最終章第4話 世界が大きく動き出す
あれ……ここどこ?
「やっと起きたか」
石畳に囲まれた正方形の一室。
唯一光が入ってくる場所は後ろの窓か、正面の小さな小窓のみ。
動こうにも、手は鎖で繋がれて、足にもそれが巻き付いている。横たわる私を、小窓から男は哀れそうな目で見ている。
「はは。せいぜいそこで反省しておれ」
あれ……私は何をしたのだ?
「まさかあんなことをするなんてな」
その男は笑いながらその場を去った。
彼は一体何者なのか、それすらも分からない状況で私は皿に入っている水を、這いつくばって舌ですくって飲む。
少し惨めだったが、喉が乾いていたので仕方がない。
水を飲み終わった私は、後ろの床にある小さな窓から外を眺めた。
「きれい……」
思わず声が漏れてしまうほど、その景色はきれいだった。
氷で造られた人の像が、いくつも草原の中に存在していた。氷の像に反射する月の光が、その像の輝かしさを一層際立たせている。
だが私は疑問を抱いたーーどうしてこんな森の中に、氷で造られた人の像があるのだろうーーと。
誰も見ないのだからここに置いておく意味はない。それでも像はここにある。
そんな違和感を感じながらも、私はその氷の像を静かに眺めていた。
すると、小さな窓を使い、一匹の蟻が私のもとに歩いてくる。その蟻は私の顔を渡る。そして額の真上に登ると、蟻は私の頭をコツンと叩いた。
その瞬間、私は謎の眠気に襲われ、静かに目を閉じる。
「あなたはまだ生きたいのですか?」
私の脳内にはその言葉が響く。
私はその問いに答えた。
「ああ。私は思い出した。自分が特別な存在であると。だから生きなければならない。どんな形になってでも」
「そうか。ではお前に体をやろう。お前には氷蟻という種族の体をやる。これ存分に暴れるがいい」
その声が途切れると、私はうっすらと目を開ける。
霞んだ世界に広がっていたのは、巨大な一室と大きな鉄の塊。
私は手錠がつけられていないことに気づくと、目の前にあった出口から外に出た。
そして外の景色を見た時、私は思った。
「確かここは……私が檻の中に入れられていた時、床際にあった窓から見た景色のはずだ」
そう。目の前の広がっていたのは、さっきよりも格段に大きくなってはいるが、明らかに檻の中から見ていた景色と同じだ。
ならさっきの鉄の塊は手錠。そしてあの大きな一室は檻の中ということになる。
「つまろ私は、小さくなった……」
そう思った私は、鏡のような場所がないかを探すーーその道中で、私は体から冷気を発している集団に出くわす。
男や女が混じっていて、三百人は軽く越える集団だ。
だが一つ気になるのは、頭にちょこんと生えた触角。
まるで蟻だ。
私は彼らに情報を聞こうと、この巨大な木々が生い茂る中を堂々と歩く集団に話しかけた。
「あのー、ここはどこですか?」
私が話しかけると、その者たちはなぜか固まった。そして発した一言。
「神の子!」




