第8話 絶望の中に見えた希望
僕は剣を抜き、火蟻の王に剣を向ける。
「火蟻の王よ。次こそはお前の首に刃を入れる」
「おい。撃て」
火蟻達が火の玉を撃ってくる。だが俺は宣戦布告をやめない。
「待っとけよ。お前は僕が殺るんだ。また明日、お前を殺す」
「ふふふ。ふはははは。じゃあ死ね」
火蟻達がくっつき一斉に火を放ち、火の波になる。
(これがさっき俺達の仲間を一斉に殺した技か)
僕はよけることもできず、火の波をまともに受ける…のではなく…
「護衛ー!」
僕は護衛を呼ぶと、護衛は剣を巨大で分厚い盾に変え火の波を受け止める。
「全く。荒い使い方してくれるな」
「いいだろ。女王の大切な人が死ぬんだぞ」
「お前自意識過剰か?」
「じゃあお前に好意があると思ってんのか? 護衛くん」
「ば…バカ。…は…速く帰るぞ」
護衛は激しく動揺した。
(分かりやすい奴だ)
「よし。撤退だ。急げ」
僕達は火の波を受けきり、曲がり角を曲がった。これで奴らは撃つのをやめた。
「帰ったかな」
「ちょっと待て」
そう言うと護衛は壁を触って目をつむった。
「何してるの?」
僕はコソコソと女王さんに聞いた。
「護衛くんにはね、特殊能力があって、その1つに感知能力があるの」
「あれで感知出来るのか?」
「護衛くんが言うには、土に触れることで土と繋がって何人が攻めてきたとか、どのくらい速いかが分かるんだって。簡単に言うと、土に触れてる全ての生物の動きを把握できる」
(だから女王さんの護衛なのか!)
この時初めて護衛が凄いと思った。
「火蟻はもう行きました。行くなら今だと思います」
護衛は不安そうに言う。多分俺がきつく当たりすぎたんだろう。だから俺は優しく言った。
「お前は正しい。お前は僕達に必要だ」
そう言うと護衛は喜んだ。
(良い奴だな、こいつは)
僕らの作戦はこれからだ。これから彼らは護りなど忘れるだろう。僕らを貧弱だと思ってる奴らだ。なら今が絶好の機会だ。今しか無い。
僕らは護衛の能力を使い、慎重に進んだ。
「あとどのくらいだ?」
俺が護衛に聞くと、護衛は少し怯えながら言った。
「ここを進めば…王がいる」
「…王」
(やっとここまで来れたのか。多くの仲間を失ったが、今ここで敵を討てる)
「皆、覚悟は出来たか」
「もちろん」
(ここで終わらせる。長く続いた戦いに…決着をつける)
「進めぇ」
女王の声にこだまするかのように、僕ら剣蟻は答え、進んだ。
今、火蟻と剣蟻の戦いに終末が訪れる。