最終章 The Final Part1
〈ソウルワールド、第十九階層、牢獄にて〉
牢獄内で最も厳重な、重い罪を犯した者達を監禁している地下五階。
その地下五階へと向かい、階段を降りているサキ。
「…」
サキが今向かっている牢には、つい最近までカインがいた牢だが、カインが消える少し前、牢に新たに入った謎の女性がいた。
その女性は、牢に入ってからカインと唯一接していた人物だった。
「…」
地下五階、その女性が監禁されている牢へ着いたサキ。
「…」
その女性は、サキのいる方とは真反対の壁の方を向いていた。
「…こちらを向いてください」
「?あら、お客さんが来ていたのね」
その女性は、サキの方を向いた。
「貴方、ここに来た時、自分が誰か分からないと言っていましたが、もう、思い出せましたか?」
「ええ、思い出したわ。私の名前はハンター」
「ハンター、狩る者、ですか」
「ええ」
「貴方がここにいる理由は分かりますか?」
「ええ、もちろん」
「街で貴方が倒れている中、話しかけた住人を襲いだした。そこを新聖騎士団の団員によって拘束され、この牢獄へと入れられた」
「その通りよ」
「その時貴方は、自覚がないと言っていましたが」
「…あれは嘘よ」
「でしょうね。何故その様な嘘を?」
「別に、特に理由はないわ」
「そうですか」
「それで、どうして第一位の剣士様である貴方が、直々に私の所へ来たのかしら?」
「私は名乗っていませんが?何故その情報を?」
「この世界で知らない人はいないでしょ?」
「…」
「どうしたのかしら?」
「貴方、嘘をついていますね」
「…どうしてそう思うのかしら?」
「見れば分かります」
「ん?」
「貴方、この世界の人間ではありませんね?」
「…」
「私の事は、カインから聞いたのではないですか?貴方がここに来て、接していたのはカインのみ。それは確認しています。そして、貴方が来た一週間後、カインは突如消えました」
「…」
「貴方の魔力の気配、この世界のモノとは異なっています。そんな魔力があれば、すぐに気づきます。しかも貴方は、魔力の気配を変化させる事ができるみたいですね。あと、その姿も変身しているものじゃないんですか?違和感を感じますよ?」
「…ふふ、そこまで気づいていたのね」
「おや、芝居は終わりましたか?」
「第一位の剣士様に失礼だったわね。じゃあ」
その女性は、変身魔法を解き、本来の姿へと変わった。
「…」
「…これが、私の本来の姿よ」
「と言うことは、名前も」
「そう、嘘よ。でも、バレるなら、嘘をつかなくても良かったわね。私の名前はスレイヤー」
「スレイヤー、退治する者、ですか」
「ふふ、貴方も自分の名前を名乗ったらどうなの」
「罪人に名乗る名はありません」
「…そう、サキ」
「…」
「知らないとでも思った?」
「いえ、カインから聞いたのでしょう。察しはつきます」
「いえ」
「…」
「知っていたわよ。この世界に来る前から」
「…なんですって」
「ふふ」
サキとスレイヤーが話している中、牢獄を管理する一人の警備員が、管理室へと向かっていた。
そしてその警備員は、管理室へと入り、管理室にいた二人の警備員を気絶させ、罪人の両腕に付けている、魔力と身体の動きを封じる腕輪の魔法を解いてしまった。
「ん?どうしたんだ?ウッ!」
「?なんだお前は、ウワッ!」
「…フッ!」
そして、その魔法の解除ボタンは、全ての罪人の腕輪に通じていた為、牢獄に監禁されていた全罪人の腕輪が外れ、罪人達が暴れだした。
「お?」
「何だ?」
「自由だー!」
その場にいた警備員が、必死に罪人達を止めようとするが、数に圧倒され、止められなかった。
「よせ、暴れるな!」
「ダメだ、ウワッ!」
「止められない」
「お前、何をしている!」
管理室へと向かった警備員は、腕輪の魔力を解いた者を発見するが、その警備員は、見つかったと同時に、気絶してしまう。
