第24話 椿の香り
僕には見えていないが、シャーロットたちには見えている。僕はアカマルの手を離さず、ゆっくりと歩いた。
「幸太郎。蟻喰い生物が現れたよ」
(何かがさっきから引っ掛かってる)
「幸太郎」
「は! な、何?」
僕はボーッとして聞いてなかったので、シャーロットに聞き返した。
「蟻喰い生物が現れた。そして爆弾蟻たちが戦ってる」
シャーロットは慌てた様子はなく、極めて冷静だった。
(やはり何かが…。そう言えば僕はシャーロットが見えなくなった原因をなんて説明したっけ。確か…人間だった僕だから効いたって言った。そしてシャーロットたちは疑問を抱かなかった。それに今の僕は蟻だ。元々人間だったとしても人間にしか効かない毒ガスが効くわけがない)
「ねえ、アカマル。君には何が見えている?」
「え!? シャーロットちゃんだよ…」
「そうか。君は幻覚だ」
するとアカマルは煙のようになり、消えていった。
「やはり全てが幻覚だったか」
(そうだ。幻覚というものは僕が期待していた結果を自在に引き起こす。だから幻覚は多くの者が騙される)
「シャーロット。どこだ?」
(まだ幻覚の中かもしれない)
僕は用心深く辺りを見渡した。なぜかって。
「出てこい。お前らの正体はバレている。今すぐ出てくれば命までは取らない」
すると8匹の蟻が木の上から降りてきた。
(やはりだ。剣蟻に槍蟻、見たことのない蟻ばかり。だからいると思った。幻覚を見せる蟻が)
「初めまして。私たちは椿蟻。まああなたとは格が違います。ですが、あなたも相当な者です。私の幻覚を見破るとは」
浴衣のような着物を来た女が驚いているように話した。だがまだ舐めているだろう。
「僕は幸太郎。君たちと争うつもりはない。もしここが君たちの領土だったのなら、すぐに出ていく。だからここらを蟻が通っても殺さないでくれ」
僕は必死に椿蟻と話した。
「ああ。いいよ」
意外と優しい。
「ところで幻覚にかけたのは僕だけか?」
「ああ。だがそういえば、お前が着いていった剣蟻が多くのアリクイに襲われていたぞ」
(!!)
「すぐにそこまで連れてってくれないか?」
「構わないが、あとで君が蟻になった話を聞かせてくれ」
(まさかこいつら、僕が生まれ変わって蟻になったことを知ってるのか!?)




