はなちゃんは鋭い…俺は3回だけどね…30過ぎでも世の中には普通に…
2階の廊下に降りて行くと真鈴がはなちゃん人形を抱いて頬ずりをしながら至福の表情を浮かべていた。
四郎も反対側の階段を上がって来て真鈴を見るとほほ笑みを浮かべた。
「彩斗、四郎、見てよ!
この子、はなちゃんて言うんだよぉ~!
私に自己紹介したよ~!」
真鈴は並んで立っている俺と四郎にまるで自分が生んだ赤ん坊のようにはなちゃん人形を自慢げに見せた。
「はなちゃん、この人たちが私の仲間よ。
ほら~この人の名前はね…」
真鈴が四郎に人形を向けて言おうとした時にはなちゃんが話した。
「シッテル…コノ…ヒトハ…シロウ…センシ…」
「うわ~!はなちゃん賢いねぇ~!」
「ヨロシク…シロウ」
「はなちゃん、
こちらこそよろしくお願いするぞ。」
四郎がはなちゃんにきちんとお辞儀をした。
「はなちゃんすごいね!
それではこっちの人も判るかな~?」
真鈴ははなちゃんを俺に向けた。
「コレハ…ド…ドレ…ゲボ…ゲボク…ノ……サイト…ゲ…サイト」
…今俺の事…下僕って…下僕と言ってないか?…しかも初めのどって、どれって…奴隷と言おうとしてなかったか?奴隷と言いそうになって下僕と言い換えた?
確かにこの3人の中では下っ端感半端ないと思うけどこんな人形に見透かされるなんて畜生…でも犬だって飼い主の家族とかに順位をつけると言うからな、でもでもでも身分と言えば普通は士農工商だろ?俺はそれ以下…奴隷…下僕…どうせ3回しかエッチしてないからさ、でも真鈴だって処女だ…男と女は違うんだよそうだよな、処女の真鈴がショーケースにあったら何百万円とか何千万円て値が付くかもしれないよだけど、俺は3回エッチしてるけど童貞の男なんて道端の段ボール箱にぎゅうぎゅうに詰め込められて一個10円でも売れないよ10円と書いた所にばってん付いて5円になってても誰も買わないよ俺は3回エッチしてるけどマッチ売りの少女よりきっと売上悪いと思うよ道端の段ボール箱に童貞の俺達が俺は3回エッチしてるけど詰め込まれるのは嫌だよ嫌だよ、きっと臭いよヲタクで満員の電車並みに臭いよ真冬の寒い時でもきっと気持ち悪い汗かいてるよでも、俺は…俺は…3回…実は2回半…うわぁああああ~!
ショックを受けて思考が暴走している俺の横で四郎が吹き出すのをこらえるために顔面を引き締めながら俺の脇腹をつついた。
「…はなちゃん、よろしくね。」
我に返った俺が答えるとはなちゃんは心持顎を上げて言った。
「ウム…ヨロシク…ナ」
はなちゃんと俺の一連の会話を聞いた真鈴は慌てた表情になり、はなちゃんの顎のあたりを撫でた。
「あれ~!
ちょっと音声機能が不調かな~!電子回路の調子がおかしいみたいね~!
まぁ、彩斗、気にしないよね~!」
真鈴ははなちゃんに電子回路などついていない事を、おしゃべり機能も何もついていない人形だと知っているはずなのに…
「とにかく掃除と探索は一区切りついたから夕飯の準備をするか。」
四郎がそう言って階段を下りて行き、後から俺とはなちゃんを抱いた真鈴がついて言った。
「彩斗、たまには和食が良いな。
魚でも焼いて卵焼きを作り味噌汁を作ろうかな?
…はなちゃんもまだ…話し方が慣れてないから…気に…するな…。」
「…うん。」
四郎は優しい言葉を俺に掛けたが、絶対にまだ笑いを堪えてる。
声が微妙に震えていたし肩もプルプルしている。
ダイニングに行った俺達は四郎の夕食作りを手伝う事にした。
「いつも四郎にご飯作らせちゃ申し訳ないからね~!
