第9話 この戦いに終わりあれ
僕達は火蟻の王がいる部屋に進んだ。
「火蟻の王よ。今からお前を…倒す」
女王さんの言葉に火蟻の王は絶望を感じているようだ。火蟻を護る蟻はたった100。たいしてこちらは250。
(これで…平和が訪れる)
「進め!」
「おーーー」
僕達は火蟻をなぎ倒し、一心不乱に突き進んだ。あと少しで火蟻の王を討てる。あと少しでこの戦いが終わる、あと少し、あと少しで。
「女王。王が逃げます!」
一匹の剣蟻が言った。
もし、今ここで王を逃がせば。もしここで王を倒せなければ。剣蟻の敗北は決定してしまう。
「死んでも追え」
新しい犠牲者が出ないように。新しく苦しむ者が出ないように。僕は苦しくても戦う。それが…僕の戦う理由だ。
(幸華。お兄ちゃんが今ある危険を無くしてあげるから。外来種を倒してあげるから。そしてもし人に戻れたら、また外で遊ぼうな)
女王が一匹で先に進む。
「蟻村。俺が道を開く。そしたら女王を追ってくれ」
「心配か?」
「そりゃそうだ。だからお前に女王を護ってほしい」
「頼んだぜ。護衛」
護衛は剣を盾に変形させ高く飛び、盾を下に向け火蟻の中心に飛び込んだ。盾が地面に接着した瞬間、風圧で火蟻が大量に吹き飛んだ。
「今だ!」
「おうよ」
僕は火蟻が来ないうちに女王さんを追う。
「死ぬなよ」
すれ違い様、護衛は言った。だから僕はいいねポーズをして言った。
「もう死ねるか」
護衛は頭をかしげていた。それもそのはず、僕が元は人間で今は蟻になったなんて分からないだろう。
僕は女王さんを追って、そして追い付いた。
「女王さん…」
火蟻の王は既に穴を掘る気力を無くしていた。
「王よ。今ここでお前を討つ」
女王さんは火蟻の王を壁まで追い詰め、火蟻の王の首に剣をかすらせる。女王は怒りの目を火蟻の王に向けている。
(強いな!)
「ははは。俺を殺ったってまだ終わらないよ。まだ火蟻は世界中に散らばっている。そしてそいつらが俺の敵を討ってくれる」
「安心しろ。そんな奴ら、何度だって返り討ちにしてやるから」
「火蟻の女王はお前よりも強いぞ」
「安心しろ。私には信頼できて強い仲間が大勢いるんだ。だから私ら剣蟻は、お前ら火蟻に宣戦布告をする」
「ふははははっ。お前らなんかが、火蟻に勝てるわけ…。それにお前の弱くて臆病な仲間なんて、火蟻の敵にはならない」
女王さんは急に怖い顔をして、笑っている火蟻の王を威圧で黙らせた。
「ならあの世で見てろ。私らが火蟻を一匹残らず絶滅させる結末を!!」
そう言い、女王さんは火蟻の王の首を跳ねた。
(これで…この戦いは、終わるんだ)
この日、剣山から火蟻は消えた。
・死亡者
火蟻の王イグニス
…死亡理由、シャーロットに首を跳ねられる。