第4話 作戦開始
剣蟻は夜の内に剣山を越え、8時頃、湖にたどり着いていた。皆疲れているようで、座って休憩をしていた。
僕は女王さんと仲良く会話を楽しんでいた。
「ふう。長かったな」
「そうですね」
「というか、女王さんも戦うのか?」
「はい。それが女王としての義務ですから」
(この人。思っていた以上に真面目で、思っていた以上に人間だ。胸もある。指もある。それに…心もある。俺は今まで人間を踏み潰してたのかな?)
「あのー、蟻村さん。胸見すぎです」
「Dかな?いや、Eはあるぞ」
「おい、蟻村。女王になんて真似をしているんだ!」
「護衛か。相変わらずだな。君の女王への好意はすさまじい物だ。だが女王は私の女です。渡しませんよ」
「女王様。兵は皆、到着しました」
「分かりました。では蟻村さん」
僕は指揮官として、声を高らげ命令をする。
「これより、火蟻の巣洪水作戦を開始する。行くぞー」
「おおーー」
剣蟻全員の声が、剣山全体に響き渡るのを感じた。
剣蟻達が湖に繋がる穴を火蟻の巣に向け、掘っている。その間に俺は女王さんとお話をする。
「今回の作戦の肝は時間だ」
「まあそうでしょう」
「いや。攻められるから、とかそういうのじゃなくてここの湖は少し特徴的なんだ」
「特徴的…ですか?」
「この湖は昼になると水位が上がる。つまり少しだけ水がこぼれるんだよ。そしたら作業をしてる蟻達はどうなる」
「流されちゃいます」
「そうだ。流されるとどうなる?」
「作業が出来なくなる」
「つまり僕達は負けちゃう。だから今回の作戦は時間が焦点になっているんだ」
女王さんは俺に憧れの眼差しを向けている。対して遠くから俺に嫉妬の眼差しを向けてくる奴がいた。
「おい護衛。なぜ木の後ろに隠れている?」
「それは…護衛のためです」
「ではなぜ俺に嫉妬の眼差しを向けている?」
「護衛のためです」
「ではなぜ剣を抜こうとしてる?」
「護衛のためです」
俺は危ないと思い、少し席を離れる。そして湖の様子を見る。湖に空が写っていた。俺は違和感に気付く。
「曇っている!」
(ヤバい。天気を考慮していなかった。雨が降ったら…)
急に雨が降り始める。
(さっきまで晴れだっただろ)
「まさか…驟雨か!」
「蟻村さん。これは…」
女王さんも心配したようだ。
「一旦兵を引かせろ。ここで死なれては困る」
(とは言っても、この状況を切り抜ける手段が思い浮かばない。どうすれば…どうすればいい)