第三章 Part7
「アスタさん!」
「一旦物陰に隠れよう。大丈夫かアスタ」
「…」
「ダメです、返事が…」
「…恐らく、アスタは今気を失っているだけだ。先程の槍に毒があったのだろう、ミユキ、私は薬屋を探してくる。アスタを見ていてくれ」
「分かりました」
ヒナは一旦、ミユキにアスタを任せ、薬屋を探しに行った。
「アスタさん…(お姉ちゃんごめん、私、アスタさんを守れなかった)一体どうすれば」
ミユキが自分の力の無さに、涙を流しそうになった所、一人の少女に声を掛けられる。
「大丈夫ですか?」
「…?」
ミユキはビックリして顔を上げた。
「どうかしましたか?」
「え、えーと、これは」
「ミユキ」
そこに、薬を探しに行ったヒナが戻って来た。
「ヒナさん」
「ミユキすまない、薬が売っていなかった」
「そうですか」
「あれ、ヒナさん」
「ん?、!?サキ!」
「久しぶりですね。ヒナさん」
「あぁ、そうだな」
「サキ?、!?あなたが、神道流の使い手の」
「驚きました。よくご存知で」
「…」
「?どうしたんですか?ヒナさん」
「実は、今ちょいと面倒な事になっていてな。急いでいるんだ」
「そうでしたか、ではここじゃなんですし、私の家まで来てください」
「良いのか?」
「はい、そこで、お話を聞かせてください」
「あぁ、悪いな。そうさせてもらうよ」
「それと…」
サキはミユキの方を見る。
「あ、私ミユキです」
「ミユキさん、ミユキさんも来てください」
「あ、はい。ありがとうございます」
「はい」
ミユキとヒナは、二人でアスタを支え、サキの家まで向かった。そして家に着き、サキはヒナ達の話を聞いた。
「ところで、その人は一体誰なのですか?」
「あぁ、そうだったな、コイツは、アスタだ」
「!?…なるほど、その人が、あの英雄の」
「あぁ、だが今じゃ、アスタは罪人と言うことになっている」
「?それは、一体どういう事ですか?」
「実はな」
「はい」
ヒナは、アスタにきせられた罪の事について、新聖騎士団の事について、サキに話した。
「!?そんな、ミレイユ姫様が、それに、そんな事が」
「私は、アスタがやっていない事を証明したい。力を貸してくれないか、サキ」
「…色々と気になる事はありますが、他ならぬヒナさんの頼みです。協力します」
「ありがとう」
「ありがとうございます」
「いえ、モルドやゲータを倒した、最強の剣士であり、英雄であるアスタさんが、そんな事をするとは、私も思えないので」
「何か手がかりはないでしょうか、今のままでは、アスタさんは罪人のままです」
「それにしても、ミレイユ姫様が、中々信じられませんね。そんな事があれば、この世界の誰もが知るでしょう。ですが、その情報は伏せられている。…もしもの話ですが、ミレイユ姫様が殺されていないと仮定した場合、お城に行けば、何か分かるかもしれません。あ、あと、アスタさんの毒は、なんとかなるかもしれません。知り合いに、毒に詳しい、薬の専門家がいるので」
「ありがとう、サキ、色々と」
「いえいえ、これぐらいはさせてください。もうこれ以上、足を引っ張る訳にはいかないので」
「サキ…」
「…」
「まだ、気にしているのか?」
「そうですね、二年前の戦争で、私は役に立てない所か、洗脳を受け、剣士達に剣を向けてしまいました」
「…」
「でも幸い、私は一人の、同じ神道流の使い手の人に救われ、言葉を頂きました。それで、私は誓ったんです。これからは、自分の為の剣ではなく、周りの人達を救う剣になろうと。二年前の私は、皆を守ろうとはしましたが、心の内では、自分が強くなる為にと、思っていたので。でも、その考えは違うのだと、神道流の人に教わりました。だから今は、ヒナさんにミユキさん、それに、アスタさん、皆さんの為の剣になります」
「…そうだな、それが、サキの導き出した答えなら、私は賛成だ」
「私も、凄く立派な事だと思います」
「ありがとうございます。二人共」
サキは会話を終えると、薬の専門家と言う人物に、メッセージを送った。そして、ミユキ、ヒナは、サキの力を借り、アスタが復活し次第、お城に行くことを決意した。
「ところでサキ、薬の専門家と言っていたが、一体それは誰なんだ?」
「あぁ、それは、メイちゃんです」
「メイさん、その人は一体」
「ランキング第三位の剣士です。それと、先程にも言いましたが、薬の専門家でもあります」
「へぇー、そんな剣士の方もいるのですね」
「えぇ、…ミユキさん」
「はい?」
「あなたは、今の時代より、前の時代の剣士だと、そうヒナさんから聞きました。そんなあなたに、聞きたいことがあるのですか、良いですか?」
「はい、なんでしょう」
「あなたがいた時代では、どんな方が、ランキングにいたのですか?」
「ランキング、ですか?」
「はい」
「どうしてランキングを?」
「知りたいのです。私が今、第一位になる前、どんな人が、ランキングにいたのか」
「…なるほど。分かりました。まず、ランキング第三位からですが、第三位、初代神道流継承者、サオリさん。第二位、私の姉、ユキ。そして第一位、最強と謳われた剣士、ユウマさん。この三人が、私の時代ではランキングにいました」
「サオリさん、その方が、初代神道流継承者。あんなに強い方ですら第三位だなんて、第二位の、ミユキさんのお姉さんに、最強の剣士と言われたユウマさん。とても凄い方達ですね」
「はい、とても」
「…あれ。アスタさんは、ランキングにはいなかったのですか?」
「はい、アスタさんは、ランキングには入っていませんでした。でもアスタさんは、この世界はもちろん、私が元いた世界の危機さえも救ってくれました。ランキングだけが全てじゃない、私はアスタさんから、それを教えてもらった気がしました。いつもお姉ちゃんの後ろについて行くのが精一杯だった私に、アスタさんは希望の光を照らしてくれました。私はそれにとても感謝しています。もちろん、ランキングにいる方を否定したい訳じゃありません。ただ、どんな人にもできる事がある。アスタさんはそれを教えてくれました。だから私も、今自分に出来る事をしたいんです」
「ミユキさん、…そうですね。今の自分に出来ることを、それは、確かにとても大事だと思います。アスタさん、とても良い人ですね」
「はい!」
「…お」
「どうした?」
「メイちゃんから返事が返ってきました。薬、大丈夫みたいです」
「そうか、それは良かった」
「…ん?」
「どうかしたのか?」
「いえ、ただ」
「ただ?」
「神道流の秘密を、会ったら教えてほしいと、書いてあるので」
「秘密なんてあるのか?」
「いえ、ないですけど…なんでしょう。メイちゃん、どうかしたんでしょうか」
「気になるが、とりあえず行ってみよう。集合場所は何処だ?」
「この二十階層の南にある森です。テレポート盤の近くの」
「よし、なら行こう」
「ええ、行きましょう」
「そうですね、では」
サキ達は、メイに指定された南の森へ向かった。だが森に着いたのは良いものの。辺りには誰もいなかった。まだ来ていないのかと待っていると、現れたのは、メイだけではなかった。
「っ!」
「…」
「あ、メイちゃん」
「…」
「ん、どうしたんですか、メイちゃん」
「よお、久しぶりだな」
「!?」
「会いたかったぜ、サキ」
「…」
「サキさん、彼は一体」
「彼の名前はユウヤ。ランキング第二位の、剣士です」




