほど注意して見てもそこに出入口がある事は判らなかった。

中に入り扉を閉め、階段を下りた。

降りた先には3畳ほどの空間があり、更に扉が一枚あった。


「これは…われが思ったよりもずっと城塞のような造りになっているな。」


四郎が壁をコンコンと指で叩きながら呟いた。


その後俺達はソファで寛いでいる死霊達(もちろん四郎にしか見えないが)にどいてもらい家具を移動するとやはりよく見ないと判らないが隠し扉を見つけ、はなちゃんに開け方を訊いて明かりとりの窓の下のハンガーを掛ける木のフックを動かして開けた。

思った通りあの武器庫がある廊下に通じる階段が姿を現した。

地下の棚を動かすと壁に狼人の市蔵が充分に横になれるスペースがあり、その奥に扉があった。

この扉は特に仕掛けも無く、ただ、異常に重い引き戸になっていた。

市蔵でも開けられるようにしてあるのだろう。


探索を終わり、隠し武器庫の中から3振りの日本刀、旧日本軍の物と思われる小銃と拳銃を一丁づつを持ってダイニングに戻って来た。

四郎が調べると日本刀のうち2振りは錆が浮いていて研がなければ使い物にならないが残りの1振りは見事な作りで刃の状態も拵えも良かった。


「この錆びた2振りは大量生産された粗悪な物だが、この使える1振りは見事な出来だな。

 われが持っている物と遜色ないぞ。」


次に四郎が小銃を手に取った。


「これは…どう動かすのだろうか…彩斗は判るかな?」

「四郎、これはこの前言ったように弾丸火薬パーカッションキャップが一緒になった物を使える銃だよ。」


子供の頃モデルガンをいじっていた俺は小銃を手に取りボルトを操作して装填口を開けた。


「ほら、ここから、この弾を入れてこのボルトを前進させて撃つんだよ。」


俺は銃の刻印を見ると菊の紋章があり、その下に『九九式』と打たれていた。


「これは戦争中の日本軍の銃だね。

 俺の記憶に間違いが無ければここに5発まで弾が入るよ。

 1発撃つごとにこのボルトを動かせば続けて撃てるんだ。」

「ほぉ、これは便利だな。

 この弾も威力が高そうだ。

 あとはちゃんと撃てるかどうかだな。」

「油紙が被せてあったし見た所錆びも浮いてないしボルトの動きもスムーズだった恐らく問題無く動くと思うよ。」


四郎は九九式小銃の弾を摘まみ上げた。


「これを入れるだけで撃てるのか…凄いな。」


そして拳銃、これは南部十四年式と言う日本軍の拳銃に似ているが少し小振りに作られていた。

四郎に拳銃の使い方を教えるとまたもや感心した声を上げた。


「どうやら昭和の戦前か戦争が始まってすぐ位の時に小銃や拳銃を揃えたみたいだね。

 日本刀も四郎が言っていた大量生産の粗悪品と言うのは話に聞いた事があるけど、昭和軍刀と言う日本軍が大量生産した物みたいだし…だけど、他の日本刀や槍とか、もっと前から買い揃えていたのかもね。」

「彩斗、日本の民間人がこういう物を買いそろえるのは違法だと言ってなかったか?」

「うん、戦争前後位までは違法じゃなかったよ。

 お金があれば買えたようだね。」

「なるほど…しかし、武器が少し多すぎるような気がするのだが…時間が経って使えなくなった物はあるが、これを揃えた当時なら10人位が充分に武装できる量の武器だぞ。」

「私達って…凄く運が良いのかな?」


真鈴が呟いた。

俺も一瞬そう思ったが、なにか少し割り切れないものを感じた。

俺の気持ちを代弁するように四郎が口を開いた。


「うむ、運が良いな、というか、運が良すぎるとわれは思うのだが…どこかの誰かが…まぁ、突拍子もない話だが、われらが戦うためのお膳立てをしてくれているように思えてしまう。

 …どこかの誰か、或いは誰か達がな。」


真鈴が怪訝そうに言った。


「だけど、かなり昔にこの屋敷は作られているし、その時代にこんな洋風な屋敷を作ってしかも隠し部屋とかあって、それにあの武器だって買い揃えるのはかなりの出費だと思うわよ。

 誰かが未来にこうなる事を予想して私達に武器や屋敷を準備していたって事なの?」

「それは恐らく先代の蔵六の時には今よりかなり広い土地を持っていたそうなんだよね… たぶん土地を売ったお金で…あ、ちょっと待って。」


俺は2階の部屋からパソコンを持ってきて開いた。


「ここさ、一応周りの土地の状況とかを調べるのに敷地の周りの土地も調べたんだよ。」


俺は死霊屋敷の周りの土地登記の図面を呼び出した。


「これなんだけど、もともとは蔵六が持っていた土地はもっともっと広かったんだよ。

 30万坪はくだらないくらいの広さだったんだ。

 それが大正後期、大正11年にかなりの土地を売り払っている、と言っても8万坪くらいだけどね。」


はなちゃんが突然話し出した。


「イコクノ…モノガキタ…ヨニンノイコクノモノガ…ヤッテキテ…ハカクノネデゾウロクカラ…トチヲカッタノダ」

「はなちゃん、それ本当?」


尋ねる真鈴に顔を向けたはなちゃんが頷いた。


「ソシテ…スゴイタカネデ…ゾウロクカラトチヲカッタ」

「へぇ~そうなんだ。

 だけど、なぜ外国人が買ったのだろう?

