第四章 ゲーム学校編 Part7
街へと向かったアスタは、まずマントを買い、フードで顔を隠し、バレずにレベル上げをする為、ひとまずダンジョンへと向かった。
「(ひとまず、ダンジョンでレベル上げをするか)」
〈その頃、ダンジョンでは〉
「なあ」
「あん?」
「スラムってヤツ見たか?」
「いや、見てねーな」
「そうか」
「早くアイツを見つけて倒さーねと、元の世界に帰れねーよ」
「でもよ、逆に言えば、アイツを倒さないか、倒されない限りは、この世界をずっと楽しめるんだぜ」
「いや、それはそうだけどよお。もし全員やられたら、俺達死ぬんだぞ」
「そうだよ、楽しむなんて言ってる場合じゃないって」
「そんなの、テキトーに誰かが倒してくれるだろ」
「そうだそうだ、俺達はその間、このゲームを楽しむまでさ」
「そんな…」
プレイヤー達の中には、デスゲーム化したこの世界で、スラムを倒し、帰りたいと望む者もいれば、この世界で暮らしていたいと望む者もいた。
そんな中、ヤツが現れる。
「つーか、スラムなんてどこにもいねーし、きっと第二十階層にずっといるんだよ。なら、誰かがそこに行ってスラムを倒すまで、俺達はのんびりと…」
「それは困るな」
「!?」
一同は、声の主の方へと振り返る。
「君達には、静かにこの世界に留まるより、私に挑みに来てもらわなくちゃ。私がつまらない」
「お前、スラムか」
「あぁ、いかにも」
「…」
「へえー、アンタがスラムか。映像で見た通り、随分と可愛いじゃねーか。こんなヤツがラスボスねえ」
「おもしれぇ、どれ程の実力か、見せてもらおうじゃねーか」
「ふふ、そう、その意気だ。私と楽しもうじゃないか」
プレイヤーである剣士達は、武器を持ち、構えた。当然スラムも、戦う為剣を召喚し、構えた。
「おらー!」
「いくぞー!」
「ハアー!」
「ふっ」
剣士達は、スラムへと向かっていった。
「ふっ!」
「ハッ!」
「オラッ!」
「ふふ」
スラムは、そんな剣士達の攻撃を全てかわしてみせた。アスタの素早い動きと重い一撃を見て、それを身体が覚えていた為、その場にいた剣士達の動きが、スラムにはとても遅く、軽い攻撃に感じていた。
「っ!やるじゃねーか」
「っ、すべてかわして見せるとはな」
「だが、囲っちまえば」
「終わりだぁー!」
剣士達は、スラムを中心に囲み、一斉に攻撃を仕掛けた。
「ふっ」
スラムが取った行動は、剣に魔力を込め、その剣を囲っていたプレイヤー全員に当てる為、回り、剣士達に重いダメージを与えた。
「うわっ!」
「っ!」
「くはっ!」
「…なるほど、これが戦いか」
スラムは、アスタと戦った経験が、その場で生かされていた。そして、真に戦いと言うものを覚えた。
「あと二分か」
「くそ、まだ終わってねーぞ!」
「ん?」
スラムは後ろを見て、まだ戦える剣士達を見つめ、その剣士達の攻撃をかわし、遂には、倒し、そのプレイヤー達は消滅してしまう。
「ふっ!」
「あ…」
「ふん」
「!なんだよ、コイツ」
「強すぎないか」
「あれ、戦意喪失か?」
「…」
戦いに参加できなかった剣士達は、スラムのあまりの強さに絶望し、震えた。
「あ…」
「こんなヤツ、誰が勝てるんだよ」
「…アスタと違って、君達は度胸がないな」
「アスタ?」
「ああ、お、時間か。君達に、一つのクエストを出そう」
「クエスト?」
「クエストだと」
「ああ、今から二十四時間。このプレイヤーを倒した者に、報奨金として、金貨千枚を与えよう」
「き」
「金貨千枚!?」
金貨千枚と言う言葉を聞いて、驚く剣士もとい、プレイヤー達。
