最終章 The Final Part13
「アスタ」
「ん、んーん、!?」
アスタは精神世界で目を覚ました。
「目が覚めたかい、アスタ」
「…フェイ」
「…」
「この感じ、もしかして、ここは」
「あぁ、君の、精神世界さ」
「…」
「アスタ?」
「…ごめん、ごめんな、フェイ。また、お前を救えなくて」
アスタはフェイを見て、思わず涙を流した。
「…僕が死んだのは、僕の意思だ。君のせいじゃないよ」
「でも、俺は、お前を」
「…アスタ」
「…」
「ありがとね、君は、僕が死んだ時、仇を取ろうとしてくれたよね。それだけじゃない、四年もの間、僕の事を考えてくれていた。僕は、それがなにより嬉しかった」
「…そんなの、当たり前だろ。だって俺らは」
「親友、だな」
「…」
「アスタ、君に会いたいって人がいるんだ」
「え?」
「久しぶりだね、アスタ」
「!?ユウマさん」
「やあ、アスタ」
「!?お前は、ゲータ」
「こんにちは、アスタさん」
「…貴方は」
「私はミユ、ゲータの知人、恋人です」
「…フェイ、ゲータとミユさんは、何で俺に」
「君に頼みがあるそうなんだ」
「頼み?」
「あぁ」
「アスタ、スレイヤーを、止めてくれ」
「!?」
「アスタさん、私からも、お願いします」
ゲータとミユは、アスタに頭を下げた。
「…どうして、俺に」
「スレイヤーは、俺と同じだと思うからだ」
「ゲータと、同じ?」
「スレイヤーに洗脳された時、俺は負の感情に身体を支配された。だけどその時、スレイヤーの中から、声が聞こえたんだ」
「え?」
〈回想〉
「…」
「ごめんなさい」
「!?」
「ごめん、なさい、スレイヤーからそんな声が」
「あぁ、恐らくスレイヤーも、負の感情に支配されている状態だと思うんだ。だから、スレイヤーを殺すのではなく、スレイヤーを、止めてほしい」
「…」
「私は、スレイヤーに殺されました」
「!?」
「始めはスレイヤーを恨みました。でも、ゲータから話を聞いて思ったんです。これ以上、私のように、被害が出てほしくないと。そして、今スレイヤーを止められるのは、アスタさん、貴方だけなんです」
「…」
「アスタ、俺が死んだ時、俺はお前に、あの世界を守ってくれと託した。お前はその重みを受け止め、見事守って見せた。そんなお前に、もう一度頼む、スレイヤーを止めてくれ」
ユウマもアスタに頭を下げた。
「ユウマさん…」
「アスタ、これ以上、スレイヤーによる被害を出さない為に、君の力が必要だ」
「…俺なんかで、良いのか」
「…君にしか、できないことだ」
「フェイ…」
「アスタ、頼む」
フェイも、アスタに頭を下げた。
「皆…」
アスタは、フェイ、ユウマ、ゲータ、ミユ、四人からの思いを受け取った。
「…分かった。俺に、任せてくれ」
アスタは思いを受け取り、覚悟を決めた。
「…ありがとう、アスタ」
「…」
アスタは頷き、精神世界から目覚めた。
そして、現実世界では。
「くっ」
「動くなぁ、抵抗した所で、無駄だ」
「…」
「ふふふ、ん?」
スレイヤーは、ある魔力の反応を感じた。その方向を向く。
「…あれは」
「…」
見ると、気絶していたアスタが、ゆっくりと、立ち上がっていた。
「アスタ…」
立ち上がっていくアスタを見るユキ。
「…」
立ち上がっていく中、アスタは白髪に赤い瞳の覚醒状態へと入った。
「…!」
そして立ち上がり、アスタの顔は、スレイヤーを殺すのではなく、止めるという覚悟の表れがでていた。
「…まだ立ち上がるか、アスタ。ん?」
スレイヤーは、アスタのある変化に気づいた。それは、アスタを覆っていた白いオーラが、蒼いオーラへと変化し、そして、アスタの髪が蒼く染まり、瞳も黄色へと変化した。
「なんだ、あの姿は」
驚くが冷静なスレイヤー。