 後で法務局のページで調べてみるよ。」

「はなちゃん、教えてくれて有難いぞ。」


四郎が礼を言うとはなちゃんが四郎の方に顔を向けた。


「シロウ…イコクノモノノ…フタリハ…シロウトオナジ…」

「え?」

「え?」

「え?」

「シロウト…オナジ…シロウタチガ…イウ…アッキダッタゾ…」


新たな謎が俺達の前に姿を現した。


「ワラワハ…ヒトノトリヒキナド…キョウミガナイ…ノデ…ハナシヲゼンブ…キイテイナカッタ…ガ…イコクノアッキハ…ゾウロクトイチゾウノ…コトモ…シッテオッタナ…イチゾウヲ…タスケテヤリタイト…イッテオッタ」

「その為に破格の値段で蔵六から土地を買ったと言う事なのかしら?」

「ソウダ」


四郎がため息をついた。


「やれやれ、まるでジョスホールのベクターではないか。」

「え?四郎何の事?ジョスホールって四郎の金貨を買い取ってくれた会社でしょ?」

「おや、真鈴は聞いていないのか?

 カナダのジョスホールと言う会社のベクターと言うカナダ人が悪鬼だったと、そして、われに質の悪い悪鬼との戦いの準備を支援すると言ったのだ。」


真鈴が鬼の形相で俺を見た。

真鈴の両手に力が入りはなちゃんの手足が変な方向に曲がった。


「イタイイタイ…マリン…イジメル…オニ…」


真鈴が慌てて手の力を抜いた。


「ごめんね~!はなちゃんごめんね~!彩斗の奴が大事な事を私に言わなかったからつい、ごめんね~!」

「サイト…コノ…ゲボクガァ!…」


真鈴がはなちゃんの手足を撫でながら謝り、はなちゃんは俺に顔を向けて怒鳴った。


「ひぃ!いや、俺は言おうとしたんだよ真鈴に言おうとしたら午後の教授の話が始まってチーズケーキが柔らかくなって四郎が返って来て家族連れと金貨がそれでお祝いって二人で飛び跳ねてそんで397人と半分この…俺は言おうとしたんだけど…ごめんなさい。」

「まぁまぁ、彩斗がおっちょこちょいで子供の頃に馬に蹴られたか木から落ちたかどこかに酷く頭をぶつけたかどうか知らんがおつむがどこか少し欠けてしまって脳の具合があまり良くないのは今の説明を聞いても判るだろう。

 これはしょうがないと思うしかないな。

 真鈴われが彩斗の代わりに説明してやろう。

 彩斗、コーヒーを淹れろ。」

「かしこまりました。」


四郎はどさくさ紛れに俺の事を物凄くディスッタ感じがしたが、俺の気持ちなどお構いなしに探偵事務所での事を真鈴に説明した。

俺がコーヒーを淹れている間に四郎の説明を聞いて真鈴は納得した。

ベクターも四郎と同じ側に立つ悪鬼だと説明されて真鈴は安心したようだ。


「ふぅん、なんか、蔵六の土地売買と四郎の金貨の買取と似たような匂いを感じるわね~」

「まぁ、今回の事は偶然だとは思うが…彩斗、この屋敷の販売を彩斗に持ちかけたのは誰だ?」

「それは、宝くじを当ててから収益物件を買い始めた頃に知り合った人だよ。

 俺みたいに収益物件を買って家賃収入で暮らしているんだ。」

「いつ頃知り合ったのだ。」

「今年になってからだよ。」

「ふぅん、まぁ、普通に知り合った感じね。」

「そうだよ、まぁ、趣味が同じだったこともあって飲み会で意気投合したしね。」

「趣味?」

「オカルトさ、真鈴とかと同じでその人もオカルトにはまっていてネットでまがい物を掴まされたってお互いに愚痴をこぼしあって酒を飲んだりしたよ。」

「まぁ、趣味が同じで仲良くなると言う事はざらにある事だしね~。」

「おお、こんな時間だ。この話とあの武器庫は明日、もう少し調べる事にしよう。

 屋根裏でナイフの訓練をするぞ。」


その後俺達は昨日と同じくナイフ戦闘の訓練をした。

真鈴は椅子を持ってきてはなちゃんを座らせて見物させた。




続く






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