「!なんだ、どうなっている」
「これでも、喰らえ!」
牢から出た罪人が、爆破魔法を放つ。
〈その頃、サキの方は〉
「ん?(爆破?)」
「ふっ」
「ん?」
「始まったか」
「何を、!?」
スレイヤーの腕輪も、外れた。
「腕輪が」
「…ふふ」
「…」
警戒し、構えるサキ。
そのサキの元へ、警備員から連絡が入る。
「(サキ様!)」
「!?(この騒ぎはなんですか)」
「(それが、一人の警備員が、腕輪の魔法を解除し、その影響で罪人達が暴れています)」
「!?(なんですって)」
「(申し訳ありません、我々も対処にあたります)」
「(分かりました。お気をつけて)」
「(はい!)」
「…貴方は、大人しくしてくれますか」
「そうね…」
「…」
「断るわ、フッ!」
「!」
スレイヤーは、牢の扉を破壊し、サキを躱して、上の階へと向かった。
「!?逃がしません!」
サキも、スレイヤーの後を追う。
「…」
サキが上の階へと向かったスレイヤーを追いかけていると、途中の階で罪人と対峙する事になる。
「…!」
罪人からの攻撃を躱すサキ。
「ひひ、おー、こいつは運がいい。俺様をこの牢へとぶち込んでくれた剣士様と会うなんてなあ」
「貴方は、ザイン」
「俺様の名前を覚えていたか、まあ当然だな。ここで会ったからには、お前を殺す!」
「っ、今は貴方に構ってる余裕はありません」
「ふんっ、ぬかせ!」
「邪魔です!」
ザインと対峙するサキ。その頃スレイヤーは、止めに入った警備員達をなぎ倒していた。
「強すぎる…」
「…ふん、弱い男達だね」
「止まれ!」
「ふん、邪魔よ!」
「!ウワッ!」
二人の警備員が、スレイヤーを止めに入るが、この二人も簡単に敗れてしまう。
「他の罪人達も暴れてくれているし、後はここを出るだけね」
他の罪人達も暴れ、余裕に浸っていたスレイヤー。出口に向かって走っていったその時、出口で待機していた一人の少女に止められる。
「?」
「ハァッ!」
「んっ!」
その少女の刀を躱し、後ろへと後退したスレイヤー。
「…なんだ、まだいたのね」
「ここからは逃がしませんよ」
その少女とは、サオリだった。
「へえ、私を止める気なのね(この娘、中々に強いわね、覚醒の力は持っていないけど、マキの少し下って所かしら?)」
「当然です(この人、なんなの、雰囲気が異常だわ。しかも、これでまだ全開の魔力って感じではない。ハッキリ言ってバケモノね)」
「まあ、貴方と戦う必要はないのだけどね」
「?何を言って、!?」
「ふふ、また会いましょ」
「(これは、瞬間移動!)」
瞬間移動するだけの魔力が戻り、牢獄から出ようとするスレイヤー。
「逃がしません!」
サオリも、スレイヤーの元へダッシュし、刀を振るう。
「ふん」
「フッ!」
だが、あと一歩と言う所で、スレイヤーを逃がしてしまう。
「ハァ、ハァ、…届かなかった…」
「サオリさん!」
サキも、罪人達を気絶させながら、ようやくサオリの元へと辿り着いた。
「…サキさん」
「大丈夫ですか」
「ええ、ですがすいません、逃がしてしまいました」
「…そうですか(サオリさんでも、あの女には…それ程の強さ)」
「サキさん?」
「あ、いえ、なんでもないです」
「そうですか」
「他の罪人は私が止めておきました」
「そうみたいですね、流石です」
「いえ。……あのスレイヤーとか言う女、何者なんでしょうか」
「分かりません、いずれにせよ。また何か動きがあるかもしれません。私達は、情報を集めましょう」
「そうですね」
「それと」
「?」
「この案件は、私達だけではキツそうですね。なので」
「…呼びますか」
「ええ、アスタ達を」
サオリとサキは、スレイヤーと言う人物が、とてつもないバケモノと判断し、今後この世界、ソウルワールドにまた何か動きがあると思い、アスタ達をソウルワールドへと呼ぶことにした。




