第二章 Part17
ユキ達が心配し見守る中、アスタは菊池と話す事にした。外への会話をする為、呼び出しボタンを押したアスタ。
「…」
「誰かな」
外から男の声、菊池の反応があった。
「俺だ。名前はアスタ、菊池さん、アンタと少し話をする為にきた」
「ほう、君がアスタ君か、ユキ君達から、僕の話は聞いたかな?」
「あぁ」
「そうか、なら話は早い、それで、君は我々に協力してくれるのかい?」
「俺の答えは、ノーだ」
「?おやおや、ホントに話を聞いたのかな。協力しなければ、ユキ君が捕まってしまうんだよ」
「そうはならない」
「?どういう事かな?」
「菊池さん、アンタがこの世界を支配することはない。そしてユキも、捕まりはしない。これで終わりだ」
アスタはそう言うと、コンソールのキーボードを使い、施設内のドアを全てロックした。
「何だ!?」
「ドアが、開かない」
「!?何をした」
「残念だが、その施設のコントロール権限は、全てコッチ側なんだよ」
「なんだと」
本来は、施設のコンソール権限は、施設側にあったが、アスタがプレイヤーを逃がした後、ゲータが施設のコンソール権限を、ソウルワールド側に変えていた。そしてその情報は、コンソールを見ていたアスタにも伝わっていた。
「じゃあな、菊池さん」
アスタは、施設内にあった催眠ガスを使用し、菊池達を眠らせた。
「なに!?なんだ、これ、は…」
そこでアスタは、通信を切った。
「…ふぅ、終わった」
「大丈夫?アスタ」
「あぁ、大丈夫だ」
「そっか、なら良かった」
「これで後は、警察が何とかしてくれる」
「うん、そうだね」
「じゃあ、俺達も帰ろう」
「…今度こそ、ホントにお別れ、なんだな」
「…あぁ、寂しいが、元気でな、ヒナ。それにカオリさんも」
「あぁ、アスタもな」
アスタとヒナは、これが最後の別れと思い、二人でハグをした。そこでヒナは、涙を流しそうになるが、アスタ達の前では泣かないと決め、泣くのを止めた。
「皆さん、どうか、お元気で」
カオリは、ヒナと共にいる時に、アスタ達の事を聞いていた為、アスタの言葉を理解する事ができた。
「うん、カオリちゃん、ヒナちゃん、二人共、元気でね」
ユキも、ヒナ同様泣きそうになるが、得意の笑顔で、ヒナとカオリを見送ることにした。
「あぁ、ユキ。ミユキ、サオリも」
「はい」
「お二人も、どうかお元気で」
「うん」
「皆さん、さようなら」
そこで、ヒナとカオリとは別れた。そしてアスタ達は、現実世界へ帰る為、自分達の名前を見つけ、それをアスタが選択し、外へ帰ろうとした時、それは起きた。
「…」
ログアウトボタンを押そうとした瞬間、アスタの手が止まった。
「?どうしたの?アスタ」
ユキがそう言い、アスタの方を三人が見ていると、ポタッと、何かが落ちる音が聞こえた。それは、アスタの血だった。
「え、アス、タ」
ユキがアスタの肩を触り、振り替えさせると、アスタの心臓の部分が、血に染っていた。
「…」
「!?」
アスタは、足ががくっと落ちてしまう。これは、ゲータにやられた箇所。
だがそれは、アスタが覚醒のさらに上の覚醒状態の力によって、治っていたが、覚醒状態を解いて、時間がたった事により、心臓がまた潰れてしまっていた。
「アスタ!」
「時間、みたいだな」
「どうして、こんな」
ユキは思わず涙を流してしまう。
「アスタさん!」
「アスタ、しっかり!」
「俺は、これで最期、みたいだな」
「嫌だ、そんな事、言わないでよ。アスタ!」
「ユキ…」
アスタは右手を使い、ユキの涙を拭いた。
「泣かないで、ユキ」
「でも、でも、アスタがこんな、こんな事って」
「今の内に言っておくよ。ユキ、ミユキ、サオリ、ありがとう。三人のお陰で、ゲータやモルド達に勝てた。(それにヒナも、ありがとう)ホントに、ありがとう」
「アスタさん」
「やめてよ。そんな別れの言葉みたいなの、やめてよ」
「でも、もう俺には時間がない」
「そんな事ないです!今からでも回復魔法を」
