第三章 Part14
「…」
「…」
サオリと菊池、二人は構え、お互いにどう出るか、様子を伺っていた。
「……っ!」
菊池は人間からモンスターの姿に変わり、体から四本の腕を出し、それをサオリに向けて攻撃した。
「っ!」
その攻撃をサオリは、全て躱してみせた。
「!避けるだと、なら!」
菊池は元々あった腕二本も使い、サオリに仕掛けた。
「んっ」
だがその攻撃でさえ、サオリは刀で捌いたり、躱したりと、菊池の攻撃を避けて見せた。だが、避けていく内に、サオリは後ろへと移動していた為、菊池と距離ができた。
その距離を、菊池は利用し、溜めていた魔力の塊をサオリに放った。
「っ!これでどうだー!」
「…」
菊池が放った魔力の攻撃は、サオリがいた場所に当たり、その辺りは爆発した。
「…ふん、これでヤツも…」
「もう終わりですか」
「!」
なんとサオリは、魔力の攻撃を避け、菊池の後ろへと移動していた。
「……!」
菊池はまた攻撃を仕掛ける為、後ろを向いた。だが、後ろへ振り向いた瞬間、サオリの刀の攻撃を受け、遠くへ吹っ飛んでいった。
「ハァ!」
「ウッ、アー!」
そして菊池が吹っ飛んだ辺りは、木も吹っ飛んでいった。
「くっ、ウッ、ぶは」
サオリのあまりの攻撃に、一撃にも関わらず、菊池は血を吐いた。
「…これほどまでの力」
サオリは瞬間移動し、菊池の近くまで移動し、移動した後は、歩いて来ていた。
「…」
「ここまでの力がありながら、何故お前は、その力をリアルワールドで使おうと思わない。その力があれば、一瞬で世界の頂点に立てると言うのに」
「生憎私は、世界の頂点に興味はありません。それに、この力はリアルワールドには、あまりにも大きな力です。この力は、決して支配の為の力ではありません」
「ふん、おっ説教か?…お前は、誰の影響でそうなった」
「影響、そうですね。お父さんとの、約束です」
「お父さんか、お前は、随分恵まれて育ったんだな。俺の父は、軍人だった。当然家には帰ってこない。俺は父の顔を見たことがない、母と二人で暮らしていた。そして、ある日のニュースで、父が亡くなった事を知った。母は悲しんでいたが、俺は大して悲しくなかった。何せ、一度も会ったことすらないんだからな。そして俺は、軍人になろうとしたが、体力には自信なくてね。だが、世界を変えたいとは思い、政治家になろうとした。だがガッカリしたよ。俺の声は、国民には届かなかった。特殊部隊へと選ばれた友人達は、耳を傾けてくれたが、票が足りなくてね。戦争を無くしたい、なんて子供の考えの私に、耳を傾けてくれる人は、いなかった。そんな絶望に浸っていた時、俺は青山という男に声をかけられた。最初は人数集めだったろうが、今となっては、それでも良かった。何の用かと思っていたら、俺が理想とするこの世界、ソウルワールドの件だった。そして君達の話を耳にし、俺は興奮が止まらなかった。これを機に、私は世界を変えられる。そう思ったよ」
「…貴方は、世界を恨んだのですね。そして、父親にどうしても近づきたかった」
「何故そう思う」
「何故なら、貴方は一度も会った事がない父親に近づきたくて、一度は軍人を志した。そして世界を変えたいと思ったのは、父親を奪った世界を変えたいと思ったから」
「俺は、父親に近づきたいなんて思った事は、一度もない」
「ホントにそうですか?」
「なんだと」
「それなら、何故貴方は、今涙を流しているのですか」
「!」
菊池は、知らずしらずの内に、涙を流していた。
「ホントは貴方も、父親が死んで、悲しかったのではないですか?」
「貴方も、だと」
「ええ、私も、いえ、私のせいで、お父さんは亡くなりました。車の事故でした。私が周りを確認せず青信号を渡っていた時、ブレーキがきかなくなった車が、私の方へ真っ直ぐ向かってきていて、お父さんは、私を庇って…」
