第二章 Part8
第二十階層では、一人の少女が二人の男達から逃げていた。
「ハァ、ハァ」
「おい、見つけたか」
「いや、見失った」
「急いで見つけるぞ、あの女は貴重な奴隷なんだからな」
「あぁ、分かってるさ」
「ハァ、ハァ、誰か、剣士様、助けて」
「おい、あっちを探すぞ」
「あぁ」
「ハァ、ハァ、くっ、んっ」
少女は、男達に見つからぬよう、慎重に、だが急いで男達から逃げていた。そして、男達がどこかに行ったことを確認すると、バレないよう、こっそりと逃げた。
「ハァ、ハァ、誰か、誰か、助けて。(剣士様!)」
少女は泣きながらも、誰かに、剣士に、助けを求めて、走り続けた。
「ハァ、ハァ」
少女は、このまま第二十階層にいては、ヤツらに捕まってしまうと考え、テレポート盤に乗り、安全と考えた第一階層に逃げることを考えていた。
「ハァ、あ、あった、テレポート盤」
テレポート盤に乗り、第一階層のボタンを押す。
「早く、動いて」
第一階層のボタンを押して、起動するテレポート盤だが、ヤツらから逃げている少女からすれば、その動きがとても遅く思えた。
「お願い、早く!」
そしてようやく第一階層へ移動、となった所でヤツらに見つかってしまう。
「見つけたぞ!」
「っ!」
だがその瞬間、少女は、第二十階層のテレポート盤から、第一階層のテレポート盤へと移動した。
「…っ!間に合った。…あ、いけない、早く、早く逃げなきゃ、すぐにヤツらが来る」
少女は、ヤツらに捕まらないよう、急いで街の方へと逃げた。だが、ヤツらもまた、テレポート盤で第一階層へと来ていた。
「(誰か、誰かに助けを)」
少女は人が多い街の大通りを走っていた。誰かに救いの手を求めて。
「(誰か、どこかに、どこかに剣士様は)」
少女は探すのに必死で、あまり前を見ておらず、前を歩いていた二人組の男性にぶつかってしまう。
「キャッ、あっ、ごめんなさい」
「あぁ、俺は大丈夫だよ」
「君こそ大丈夫?何か、慌ててるみたいだけど」
「あ、あの、剣士様、剣士様は知りませんか」
「剣士?剣士なら、今の時間はダンジョンに行ってるんじゃないのかな」
「っ!そんな…」
少女は、逃げてきたのは良いものの、今は救いの手が無いと知り、ショックを受けてしまう。そしてそれと同時に、恐れてしまう。
「…」
「おい、大丈夫?俺達で良ければ、何か力に」
「おぉーおう、見つけたぜ」
「っ!」
「こんな所まで逃げやがって」
「?おい、何なんだよアンタらは」
「あ?なんだお前、俺達に楯突くのか」
「楯突くって、アンタら何様だよ」
「ふっ、俺達はモルド様の忠実なしもべ。そしてそいつは奴隷、奴隷だぞ」
「ど、奴隷!?この子が」
奴隷という言葉を聞き、男性二人だけでなく、周りの人達も驚いていた。
「奴隷?」
「あんな幼い子が?」
「奴隷?」
「ホントにいたのか」
「奴隷だってよ」
「おい嘘だろ」
「噂じゃなかったのか」
「ふっ、そいつを渡す気になったか?」
「っ!くっ」
男性二人は、少女を守りたかったが、奴隷と言う言葉と、モルドという言う新たな支配者の名前に、手足がすくみ、何もできなかった。
「くっくっく、おい、さっさとこっちへ来い。鬼ごっこは終わりだ」
「ふっふっ」
「あ…私…(姫様!)」
モルドの部下である男達は、ゆっくりと少女に近づく、少女はもう逃げきれないと思ったが、恐怖でその場に固まってしまった。
「ふっふっ、ん?」
だがその時。二人の少女が、逃げていた一人の少女の前に立った。
「なんだ、お前らは」
「?っ!」
「もう大丈夫ですよ」
その二人とは、ユキとミユキだった。
「あなた達は…」
「ボク達は、君の味方だよ」
「っ!」
ユキは少女に笑顔を返すと、剣を抜いた。
「おいおい、まさか俺達に楯突く気か」
「おいおい大丈夫かよ」
「相手はモルドの手下だぞ」
「ボクはこの子を助ける。そしてそれを邪魔するなら、君達を斬る」
「ふっ、はーはっは」
「そいつを助けるだって?そいつは奴隷だぞ。モルド様に従うだけの、ただの奴隷なんだぞ」
「そんな事は関係ない、困っている子がいたら助ける。困っている子を助けるのに、理由なんていらない」
「ふっ、モルド様に逆らうとは、愚かなヤツだな。いいだろう、殺されるのがお望みらしいな。望み通り殺してやる」
モルドの部下達は剣を抜き、戦闘態勢をとる。
「(ここじゃ危ないな)」
ユキは、戦うには周りに人が多いと判断し、モルドの部下達を含め、ユキ、ミユキ、少女を、人がいない森の中への瞬間移動させた。
「ん?なんだ」
「森?アイツが俺達をここへ移動させたのか」
「ここなら、誰も危なくないしね」
「ふんっ、舐めやがって!」
モルドの部下達は、ユキを殺す為、足に魔力を込め、足を加速させ、ユキに迫った。
「んっ」
ユキはそんな部下達を、難なくかわし、武器の破壊を狙い、部下達の剣に向かって剣を振るった。
「なっ」
ユキの狙い通り、武器破壊に成功し、部下達の剣は折れた。
「き、貴様」
「君達は、剣士を舐めすぎだ」
「っ」
「その剣じゃ、もう戦えないね」
「くっ、舐めるなー!」
部下の一人がユキに向かって、巨大な炎魔法を放った。
「これでどうだ!」
「あ、危ない!」
「大丈夫ですよ」
「え…」
「んっ」
ユキはそんな炎魔法を、剣を横に振り、炎魔法を消滅させた。
「なっ!」
「なんだと」
「魔法を、剣で消滅させやがった」
モルドの部下達は、ユキにはいくら挑んでも勝てないと悟り、モルドの拠点へと逃げていった。
「お、覚えてやがれ!」
「このままじゃ済まさないからな!」
「…ふぅ」
ユキは剣を鞘に戻した。
「大丈夫?」
「あ、はい。ありがとうございます、剣士様」
「様なんていいよ、ボクはユキ、こっちは妹のミユキ」
ユキは少女を安心させる為、いつもの笑顔で答えた。
「こんにちは、あなたのお名前は?」
「私、私の名前は、カオリです」
「カオリちゃんか、よろしくね」
「よろしくお願いします。カオリさん」
「あ、はい。ホントに、ありがとうございます。ユキさん、ミユキさん」
「うん!」
「それでカオリさん、早速で申し訳ないのですが」
「はい?」
「モルドってヤツについて、教えてくれないかな」
「あ、はい」
カオリは、ゲータの次に、ソウルワールドの支配者へと上り詰めた、モルドについて、ユキとミユキに話し始めた。そして同じ頃、モルドが支配した城では。
「それで?あなた方は逃げて帰ってきたのですか?」
「いえ、その、とんでもない剣士が紛れており、我々では対処できないと考えて、その、戻って参りました」
「そうですか」
「はい」
「いかがいたしますか、モルド様」
「うーん、そうだな。ひとまずは生かしておいてやろう。この力を試すに相応しい相手かも知れないからな」
「さようですか」
「あぁ、それに」
「…」
「ヤツかもしれないしな。ゲータを倒した英雄。アスタ」