「いや、もう間に合わない」
「そんな…」
「時間、みたいだな」
「…アスタ!」
ユキは思わずアスタに抱きつく。
「あぁ、ユキ。初めて会った時、ヒナが拐われた時、俺を救ってくれて、優しい言葉をかけてくれて、ホントに、ありがとう」
「アスタ!アスタ!」
ユキがアスタの名前を呼んでいる時に、アスタは黄色い光に包まれて、消えていってしまった。
「アスタ…」
「アスタさん」
「アスタ、そんな」
アスタを失い、放心状態へと入ってしまった三人。そんな中、システムが起動し、三人は、現実世界へと帰っていった。
「んっ、う~ん」
ユキは、誰よりも早く目覚め、アスタはまだ生きている。そんな思いを抱きながら、施設を廻り、司令室へと着いた。
「アスタ…」
アスタを失い、絶望に追いやられたユキ。そんな中、司令室へと入った。
「…皆、眠ってる」
ドアが開いてすぐ、菊池達が、ホントに眠っている事を確認したユキ。
「…」
辺りを見るが、特に何もない。そう思い、司令室の奥の方を見ると、一人の少年が立っていた。
「ハァ!」
それは、何とアスタだった。アスタは、司令室に映っているソウルワールドを見ながら、昔の記憶を少し思い出していた。それは、アスタの両親は、二人共病気で亡くなり、親友であるフェイの家へ、引き取られた時の記憶だった。
「…」
「…」
アスタが、今自分の目の前で生きている事に、驚きと嬉しさを感じながら、ユキは涙を流した。そしてアスタの名前を呼んだ。
「アスタ」
「?」
後ろを振り返るアスタ。
「アスタ…」
「!?ユキ…」
「…」
ユキは嬉しさのあまり、アスタの方へ行き、アスタを抱きしめる。
「バカ!心配、したんだよ」
「あぁ、悪かった。ユキ」
「でも、良かった。ホントに」
「…」
「もう、心配させないでよ、アスタ」
「あぁ…ユキ」
「ん?」
「今言うのもなんだが、この気持ち、この想いを、今言わせてくれ」
「?」
「ユキ、俺は君が好きだ、これからは、俺の隣にいてくれないか」
アスタは、ユキの人間性、助けてくれた時に、ユキがアスタに言った言葉、その言葉にアスタは、救われ、助けられた。ユキのそんな人間性やユキの人としての強さ、優しさに、アスタは惹かれ、ユキの事が好きになっていた。
「!?」
ユキはいきなりの告白にビックリしたが、返事は決まっていた。
「うん、もちろん!」
笑顔で答えたユキ。ユキも、初めてアスタに会った時、誰かの為に頑張れる人としての強さと、アスタ自身の友を守ろうとする優しさを、ユキは好きになっていた。
そして二人は抱きしめあった。そこに、ミユキとサオリも目覚め、司令室に着いていたが、アスタとユキ、二人の世界を見守る為、遠くから見ていた。
数分後、神田貴志が、水上警察と共に、施設へと助けに来た。実は神田貴志は、元水上警察だった。その為、施設に行った際に、警備員が誰もいない事に気がつき、水上警察の上司に連絡をとり、助けに来てくれたのだ。
ユキ達の場所が分かったのは、ユキとミユキに渡したお守りの中に、もう二度と失わない為にと、発信機を入れていた為、知ることができたのだ。その後、菊池を含む者達は、水上警察によって連行されていった。
そして日が経ち、時は二〇三〇年八月十三日、アスタ達は、児童養護施設の皆と一緒に、京都へと旅行に来ていた。
「(あれから日が経って、俺達は今旅行に来ている。俺達はあそこの世界で、様々な経験をした。仲間との絆や想い、たくさんの事を、ホントに教わった。あの施設は、しばらく日が経ったら、取り壊されるみたいだ。正直寂しさはある。でも、もう二度と悪人の手に渡らないと考えれば。それは良い事だと思った。とても寂しいが、俺は今いる皆と一緒に、前を向いて生きていこうと誓った。だから、俺は未来に向けて、一歩踏み出して生きていく)」
「おーい、アスター、行こー」
「アスタさーん」
「早く行きましょー」
「おー、今行くー」
「(俺達は、前へ進む)」
第二章 完




