第6話 弱点こそが最大の武器
「僕の作戦はこうだ。今とてつもない量の雨が吹き荒れている。つまり、湖の水も少なからず溢れている。なら話は速い。奇襲だ」
「奇襲!?」
「今我々はとてつもなく弱い立場に立たされている。だからこそ攻め時だ。今攻めずしていつ攻める?今こそ最恐の瞬間だ」
「具体的には何をするのですか?」
「この湖の真下にはちょうど火蟻の巣がある。ならここから木を落とせば少なからず被害は出る。そして僕ら剣蟻が木に乗って降りてきたら?」
「凄いです! さすが蟻村さんです」
(まあこれ一ノ谷の戦いを参考にしてるんだけどね。道なき道を行き、相手を混乱させたなら、道なき道で奇襲するのは火蟻にとっては予想外だ)
「まずは木を倒す。あの一番小さい木を斬れ。他にもあの木にあの木。そしてあれだ」
僕はバランスのとりやすそうな木を斬らせる。枝がいっぱいついてる木の方が、バランスが崩れにくい。
「一通り終わりました」
(あとは奇襲するだけ。今は…11時か。時間というものは速いな)
「では皆木の上に乗れ。火蟻に剣蟻の力を見せつけてやれ」
「おーー」
皆の目は、昨日とは一転して自信に溢れる目になっていた。それを見ていた女王さんは俺に近づいてきて、話し掛けてきた。
「ありがとな。蟻村さんがいなかったら私らは絶望の底から出ることは出来なかった。だから感謝してもしきれない」
「いや、まだだ。今雨のお陰で火蟻の力は弱まってる。だが、彼らの格闘技術は素晴らしい。油断は力を連れてはしない。だから油断を知った生物とは愚かであるのだ。それを分かっているのに油断するから…」
(過去の僕と同じように…。)
僕は皆に向かって宣言する。
「僕らは今、窮地に立たされた。だが生きていればそんなこと何度もある。だからその度に向き合えばいい。その絶望に。その恐怖に。今こそ我々の旗を上げろ」
「おーー」
仲間の喚声。仲間の気迫。仲間の熱気。その全てを力に変え、僕達は今、火蟻の巣に奇襲を仕掛けた。




