第78話 南へ
蟻村幸太郎とシャーロットはトカゲに乗り、椿蟻のいない円卓城に戻ってきた。椿蟻のいない円卓城は何か寂しく感じる。
シャーロットは円卓城にいる者全員を集め、悲しみを抑え込み宣言する。
「皆。よく聞いてくれ。私たちは南に進み、南に住む蚊を攻略し、戦い続ける」
蟻村幸太郎たちは、南に進み自分たちを鍛えたい。だから彼らは南に進む。
南には軍隊蟻と同等の強さを持つ種族が多くいる。円卓同盟は南に住む種族と戦いをし、そこで自分たちの力を高めようとしている。
「ここに残りたい者は残ってもよい。強くなりたい者は我とともに南に進め。行くぞ。円卓騎士団」
円卓騎士団は誰一人として円卓城に残る者はいなかった。
「よし。では南に進むぞ」
シャーロットや蟻村幸太郎、アーサーなどの精鋭はトカゲに乗って南に進む。
円卓騎士団は竹林に入るなり、武器を構え警戒体制に入った。
重い空気が周囲を埋め尽くし、風が竹を揺らして静かな空間に音色を奏でる。
「蚊の大群が正面から来ます」
一匹の蟻の声がする。その瞬間、蟻村幸太郎たちの正面から蚊の大群が群れを成し、円卓騎士団に襲いかかる。
蚊の群れは一瞬で円卓騎士団を埋め尽くした。
「焔火災」
アーサーの剣から放たれた炎は、うじゃうじゃと飛び回る蚊の群れを一掃した。
だが、蚊の群れは無きものにしようとひたすらに進む。
蚊の持つ四本の細剣が、剣蟻の体に突き刺さる度、仲間の悲鳴が竹林に響く。
これは戦争。誰が命を落とそうとも、蟻村たちは進むしかなかった。
彼らは無数にあり選択肢の中で、戦うという選択肢を選んだ。
彼らはその選択が間違いだったとしても、その選択をしたからには最前線で戦う義務がある。
ーー神はそんな彼らに試練を下す。
「う…嘘だろ!?」
その場にいる誰もが口をポカーンと開けたまま静止した。
その理由は空を見れば一目瞭然。何百万という数の蚊が太陽の光を遮断し、聞こえる音は蚊の動くカサカサ音のみ。
絶望という二文字は、時に思考を停止させる。
「皆。戦え」
絶望の底から引きずり出すには、蟻村の言葉だけじゃ足りない。
圧倒的力を味方に見せつけなければ。結局戦いとは、メンタルなのだ。メンタルの無い者ほどすぐに死ぬ。
「湖十字架」
水の十字架が地から生えてきた。十字架に触れた蚊は、まるでマグマにでも触れているかのように苦しむ。
たった一本の十字架だけで、戦況は大きく変動しつつあった。武器を捨てようとした者は、武器を強く握り直し。武器を自分に向けていた者は、向ける方向を変えた。
ーー円卓騎士団は…諦めなど覚えない。
諦めの悪い集団こそが、円卓騎士団なのだ。




