第79話 死闘の中で、
矢や銃弾が飛び交う戦場で、2匹の蟻は弱い自分を捨て、強く生まれ変わろうとしていた。
「不死鳥の爆炎」
ある者は、支えてくれた者への感謝。
「輝光砲 」
ある者は、失って気づいた陽気な者への不安。
多くの感情が入り巻く戦場で、2匹の蟻だけは目の前の敵を蹴散らすことしか眼中に無い。
彼らは何度も傷を負い、その傷を戦いの糧としてきた。そして今、彼らを奮い立たせるのは何なのだろう。
「ガヴェイン。やっぱシャーロットさん強いな!」
「ああ。だからと言ってアーサーも手を抜くなよ。トリスタンはサボってやがる」
トリスタンは円卓騎士団の3番手。つまり円卓騎士団の中で3番目に強い。
トリスタンはいつ死ぬか分からない戦場で、ずっと月を見ていた。そんなトリスタンの瞳からは、一滴の雫がこぼれ落ちた。
一体何を見て泣いていたのか。それはトリスタンにしか分からないことだ。
「ところでさ、どうしてバッタを仲間にしようとしているんだ?」
アーサーは円卓騎士団の1番手でありながら、頭の悪さは円卓騎士団の中ではトップに名乗り出るほどのバカだった。
アーサーはいつも作戦を理解できないので、いつもガヴェインがそばに付き添っている。
「アーサー。バッタは脚力があり、少しくらいなら飛べるから戦況を有利に運びやすくなる」
アーサーは適当に相づちを打った。
そんなアーサーに何年も付き添っているガヴェインは、いい加減イラついていた。
「アーサー。お前な…」
ガヴェインの言葉は爆発音に阻まれた。
「ガヴェイン。あれを見てください!」
アーサーのその動揺は、ガヴェインにすら影響を与えた。
アーサーは普通のことでは動じない。そんな彼が目を丸くし、心の底から驚いている。
ガヴェインはアーサーが見ている方向に、恐る恐る顔を向けた。
「これは…何だ!?」
空から無数の隕石が、戦場に怒号を立てながら落ちている。その度に吹き飛ぶ蟻の腕や足。その光景はまさに地獄。
蚊の群れは死んでいった仲間の血を吸い、力を増していく。
「女王様。兵が…」
ガヴェインはシャーロットの方に顔を向ける。が、シャーロットはそこには居なかった。そこにあったのはシャーロットの聖剣である聖剣だけ。
「まさか…」
ガヴェインの脳裏にはある可能性が過る。
蚊は空を飛び、動きも素早い。さらには大群で視界を塞ぐこともできる。
ーーシャーロットは、さらわれた。