「…」
「お父さんは轢かれ、亡くなりました」
「そうか、お前も、父を失っていたのか」
「ええ。…貴方も父親の様になりたかった。少しでも近づきたかった。その気持ちは分かります。私も、剣道をやっていた父親の様に強くなりたかった。ですが、貴方が今やっている事は、父親に誇れる事なのですか?」
「…」
「自首してください、菊池さん」
「自首ね、そう言う訳にもいかない。せっかくメギド君からもらったこの力が、勿体ないからね。それより、お前はメギド君と戦っているユキ君が心配にはならないのか」
「ええ、心配していません。ユキちゃんは強いですから」
「そうか、だが、僕も、負ける訳には、いかない!」
菊池は立ち上がり、サオリに襲いかかった。
「んっ!」
サオリは刀を刀身部分から、反りの方へ持ち替え、菊池の頸に刀を当て、トドメをさした。
サオリの圧倒的な力に、菊池は地面に強く叩きつけられた。
「かは」
「……ふぅ」
「…」
サオリは、菊池を気絶させた。反りの方へ持ち替えたのは、菊池を殺さず、自首させる為だった。
「菊池さん、貴方は生きて、自首してください」
サオリは刀を鞘に収めた。
「終わりました。お父さん。……」
サオリは、昔の記憶を思い出していた。それは、剣道をやっていた父親の様に、サオリもなりたかった頃。
〈今から六年前〉
「お父さん、お父さん。私に剣道を教えて」
「おお、紗織、良いぞ」
「やった!」
「まず、竹刀の持ち方だけどなあ」
「こう?」
「ああ、良いぞ紗織」
「それで、強く前に振るんだ」
「ふんっ!」
「そうだ紗織、良いぞ、紗織には剣道の才能があるかもな」
「ホントに!ヤッター」
「ああ」
そしてサオリは、それから父親に剣道を教えてもらいながら、中学二年生になった頃、中学校の剣道部エースだった紗織は、見事大会で優勝をして見せた。
「ハァ、ハァ。や、ヤッタ」
〈その日の帰り〉
「紗織ー」
「あ、お父さん」
「見てたぞ、優勝、凄いじゃないか!」
「うん!お父さんから教えてもらったおかけで、優勝、できたよ!」
「さすが、俺の娘だな」
「えへへ」
「じゃあ帰るか」
「うん!」
そして家に帰り、父と二人で食卓を囲み、ご飯を食べた。そして食事が終わり、紗織は母親に報告した。
「お母さん、今日私、剣道で優勝したよ。これも、私達が好きなお父さんのお陰だね」
紗織は、天国へいった母親、如月美優。美優に知らせた。そう、母親である如月美優は、紗織が十歳の時に、事故で亡くなっていた。今は父親である如月達夫と、娘の如月紗織の二人で暮らしていた。
〈そしてその一年後〉
紗織が中学三年生になり、部活帰りのある日、悲劇は起こってしまった。その日は、達夫も早帰りで、紗織の学校帰り、一緒に帰る為、紗織が帰っている途中で達夫に会ったのだ。
「…あっ、お父さん」
「おお、紗織。紗織も今帰りか?」
「うん、私も今帰ってたとこ。お父さん、買い物とかする?」
「そうだな、今日の夕飯を買わなきゃなだし、紗織も来るか?」
「うん、もちろん私も行く」
「そうか、なら行くか」
「うん!」
二人はスーパーで買い物を済ませ、信号が青になるのを待っていた。
「紗織、部活は順調か?もうすぐ卒業だが」
「うん、私はエースだから、頑張らなくちゃ」
「そうか、悔いのないようにな」
「うん」
〈そして、信号が青になった〉
「あ、青だ。行こ、お父さん」
「あぁ」
その時に、遠くから車の音がした。
「?」
達夫は気になり、音の方を見ると、ブレーキが止まらない車が、紗織の方へ一直線に来ているのを確認し、達夫は慌て、紗織の名を呼んだ。
「紗織!」
「ん?どうしたの、お父さ…」