「プレイヤー名はアスタ」
一人のプレイヤーが、報奨金をかけられたプレイヤーの名前を確認する。
「コイツを倒せば、金貨千枚」
「じゃあ、私は一旦失礼する。せいぜい頑張りたまえ」
スラムはそう言い残し、瞬間移動で消えた。
「おい、どうする」
「そんなの決まってんだろ」
「金貨千枚なんて大金、逃さない手はないぜ」
「ああ、コイツ一人を倒すだけで、くう、たまんねーな」
「待てよ、今俺達プレイヤーが争ってる場合じゃないだろ」
「そうだ、こんなクエストなんて無視して、スラムを倒しに…」
「倒す?本気で言ってんのか」
「…」
「今俺達がスラムに挑んでも、敵う訳ねーだろ」
「でも、俺達と同じプレイヤーだぞ、仲間を倒すなんて」
「仲間ねえ」
「なんだよ」
「仲間つっても、俺はコイツの知り合いでもなんでもない」
「その通りだ。今スラムに挑んでも、無駄死にするだけ、それなら金貨を獲得して、武器を買ったり強化したり、色々手はある」
「でも、ここで仲間が減るのは」
「別に、受けたくねーなら、ずっとそうしてな。俺はこのクエスト受けるぜ」
「俺もだ」
「俺も」
「俺もやるぞ」
プレイヤー達は、スラムより、アスタを倒すことに目的を変えた。
その場にいたプレイヤーのほとんどが、スラムが出した討伐クエストを、受けると言い出していた。
もちろん、気が乗らないプレイヤーも、当然いた。
そして、たまたま通りかかり、その情報を聞いてしまったアスタ。
「(マズイな、ダンジョンは危険か。なら、街か野原にでも行って、隠れてるか)」
アスタは瞬間移動で、一旦街に戻った。
「…」
アスタは、街に戻ったものの、これからどうするか考えていた。
「(レベル上げをしたいが、今ダンジョンに行けば、簡単に見つかる。て言うか、クエストは今出されたから、街にいるのも危険だな)」
アスタは、人がいないであろう野原に瞬間移動しようとした瞬間、後ろから声をかけられる。
「おい、アンタ」
「…ん」
「コイツ知らねーか」
そのプレイヤーが見せてきた画像は、アスタだった。
「知らないな」
アスタは当然、知らないと答えた。
「そうか、てかアンタ、何で顔隠してるんだ?」
「あー、ちょっとな」
「…」
「じゃあ、俺はこれで」
「待った」
止められるアスタ。
「なんだよ」
「アンタ、まさかとは思うが。顔を見せてくれないか?」
「…」
顔を見せてくれと、迫ってきたプレイヤー。アスタが出した答え、それは。
「っ!」
逃げることだった。
「あっ、まった!」
そのアスタを追いかけるプレイヤー達。
「…(何で追ってくるんだよ、めんどくさくなったな)」
アスタは捕まる訳にはいかない為、瞬間移動で野原へと向かった。
「…ここにいれば、安全だよな」
ふと安心してるアスタ。だが、そんなアスタを、瞬間移動で追いかけてきたプレイヤー達。
「!?」
「…逃げるって事は」
「…」
「お前がアスタか」
「…だったらどうする」
「悪いが、斬らせてもらう」
「…こうなるしかないのか」
アスタも、生き残る為背中の鞘から剣を取り、構えた。
「ほお、やろうってか」
「その方が燃えるってもんだ」
「…」
「…時間が限られているんでな。行くぞ!」
「っ!」
「ハアー!」
「…」
アスタに攻撃を仕掛ける四人のプレイヤー達。
アスタは、そんなプレイヤー達の攻撃を剣で防いだり、攻撃をかわして対処していた。
「っ!」
「…避けてるだけか」
「それじゃあ終わらねーぞ」
「っ!」
その攻撃の現場を、他のプレイヤーも目撃し、プレイヤー達に加担した。