「…ハァー」
アスタは構えた。そして、アスタが握っていた剣を魔力剣に変え、魔力を込めた。
だが、今回の魔力を込めると言う行為は、今までとは違い、彼らの思いものせていた。
その彼らとは、フェイ、ユウマ、ゲータ、ミユ、そして。
「アスタ」
「アス、タ」
「アスタ、さん」
「…アスタさん」
「アスタ…」
「アスタさん」
そして、ユキ、サオリ、サキ、ミユキ、ユウヤ、メイ、リタ、エリーナ。
ミユキは、一足遅く到着し、アスタの光景を見て、アスタに思いを届けた。
サオリとサキも、気を失っていたが、目を覚まし、アスタに思いを託した。
フェイ達だけでなく、ユキ達の思いも受け止め、アスタの剣の光は、虹色に変化した。
「っ!なんて魔力。くっ!」
流石のスレイヤーも、アスタを警戒した。そしてアスタの方を向き、攻撃を止める為、構えた。
「ハァーーーーア」
「…これほどの力、これが、覚醒の更に先の力か。恐ろしいヤツだ、アスタ」
「……!」
剣に魔力を注ぎ込み、溜まった瞬間、アスタはスレイヤーの方へ、目に見えぬ速さで移動した。
「っ!」
アスタが消えたと思ったスレイヤーは、危険を感じ、すぐに魔力によるバリアをはった。
「!」
アスタの剣は、スレイヤーのバリアに当たった。
「くっ、なんて、パワー」
アスタの力に驚くスレイヤー。
「っ!」
「だが、私の、バリアには、かなうまい」
「んっ!んー!」
「ふふふ、これほどの力、その力、頂くぞ、アスタ!」
スレイヤーは、バリアに全力を注いでいたが、覚醒を超えた覚醒状態のアスタを吸収する為、アスタを取り込む魔法も発動した。だが。
「(ダメ!)っ!これは…」
ある声が、その行ないを止めた。その声は、本来の、正の感情のスレイヤーだった。
「スレイヤー!」
「っ!」
「フェイの、ユキ達の思いの力を、受け取れーー!」
そう言った瞬間、スレイヤーのバリアにヒビが入った。
そして、アスタの魔力剣が、スレイヤーをバリアを打ち破り、スレイヤーの心臓、モンスターで言う所の核に、魔力剣を当てた。
普通なら、魔力を込めた状態なら、魔力と気力だけでなく、生命力をも吸ってしまう。
だが、この時魔力剣に流れていたのは、ただの魔力とは違った。皆の思いが乗っかった事により、普通とは違う力が働き、スレイヤーの身体、そして心までも侵食していた闇の力、負の感情を、魔力剣で打ち消した。
そして魔力剣で、スレイヤーの心臓を貫いた。そうした事により、スレイヤーの身体から、闇の力が溢れ出し、爆発した。
闇の力、負の感情が強すぎた為に、それが外に溢れ出たが、その量は、計り知れなかった。
「ハァ、ハァ、ハァ」
煙の中から、アスタが姿を現した。
「やった、か」
スレイヤーがいた場所を見るアスタ、始めは煙で見えなかったが、少しずつ、スレイヤーの姿が見えた。
「…」
「!」
アスタは驚いた。なぜなら、スレイヤーの姿が、大人から少女の姿に変化していたからだ。
「(この姿が、スレイヤー本来の姿)」
「…」
スレイヤーは、まだ気を失っていた。
「んっ、!?、スレイヤー、様」
気絶したマキは、目を覚まし、本来のスレイヤーの姿を確認した。
そして立ち上がり、スレイヤーに近づく。
「…スレイヤー様」
「…ん、んーん」
スレイヤーは、目を覚ました。
「ここは…」
「スレイヤー様」
「…マキ」
「スレイヤー様、元に、戻られたのですね」
「元に?」
「覚えていらっしゃらないのですか?」
「覚えて?私は、一体何を……!?」
目覚めたスレイヤーは、最初は思い出せなかったが、今、スレイヤーの昔の記憶を思い出した。
それは、スレイヤーが生まれ、父を継ぎ、トップに君臨する為、学んでいた時のこと。
