第三章 Part1
二〇三〇年八月十三日、彼らは旅行に来ていた。その彼らとは、あの世界、ゲータが創りあげた、菊池が言ったソウルワールドを救った英雄、アスタ。
それとその仲間達、ユキ、ミユキ、サオリ。そして児童養護施設の皆、彼らは京都へと旅行に来ていた。
「おーい、アスター、見てみて、スゴい景色だよー」
「おぉー、ホントだな」
彼らは清水寺へと来ていた。
「お姉ちゃん、あんまりそうしてると危ないよ」
「あ、ごめんミユキ」
「ユキちゃんてば、はしゃぐのは良いけど、気をつけてね」
「そうだぞユキ、気をつけなきゃ」
「ごめんサオリちゃん、アスタ、良い景色だったから、つい」
「確かに、良い景色だよね」
「あぁ、ホントに」
彼らは、清水寺の他にも、地主神社に二寧坂、三寧坂、清水坂、高台寺に八坂神社と、様々な京都の名スポットを廻っていた。
「次はどこかなー」
「あ、お姉ちゃん、待ってー」
「…」
「どうかしました?アスタ」
「いや、平和で良いなって思って」
「…そうですね。とても平和です。元々平和にある国ですが、私達の頑張りも、少しくらい、ありますかね」
「あぁ、そうかもな。…平和な日本に感謝だな」
「そうですね。せっかく平和なんです、楽しんじゃいましょ、アスタ」
「あぁ、そうだな」
アスタ達は、束の間の平和の時を過ごしていた。そしてそれと同じ頃、あの施設では、取り壊しの工事が行われていた。
「よっと」
「よっ、しかし、一体誰がこんな大きい施設を設計して、造ったんだ?」
「おぉい、こっちも運ぶぞー」
「おお、分かった」
工事員の内の一人は、何故こんな施設を造ったのか、そしてどうしてそれを自分達が取り壊ししているのか、そんな疑問を抱きながら働いていた。
そんな中、工事員や警備員、他の者が気づかない所、施設のちょうど上の方で、時空が歪み、その中から、一人の異世界人の男が姿を現した。
「ここか、ゲータが来ていた世界は」
この異世界人の名前はカイン。ゲータが生きていた頃、ゲータと共に生活していた、向こう側の人間だ。
「…(ゲータ、こちらの世界で合ってるはずだが、おかしいな、ゲータの微かな魔力は感じるが、ゲータ程の巨大な魔力が感じられん)…ん?何だあの建物、人がいるな、聞いてみるか」
カインが言っていた人とは、施設を警備していた警備員の事だった。
「なあアンタ、ゲータってヤツ知らないか」
「ゲータ?知らないな、友達かい?」
「友達、そうだな、ヤツとは友達だ。友達とも言えるし、戦友だな、ヤツとは」
「戦友?ゲームかい?でも、悪いね、知らないな」
「そうか、知らないか(この世界じゃないのか?)」
「と言うか君、ここは立ち入り禁止だよ、今工事中だから」
「工事?(何かを壊している?)」
「あぁ、だから君も、早く家に帰りなさい」
「何故壊しているんだ」
「そりゃあ君、あれだよ。それについては内密なんだよ」
「内密?何故」
「それは僕にも分からないんだ。とにかくここを守れって言われててね」
「へぇ、そうなのか」
「あぁ、だから悪いね。僕も知らないんだ」
「(内密にする程の事か、知りたいね、その秘密とやらを)」
「(何か話し過ぎたかもな)さあ、たくさん話したし、もう帰った帰った、ずっといられると僕が怒られるよ」
「大丈夫だ、すぐに済む」
「ん?それはどういう」
「ふっ!」
「ん、これは、一体」
警備員は、カインによる魔法で眠らされてしまった。
「悪いね。殺したくはなかった。色々話してくれたからね」
カインはそう言うと、施設へと入り、施設のどこかにあるであろうメインルーム、つまりは司令室を目指し、歩いていた。そして司令室へと着いたカインは中へと入った。
そしてカインは見ることになる、ゲータが創造で創り上げた世界、ソウルワールドを。
「これは(何だこの世界は、一体誰がこの世界を、まさか、ゲータがこの世界を、創ったのか)信じられん」
「何が信じられないんだ、カイン」
「?お前は、メギド」
「この世界は、間違いなく、ゲータが創った世界だ」
「何故そう言いきれる」
「何せ、かすかに感じるからな、ゲータの魔力が」
「それは俺も感じるが、この世界をゲータが創ったとは、信じられん。世界を一つ創るなんて、一体どれほど膨大な魔力が必要だと思ってる」
「それもあるが、こんな事をするのは、ゲータぐらいしかいない、他の次元の奴らでさえ、ゲータに勝った者はいないのだからな、あの方以外」
カインとメギドは、ゲータがこちらの世界に来る前に、ゲータが昔ライバル意識を向けていた二人だった。
「もしホントにこの世界が、ゲータが創ったものなら、俺は行くぞ」
「そうか」
「メギド、お前はどうするんだ」
「俺は止めておくよ」
「ん?何故だ」
「理由なんて簡単さ、ゲータが世界を創ったのは確かに素晴らしいが、その世界に行ってしまえば、俺と競えるのは、ゲータか君ぐらいしかいないからね、それでは退屈だ。だから俺は、この世界で遊ぶ事にするよ。弱いやつを痛めつけるのは楽しいからね。君のゲートを通ってこちらの世界に来たが、俺や君にかなう程の魔力は一切感じなかった」
「お前、変わっちまったな。性格悪い奴だ。昔は…」
「昔は昔だ、とにかく、俺はこの世界を支配しようと考えている」
「なるほど、ところでメギド、俺も人の事は言えないが、さっき俺のゲートを通ってきたと言ったな」
「あぁ、そうだが」
「その後、ちゃんとゲートを閉じてきたんだろうな」
「もちろん、閉じてきたさ」
「そうか、なら良かった」
「他の者がこの世界に来てしまっては、楽しめないからね」
「俺ら以外にも、この世界を狙う奴らは多そうだからな」
「あぁ、この世界の力のバランスは驚く程に低い、我々じゃなくとも、簡単にこの世界は支配される」
「その通りだな」
「ところで君は、どうやってゲータが創った世界へ行くつもりだ?ここへ来る前、いくつかカプセルがあったが、あれで行けるんじゃないのか?」
「あぁ、確かにあれを使えば行けるだろう、だがあれは、恐らく生身がそのままあの世界へ行くモノではないだろう。いざと言う時に弱点になりかねない。だから俺は、別の方法で行く」
「別の方法?」
「あぁ、だが、そっちこそ、メギド、お前はどうやってこの世界を支配する気だ?」
「それならもう決めてある。ここにある監視の目を見て、使えそうな駒を見つけ、そこから支配する。一人で支配もできるが、それではつまらないからね」
「そうか、俺は支配とか、正直興味ないが、ゲータの創った世界だし、支配してみるのも、面白いかもな」
「では、我々で二つの世界を支配しようじゃないか、どちらが先に支配できるか、勝負というか」
「…まあいいだろう、勝負事は好きだ」
「決まりだな」
二人は話終えると、カインはゲータの微かな魔力を頼りに、ソウルワールドへと瞬間移動で向かった。そしてメギドは、司令室の監視カメラを見て、使えそうな駒を探した。今この瞬間、ソウルワールドと現実世界が、また再び、危機にさらされようとしていた。
そしてその事を、アスタ達はまだ、知る由もなかった。




