最終章第5話 神の子の
「神の子?」
私は通りすがりで全く知らない者たちに、神の子と呼ばれた。
困惑をしつつも、私は問う。
「神の子、とは何ですか?」
私の問いに、集団の中で最も若い見た目をしている男が答えた。
「神の子。つまり俺たちを導いてくれる存在。さらには、神の子は絶大なる力を持っている。どうかその力で我々を救ってください」
なぜか私は崇められている。
この見知らぬ人たちに。名も分からない者たちに。
だがしかし、私は悪い気はしなかった。
私は膝をつけた彼らの前にドンと立ち、私は彼らに宣言する。
「私がお前たちを導いてやろう。それが私の定めなのならば」
私はそう言い放つ。
すると冷気を放っている者たちは、私を敬うように頭を下げる。
どうやら私は神の子という存在なのは確かだろう。だが私には絶大な力などない。
すると、森の中から殺意に満ちた目線を感じる。
草が踏まれている音とともに、巨大な人が私たちの前に現れた。
まさか蟻から見た人間がこれほどまでに恐怖を感じさせるとは、私は思いもしなかった。
私は恐怖で足がすくむ。
私を崇めている者たちは巨大な人に走っている。
私は踏まれると思っていた。だから私は目を瞑り、時間が経つのを静かに待った。だがいくら待ってもその時は来ない。
私が目を開け、視界に広がっていたのは氷漬けにされた世界。
「我らの神の子よ。あなたは我々が必ずお守りします」
そう言った彼らは、氷漬けにされた人間の体に乗っている。
「強い……」
その言葉がただ宙をさまよっている。
未だに状況は整理できていない。
だが私は氷蟻という蟻の体を授かった。ならこいつらも氷蟻なのだろう。
面白いじゃないか。
「君たち。この世界のことをもう少し詳しく教えてくれないか?そしたら私は君たちに勝利を誓おう」
私にはそれを成し遂げる自信があった。
元は人間であるから、私は虫というちっぽけば存在を余裕で倒すことが可能である。
もし相手が虫であるなら、私たちは余裕で勝てる。
私は確信していた。
氷蟻という虫が私に味方してくれるのなら、どんな敵であろうと圧勝できると。
「圧倒的な戦いほど、面白いものはないからな」
「どうかしましたか?神の子様」
氷蟻の一人の戦士が我がもとに走って来た。
私の独り言を命令だと勘違いしたようだ。だがいい。
私は丁度いいと思い、その戦士に問う。
「貴様。名は?」
「フィンブルと申します」
「そうか。我が名はつらら。これから私を呼ぶ時はつららと呼べ」
「はい。つらら様」
フィンブルが我が名を呼ぶと、背後にいた氷蟻たちがつららコールを始める。
私は多少も憂鬱と大いなる好奇心を掻き立てられ、世界の革命者となろうと決意した。
ーー私は歩むことを決めた。
過去の生きている意味の無い世界より、この好奇心が掻き立てられ、生きる意味を見いだせる世界の方が価値があると分かったから。
さあ世界よ。
我、つららの名において、世界を我がものにすると宣言しよう。
圧倒的戦力と圧倒的能力。私には全てが揃っているのだから。