スレイヤーは、母を幼い頃亡くし、父が世界のトップに君臨していた時、父の後を継ぐ為、父から様々な事を学んでいた。
だがスレイヤーは、トップに相応しい父とは違い、トップとなりうるに相応しい器ではなかった。
皆をまとめる力も弱ければ、世界の先の事を考える力がなかった。
その上、父からのプレッシャーもあった。元々は、父と母、二人で世界を収めていた。だが母が亡くなり、父が一人で世界を収める事となった。そして父は、母と子であるスレイヤーを比べていた。
父と同じく、母もトップの人間として相応しかった。だが、器ではないスレイヤーからすれば、その見え方は大変辛かった。
そんなプレッシャーに耐えきれず、スレイヤーは自殺を図った。
〈回想〉
「私が死んでも、お父様は悲しまない。それに、私がいない方が、お父様の方が、世界を導ける、私の変わりなんて、いくらでも、でも…」
スレイヤーは、父はきっと、自分が死んでも、決して悲しまない、そう思ってはいたが、どうしても、自分が死に悲しんでくれる父の事を考えていた。
そんな中、スレイヤーの護衛であるマキが、スレイヤーの部屋に入った。
「スレイヤー様?、!?スレイヤー様、何をしているのですか!」
「マキ…」
「スレイヤー様、今すぐそのナイフを私に…」
「来ないで!」
「!?」
「来ないでマキ。私は、もう、無理なの。私は、お父様の様にはなれない。それに、疲れてしまったのよ。私は、トップに相応しい器じゃない。私が死んでも、きっと、誰も気にしないわ。だから、死なせて!」
スレイヤーは、そんな言葉を言いつつも、悲しくなり涙を流した。
「スレイヤー様」
「…さようなら、マキ」
「!?スレイヤー様!」
スレイヤーが自分の頸にナイフを当てようとした瞬間、スレイヤーに声が聞こえた。
「(そんな事していいの?)!?誰?」
「(私よ。スレイヤーよ)え…」
「…スレイヤー様?」
「(貴方が死ぬなら、変わりに私を自由にして頂戴)貴方を、自由に。(ええそうよ。貴方の変わりに、私が導いてあげる)導く…(ふふ、じゃあ、さようなら、もう一人の私)…!?ウッ、ウーーウッ!」
「!?スレイヤー様?」
「ウッ、ウーウッ、アーーー!」
スレイヤーの中に眠っていた、もう一つの人格、父からのプレッシャーにより生まれた負の感情、闇のスレイヤーが、正のスレイヤーの身体を乗っ取り、支配した。
「…」
「スレイヤー様?」
スレイヤーの姿は、少女から大人の女性の姿へと変化した。
「…マキ」
「はい」
「貴方、中々に強い力を秘めているわね」
「え?」
負の感情のスレイヤーは、マキの中に眠るとても強い魔力を感じた。
「でも、優しい貴方の心が鍵をしているわ。それじゃあとても不自由でしょう?だから、私が自由にしてあげるわ」
「スレイヤー様、何を」
「動かないでね」
スレイヤーは、マキに洗脳魔法を放った。
「!?アッ!アーーーア、ウッ、アーーー!」
「…これで、良いかしらね」
「…」
「さあ、貴方の名と使命をいいなさい」
「はい、私はマキ。スレイヤー様の忠実なるしもべ。私の使命は、スレイヤー様の邪魔になる者の排除です」
「(ふふ、洗脳は完璧ね)ええ、よく言えたわね。貴方にはこれから、暗殺者として命令を下すわ、よろしくね」
「はい、スレイヤー様」
そして負のスレイヤーは、まず最初に、邪魔になりえると判断した、父を真っ先に自分の手で殺した。
「なっ!スレイヤー、何故」
「ごめんなさいね。貴方は私の世界にはいらないの。さようなら、お父様」
「ア…」
そしてスレイヤーは、父を殺しトップに君臨した後、魁平隊を、表向きには、世界の秩序を守る組織として、そして裏の顔、それこそ、スレイヤーの本来の目的である、暗殺部隊の組織、それをスレイヤーは創り上げた。