「!」
達夫は、紗織を歩道へと押した。
「!何するのお父さ…」
紗織が父の方を見ると、父は轢かれ、死んでいた。
〈周りの声〉
「キャー!」
「おい、誰か救急車」
「おとう、さん?」
紗織は、目の前の現実が受け止められずにいた。
「いや、いやー!」
それから、父の葬式が行なわれ、家に住めなくなった紗織は、児童養護施設へと引き取られた。
「…」
児童養護施設へと来たサオリは、母だけでなく、父をも失った悲しみで、誰とも会話が出来ず、いつも一人で蹲っていた。そしてその一年後、結生と美雪が児童養護施設へと来た時。この時もまだ、他人との関わりを持てずにいた。
だがそんな時、結生から声をかけられる。
「あの…」
「…はい?」
「いや、その、君の名前は?」
「……私は、紗織、です」
「紗織ちゃんって言うんだ。良い名前だね」
「私に、何の用ですか?それと、貴方は」
「あぁ、ゴメン。ボクの名前は結生って言うんだ」
「結生さん……私に、何か用ですか」
この時の紗織は、まだ結生に心が開けず、暗い雰囲気を出していた。
「紗織さん、君と、お話がしたくて」
「私と、話?」
「うん」
「なんでですか?」
「ここ、児童養護施設に来るって事は、何かワケありかと思うんだけど、紗織さんも、きっと辛いことが、あったんだよね」
「…」
「だから、誰かに話すと、意外と気分もスッキリするかなと思って」
「…余計なお世話です」
紗織は蹲ったまま、結生の話を聞こうとはしなかった。
「…私の事は、放っておいてください」
紗織は、母と父を失ったことにより、これ以上、自分の目の前で、誰か人が死んでしまうんじゃないかと、不安の気持ちでいっぱいだった。
それにより、人と関わるのが、紗織はとても怖かった。
「…放っておけないよ、紗織さん」
「え…」
「だって紗織さん、凄く辛そうだもん」
「…それは」
「だから、ボクに、その辛さを、分けて」
「…何を言っているんですか」
「紗織さんの事を、どうこう言う気は、もちろんない、でも何だが、紗織さんを見てると、放っておけなくて。だから、ボクに君の持ってる辛さを、分けてくれないかな」
「!」
紗織は、昔父である達夫に言われた事を思い出した。
「紗織」
「ん?どうしたのお父さん」
「紗織、もし自分が、とても辛くて、耐えられない時があった時、そこで、誰かが救いの手を差し伸べてくれた時は、絶対に、その手を、離しちゃダメだぞ」
「お父さんが、手を差し伸べてくれるの?」
「あぁ、もちろん俺もそうだが。もし俺がいない時に、そういう事があって、紗織が信じても良いと思える人が現れたら、絶対に、その人の事は、裏切っちゃダメだ」
「…よく分からない」
「…今は難しいかもしれないが、紗織にもきっと分かる日がくる」
「そうかな?」
「あぁ、もちろん」
〈回想終わり〉
「…」
ユキは、蹲っている紗織に、手を差し伸べた。
「…(でも、私は)」
紗織は迷った、この人を信頼するべきか。父を亡くした後、大好きだった剣道を止め、竹刀を見ることさえも辛かった紗織。
だが紗織は、ユキの真剣な顔を見て、この人なら大丈夫。そう直感した。
そして紗織は、ユキの心の優しさに涙を流した。それを結生は、優しく抱きしめた。
そこから、結生と紗織は仲良くなり、さんと言う壁を越え、お互いちゃん付けで呼び合う仲、親友になった。
〈そして現在〉
「ユキちゃん、ホントにあの時は、ありがとうね。おかげで私は、前に進む事ができた。( …アスタさん、ユキちゃんを悲しませる事があったら、私は絶対に許しませんからね)どうかユキちゃんを、守ってください。そして私も、ユキちゃんの事は大好きですから、アスタさんと言えど、ユキちゃんへの愛は、私も負けませんから」