私お味噌汁作るわよ!
うんと美味しい奴!」
「じゃあ、俺は魚焼こうかな?」
「われは卵焼きだけで良いか?」
「勿論!
何だったら卵も私が焼くわよ。
四郎、私達が調べた後の所チェックして貰えたら良いんじゃない?
私は怪しいところ見つかんなかったよ。」
「俺も特に怪しい所は見つからなかったな。
四郎は?」
「うむ、地下室の狼人が飛び出してきたところに何かがあってな、夕食の時に話そうと思うぞ。
それでは夕食は君らに任せて探索をしてくる。」
四郎はキッチンを出て行った。
俺と真鈴は夕食を作り始めた。
「う~ん残念、はなちゃんもご飯食べれたら良いのにね~」
「はなちゃんは人形だからそれは無理だよね。」
俺はちらりとダイニングの椅子に座っているはなちゃんを見た。
微動だにせずに座っているがキッチンの方を見ている感じがした。
俺と真鈴で夕食を作り終えてあとは配膳と言う時に四郎が戻って来た。
「おお!旨そうだな!
早速頂こう!」
俺達はテーブルに皿を並べ、食事を始めた。
真鈴の隣の椅子にははなちゃんがちょこんと座っている。
お気に入りの人形を常に横に置く少女のような真鈴が微笑ましかった。
「このお味噌汁、われながら良い出来だわ~!」
「魚も卵焼きも美味しいな。」
「和食もほっとするよね。」
俺達は美味しく食事を食べた。
「ところで四郎、地下室に何があったの?」
「うむ、それを見るには棚を動かさなければならんのだ。
それと、屋根裏だが置いてある家具を一度動かしてみたいのだが。」
「なんで?」
「君らは気が付かないか?
外から見ると屋根裏がある壁の所なんだが、部屋の中の広さと矛盾する所がある。
隠し部屋があってその扉が家具で閉ざされているのかも知れんな。」
「全然気が付かなかったよ。
図面には屋根裏部屋だけだったからね。」
「屋根裏の壁と外壁の間に空間があると言う事かしら?」
「うむ、われの思った通りだとしたら、何かを意図的に隠しているかもな。」
「ニカイ…ゾウロクノ…」
はなちゃんが急に話し出し、俺達の箸が止まりはなちゃんを見た。
「はなちゃん、何か言った?」
真鈴が尋ねるとはなちゃんの頭がゆっくりと回転して真鈴に顔を向けた。
「はなちゃん動けるの?
凄~い!」
真鈴が嬉しそうに言った。
それを聞いて俺は普通凄く驚くところだろうと突っ込みを入れそうになったがここ数日、吸血鬼やら悪鬼やら死霊やら見てきてしまった彼女には大した驚きじゃないだろうな、と考え直した。
実際に俺もはなちゃんが歩いている所を初めて見た時も大して驚かなかった。
「真鈴、頭だけじゃないよ、はなちゃんはあ…」
はなちゃんの顔が俺を向いたのと、四郎がテーブルの下で俺の足を蹴ったのは同時だった。
微妙にはなちゃんの瞳がきらりと光った感じがした。
やはり俺は口が軽いのだろうか。
四郎も俺を横目で見て静かに顔を横に振っている。
「え?なに彩斗?」
「いや、はなちゃんもそのうちご飯を食べるようになるかな~なんて、はは。」
四郎がはなちゃんに顔を向けた。
「はなちゃん、2階の主寝室の事かな?」
「ソウ…ワラワヲ…ツレテユケバ…オシエル…」
「判った、食事が終わったら連れて行こう。
何があるかわれ達に教えてくれれば嬉しいぞ。」
「オオ…オオオオ…ッケー…ケー…」
今風の返事をして片手を突き出し微妙に親指を立てたはなちゃんは腕を下ろして沈黙した。
俺達は手早く食事を済ませて後片付けをすると、はなちゃんを抱いた真鈴を先頭に2階の主寝室に向かった。
続く