そこからスレイヤーは、今に至るまで、世界の秩序、均衡を保つ為と言い、暗殺を繰り返した。
それらの記憶を、スレイヤーは思い出した。
「私、なんてことを」
「スレイヤー様」
「マキ、私、取り返しのつかない事を。それに貴方にも、ごめんなさい!」
「スレイヤー様…」
「アンタが、本来のスレイヤーか?」
「…貴方は?」
涙を流しながらも、アスタの方を見たスレイヤー。
「俺はアスタだ」
「アスタ、さん」
「スレイヤー、さん。貴方の中にいた負の感情は倒した。これから貴方には、この世界の平和を、守ってほしい」
「え…」
「頼めないか」
「む、無理です。私には、そんな事、それに、そんな資格も、私には…」
「スレイヤーさん、人って言うのは、やり直せる生き物だと、俺は思ってる。当然生きていけば、間違いや失敗だってする。でも、間違えても、失敗しても、きっとその先に、成功する未来がある。俺はそう思ってる。だからスレイヤーさん、貴方に間違いを犯した事実があっても、人はやり直せる、償える。だから、この世界の平和の為に、立ち上がってくれませんか」
「…」
スレイヤーは、生まれて初めて、人に頼られた。アスタの言葉に、驚きが隠せない。
「スレイヤー様、私も、未熟で頼りないかもしれませんが。私も、貴方様のお手伝いを致します。共に償いましょう」
「…本当に、良いのでしょうか。私は、償えるのでしょうか」
「あぁ、貴方を支える人は、俺やマキさんを含め、たくさんいる。だから、きっとできる」
「……やって、みます。未熟ではありますが、生きて、償って、この世界の為に、この身を捧げます」
「…ありがとう、スレイヤーさん」
「アスタ」
「…ユキ、大丈夫か?怪我とか…」
「うん、ボクは大丈夫」
「そうか、良かった」
「…」
「ユキ、向こうに戻ったら…いや、今でいいかな」
「ん?」
「ユキ、俺と、結婚してください」
「!」
「…!?え!?今!?」
アスタのプロポーズに、驚くユキ。そして近くにいたスレイヤーとマキも。
「…ダメ、かな。てか、急だったか?」
「そりゃあ急だよ、ボクビックリしちゃった」
「…」
「でも、アスタらしくて良いね。ボク以外だったら絶対ダメだったよ」
「!じゃあ」
「うん、喜んで」
「…絶対、幸せにする」
「うん!」
こうして、結婚式こそ、リアルワールドに戻ってからだったが、アスタとユキ、二人は結婚した。
そうして、負のスレイヤーが立ち上げた魁平隊の暗殺部隊は、洗脳が解け困惑していたが、リーダーであるマキの指示により、表の顔であった、世界の秩序も守る組織一択となった。
スレイヤーはマキの支えの元、世界の平和の為に、日々学び、彼らを導いていた。
そしてソウルワールドでは、サオリとサキが、ミレイユ姫の護衛隊である剣士隊のリーダーになり、今後生まれる脅威からミレイユ姫を守る為、日々訓練を続けていた。その中には、ユウヤやメイ、ミユキも当然いて、更には、昔ユキが第二十階層で救った、成長したマナの姿もあった。
リタとエリーナは、学校を卒業し、青山率いる特別チームに、アスタ達同様務めた。
そして、アスタとユキは、リアルワールドの公園に座り、語り合っていた。
「綺麗だな」
「そうだね、この公園から見る街の景色は、ホントに綺麗」
「なんだがこうしていると、色んな事を思い出すよ」
「…そうだね、ソウルワールドに行ってから、色んな事があったもんね」
「うん、でも、今の俺達があるのって、過去にあった、そういった経験があってこそなのかもな」
「そうだね、ホントに、君に会えて、君を大好きになって良かったよ」
「…俺もだよ、結生」
「…じゃあ行こっか、せっかくのデートなんだし、楽しも、雄也」
「…あぁ(俺は、これから先も、結生と共に、未来へ)」
最終章 The Final 完




