第三章 Part8
「彼の名前はユウヤ。ランキング第二位の、剣士です」
「おお、覚えててくれて嬉しいぜ。まあ、この俺様の事を忘れるなんて事はありえねえけどな」
「アナタが何の用ですか。私はメイちゃんに用があるんです。アナタ、メイちゃんに何をしたんですか」
「おやおや、冷たいね。だが、俺様もアンタに用がある。それと、コイツは今俺様の支配下にある。下手なマネはよすんだな」
「…何の用です」
「メッセージの内容を思い出してみろよ」
「まさか、あの内容を送った、いや、送らせたのは」
「ご明察、俺様だよ」
「…」
「さて、思い出したなら、教えてもらおうか」
「…言っておきすが、神道流に秘密と言うたいそうなモノはありません。神道流に教えられてるのは、日々の特訓、訓練です。分かったら、メイちゃんを解放してください」
「いや、まだ無理だな。お前が秘密を話すまでは、コイツは解放できない」
「…先程も言いましたが、神道流に秘密はありません。アナタは神道流の秘密とやらに、何故そこまで執着しているのですか」
「そんなの、強くなりたいって事に決まってるだろうが。俺がどんなに手を伸ばしても届かない頂きにお前はいる。そんなお前の強さにあるのは、その神道流だ」
「何が言いたいんですか」
「そこまで行くには、相当な時間と技術がいるだろう。俺は時間をかけて、第二位に上り詰めた。だが、そんな俺様を軽々と越していたのが、神道流のお前だった。そこまで行けるは、絶対に何か理由があると思った訳だ。それで秘密だ。何をして、何があって、そこまでいけた。答えてくれよ。出なきゃコイツが持っている薬をぶっ壊ししちまうぞ!」
「…」
「ほら、さっさと話してくれよ。早く秘密を」
「まず、アナタは何か勘違いしています。私がここまでこれたのは、日々の鍛錬の積み重ねです。ズルをしてここまできた訳ではありません。言うなれば、日々の努力こそが、神道流の教え、アナタの言う秘密ですね」
「…ふざけるな。俺は村に居た頃、一番の実力を持っていた。もちろん、そこに至るまでの努力も惜しまなかった。寝る間も惜しんで訓練に打ち込んだ。だがそれでも、それでもお前には敵わなかった。日々の努力だぁ。そんなの俺もやってきた、俺とお前、何が違うんだ!」
「そうですね、強いて言うなら、ユウヤ、アナタは、寝る間も惜しんだ。そう言っていましたね」
「それが何だ」
「私も、日々の努力はしています。ですが、寝る間を惜しんでまではしていません。努力も大事ですが、寝る事もまた、大切です。よく食べ、よく動き、よく寝る、神道流の教えには、そうあります」
「そんな事、認めないぞー!」
ユウヤはメイに向けていた剣を、今度はサキに向け走り、サキに向け剣を振った。だがサキも、刀を持ち替え、ユウヤの剣がサキを斬ろうとしたその時、サキはユウヤの剣を狙い、見事に剣に当て、ユウヤの剣を弾き飛ばした。
「くっ」
「悔しいでしょうが、この力の差は事実です」
「くそっ!何で、何でこんなにも、力の差が」
「アナタの気持ち、私も分からない訳ではありません。私も同じでしたから」
「なんだと、何が同じだと言うんだ!」
「私がランキング第一位になった時、私は、嬉しい気持ちももちろんありました、ですがそれ以上に、私は強い、最強の剣士なんだと、恥ずかしながら思っていました。そしてそんな気持ちの中、あの戦争、モルドがミレイユ姫様の城を占拠した時」
「!俺様が、ランキング第二位に入る前か」
「私は、ミレイユ姫様の護衛を任されていました。ですが護衛の最中、私は、モルドに敗れた所か、洗脳を受け、モルド側に就くと言う失態をおかしました。自分の力を過大評価していた結果です。もう終わりだと、思っていた時、私は一人の剣士に救われました。その人は、初代神道流継承者、サオリさん。私は、サオリさんと剣を交えて戦っていました。正直私は、剣士達の中では、誰にも負けない自信がありました。ですが、そんな考えは、すぐに消えました。洗脳されていたとは言え、私の全力の攻撃を、サオリさんは全て捌いてみせました。そして私に、サオリさんは、よく頑張りましたね。などの声を、洗脳された時の微かな意識の中で聞こえました。ユウヤ同様、どうしたらそこまでの力がと思いました。でも気づいたんです。大事なのは、日々の努力、積み重ねなのだと、強くなる事に近道なんてない。日々の努力こそが大事なのだと、ですからユウヤ、私とアナタは、技も性格もまるで違います。ですが、高みへ行きたいと言う、その思いは同じです。私と一緒に、その高みへ行きませんか」
サキはユウヤに手を差し伸べる。だがユウヤは、その手を振りほどいた。
「…ふん!お前と高みへ行くなんてごめんだね」
「…」
「高みって言うのはなあ、誰かの力を借りて行ける程、甘い世界じゃないんだよ。秘密がない事は、とりあえず認めてやる。だが、俺は絶対、いつか必ずお前を超えて、第一位になってやる!」
「…そうですか、ユウヤらしいですね」
「ふん」
「ですが、私も第一位の座をあげる程、優しくはないですよ。私も負けません」
「ふん!言ってろ」
「…」
「ああ!もういい、用は済んだ。コイツは解放してやる」
ユウヤはメイの洗脳を解いた。そしてメイが倒れそうな所を、サキは受け止めた。
「あ、メイちゃん」
「んっ、う~ん」
「良かった、何とも無さそうですね」
「サキちゃん?あれ、私、一体何を」
「もう怖いものは無いので、大丈夫ですよ」
「あ、そうなの?」
「はい」
「…あ、そうだサキちゃん、これ、薬」
「ありがとう、メイちゃん」
「サキさん、メイさん、大丈夫なようですね。良かったです」
「はい、ホントに」
「…」
「おい、ユウヤとやら」
「あぁ、なんだ」
「お前に聞きたい事がある」
「あ、そうだ。メイちゃんにユウヤ」
「何?」
「お前もか、なんだ」
「今、ミレイユ姫様のお城で何かが起こってるみたいなんだけど、二人共知らない?」
「え、お城で何か起きてるの?」
「はい、メイちゃん、何か小さな事でも良いから、知らない?」
「ごめんサキちゃん、私は何も」
「…そう」
「…」
「お前もか?ユウヤとやら」
「知っているぜ」
「!?ホントですか?」
「あぁ、何故か今思い出したが」
「その話、詳しく聞かせてくれないか」
「あぁ、良いぜ。聞かせてやる」
ユウヤは、サキやミユキ、メイに、二日程前、城に起こった事を話し始めた。




