インセクト・ウォー ~最終戦争へのカウントダウン~
蟻村とシャーロットは洞窟の中で自給自足の生活を行っていた。既に2年の月日は経過している。戦いをしない彼らなど、世界を変えるに価しないだろう。
「シャーロット。僕たち、このままでいいのかな?」
蟻村は夜の月を見上げながら、シャーロットに質問を問う。
「そうだね。確かに私たちは間違ったのかもしれない。だけど、もうすぐ新しく生まれる命がある。この世に生を与えられる命が生まれる。それまでは、静かに暮らしていよう」
「そうだな」
シャーロットと蟻村の間には、子供が出来ていた。男の子か女の子か分からない。
ーーもし生きることが辛いなら、このまま死んでも良いのではないか。
蟻村の脳裏にはその言葉が駆け巡っている。それでもまだ見ぬ命を見たい。だから蟻村は生き続けている。
「シャーロット。どうやら僕たちは戦いを避けることはできないらしい」
そう言った蟻村の目の前に、複数の蚊が現れていた。蟻村は銃を構えたが、蚊は戦う気が無いようだ。
「剣蟻の王と女王よ。最終戦争へのカウントダウンが始まりました。そこでお願いがあります。私たちとともに、戦ってください」
「どういう……ことだ?」
「実は……侍蟻が我々巣に攻めて来て、それで侍蟻は言ってきたんです。剣蟻の王と女王を侍蟻のもとに連れてこい。でなければこの世界は終わりを迎えることだろう、と」
蟻村は断りたかった。だが断るということは、世界が終わるのを眺めるのと同じということだ。
「貴様ら。シャーロットを安全で清潔な場所に移せ。僕が侍蟻と話をしよう」
「幸太郎!」
シャーロットは蟻村には遠くに行ってほしくはない。それでも蟻村は進まなければならない。
「シャーロット。僕は、この世界が終わる前に、我が子の顔を見たいんだ。だから、侍蟻の暴走を止めてくる」
シャーロットは心配そうに蟻村を見つめる。
「心配するな。僕はもう死ねないから」
蚊たちは申し訳なさそうに蟻村を侍蟻の巣まで連れていく。
ーーシャーロット。すまないな。僕は侍蟻が護るお姫様の正体に気付いてしまったんだ。だからもう戻れないかもしれない。さようなら。愛しきシャーロット。