「おりゃあー!」
「っ(マズイな、人が集まってくる)」
アスタは、プレイヤー達を、戦いこそするが、自分からは攻撃をしなかった。
なぜなら、この世界において、プレイヤーは貴重だからだ。何せ、スラム一人はともかく、このゲーム本来のラスボスであるタイダンハーツを倒す為にも、プレイヤーをこれ以上減らす訳にはいかないのだ。
「っ!ハァ!」
「…コイツ、強いな」
「格好は初心者なのに、剣の戦い方は上手い」
「まるで本物の剣士だ」
「っ!聞いてくれ!」
アスタは、プレイヤーに問いかける。
「なんだ、こんな時に!」
「今俺達が争うのは良くない。スラムの狙いは、この世界のプレイヤーを減らす事だ。それは、この世界の本来のラスボスであるタイダンハーツの攻略をさせない為なんだ!」
「なに訳が分かんない事を」
「ホントなんだ!」
「そんな事言って、お前が死にたくないからだろ!」
「っ!」
アスタは戦いながらも、必死に話すが、思いは通じなかった。
「(ダメか、ならどうすれば)」
「おりゃあ!」
「っ!」
アスタは宙へ飛ばされる。そして落ちてきた所を仕留めようとしているプレイヤー。
「後ろががら空きだぞ!」
「っ!ふっ!」
アスタは宙に浮き、落ちながらも、剣の攻撃を身体全身を使いかわした。
「っ!これをかわすのかよ」
「…」
「やるな、さすが金貨千枚に値する男だ」
「…」
アスタは必死にプレイヤー達の攻撃をかわしていった。そしてある事に気づく、それはプレイヤー達と戦っていると、経験値がどんどん上がっていく事だった。
「…(レベルが上がっている)」
「これでどうだ!」
一人のプレイヤーが、巨大な気玉を創り、アスタに放った。
「っ!」
アスタに当たった気玉は爆発した。そして、そんなアスタ達が争っていた十分前、ダンジョンでは、リタがレベル上げと、エリーナを探す為、動いていた。
「ハァ!」
「グルァ!」
リタは、順調にレベル上げを行なっていた。
「よし、これで、レベル五十。この調子だな」
クエストが出る前、リタはソロでモンスター達と戦っていた。
「さて、次の階層に」
リタが次の階層に行こうとしていた時、後ろから、モンスターが迫ってきた。
「カアー!」
「!?」
「カアー!」
そのモンスターの攻撃をなんとかかわしたリタ。
「あぶねっ!」
「クルゥ」
だが、そのモンスターの攻撃をかわしたのは、良かったものの、更に後ろからモンスターの攻撃が、リタに迫っていた。
「!?やべ!」
ピンチになったリタ。だがそんな中、一人の少女に救われた。
「ハアー!」
マントを羽織っていたその少女は、リタの後ろにいたモンスターの一体に向け、攻撃した。そして。
「っ、スイッチ!」
その言葉と共に、もう一人のマントを羽織った少女が飛び出て、剣に魔力を込め、モンスターを倒した。
「ハアー!」
「カアー!」
「…っ、ハアー!」
リタも、残り一体のモンスターを倒した。そして、その二体のモンスターは消滅した。
「ふう、助かったよ。ありがとう」
「いえいえ、そっちこそ無事で良かったわ。リタ」
「ん?何で俺の名前を、ってその声」
一人の少女は、フードをとった。
「!?エリーナ」
「やっと会えたね。リタ」
そうその少女は、リタの幼なじみであるエリーナだった。
「良かった。エリーナが無事で」
「ええ、私も、リタが無事で良かった」
「ああ、ん?」
「どうしたの?」
「エリーナ、その人は?」
「ああ、この人は、今の私パーティーメンバーの」
もう一人の少女も、フードをとった。
「こんにちは、ボクの名前はユキ。よろしくね」
もう一人の少女は、ユキだった。
「ああ、よろしく」
リタとユキは、握手を交わした。
「エリーナ、ユキさんとはどこで」
「私がダンジョンでレベル上げをしてて、危なくなった所に、ユキさんが助けてくれたの」
「そうだったのか、ありがとう、ユキさん」
「ううん、ボクは大したことはしてないよ」
「…それでも、ありがとう。…それはそうとエリーナ」
「ん?」
「見たか?」
「ああ、スラムの事ね」
「ああ、あの映像、どう思う」
「…リタはどう考えてるの?」
「正直信じ難い、でも、もしホントなら、生き残らなきゃいけない。俺はホントだと思ってる」
「そう、私も同じ考えよ」
「エリーナもか。ひょっとしてユキさんも?」
「うん、気になる所はあるけど、ボクもホントだと思ってる」
「そうか」
「…それより、リタ君」
「ん?」
「ボク、人を探してて」
「人?」
「うん、とても大事な人なの。名前はアスタ」
「アスタ」
「知らないかな」
「悪い、俺は知らない」
「そっか」
「リタ、レベル上げも今は大事だけど、ユキさんが探している人を、一緒に探してくれない?」
「ああ、それは別に構わない」
「ありがとう。アスタさんって人、ユキさんにとっては、とても大事な人みたいなの。それに」
「それに?」
「それに、凄く強いって」
「強いのか」
「うん、ひとまず、パーティーを組みましょ、リタ」
「ああ、俺もそうしたかった」
リタは、エリーナとユキ二人のパーティーに所属した。
「よし、これで大丈夫。アスタさんか、何か手がかりがあれば、ん?」
「?どうしたのリタ」
「いや、何かお知らせがきてる」
「お知らせ?」
「ああ」
「見せて」
「ボクも見せてもらえない?」
「ああ」
リタはメニューにあるお知らせを押した。するとそこには、スラムからのクエストが載っていた。
「クエスト?」
「なんだろう」
「えーと、このプレイヤーを倒した者に、報奨金として、金貨、千枚!?」
「金貨千枚って、凄い額ね」
「それで、そのプレイヤーって、…!?」
「!?」
リタ達は驚いた、何故ならそのプレイヤーがアスタだったからだ。
「ユキさん、もしかしてこの人が」
「うん、アスタだ」
「何で、いや、それより」
「ええ、今すぐアスタさんを探しましょ。アスタさんを保護する為に」
「ああ、ひとまずダンジョンを出よう」
「そうね」
アスタを探す為、ひとまず第一階層に行き、ダンジョンから出るリタ達。
「…」
リタ達が外へ出ると、周りからの声が聞こえた。
「(アスタ、無事でいてね)」
心配するユキ。
「おいおい、聞いたかよ」
リタ達の近くで話していたプレイヤー達。
「アスタってヤツを倒した者に、金貨千枚って話」
「ああ、金貨千枚はヤバイよな」
「ソイツはどこにいるんだ?」
「なんでも、今向こうの野原で戦っているらしいぞ」
「!?」
それを聞いたリタ達。
「アスタ…」
「行こう、エリーナ、ユキさん」
「ええ」
「うん」
リタ達は、アスタがいるであろう野原に向かった。
〈その頃アスタの方は〉
「やったか」
「…」
爆発に巻き込まれたが、なんとか無事だったアスタ。
土煙から姿を現した。
「くっ、やるな」
「…(やべーな、このまま戦い続けたら、スラムはおろか、タイダンハーツも倒せない。HPも少なくなってきた。どうする)」
「だが、これで終わりだぁ!」
「…」
アスタが斬られる、そう思った瞬間、一人の少女が、剣を持ち、攻撃を防いで、アスタを救った。
「ん?誰だ」
「…!?ユキ…」
そう、アスタのピンチを救ったのは、ユキだった。




