第23話 見つけ出せ
僕はシャーロットを探した。だが見当たらない。
(僕はまだ幻覚の中なのだろうか?)
「アカマル。シャーロットたちが見えるか?」
アカマルは首を横にふった。つまり見えていないのだろう。
(父は軍人だった。確かここら辺で働いていた。そして父は言っていた。人間にだけ有効な毒ガスを開発したと。そしてその毒ガスは幻覚を見せる。だが今の僕は蟻だ)
「ねえ、お兄ちゃん。あれ、シャーロットちゃんだ!」
アカマルが指を指す方を見た。だが僕にはシャーロットどころか、一匹の蟻も見えやしない。
(もし入ってきた瞬間から幻覚を見ていたなら。僕はもとは人間。だから僕には効くのか。なら、探すのは厳しいな)
「ねえお兄ちゃん。速くシャーロットちゃんのところに行こ」
(そうか。アカマルは幻覚が見えていない。だってアカマルは蟻だから)
僕はアカマルが指差した方に恐る恐る歩み寄る。
(もしアカマルが幻覚だったら)
僕はそんなことしか考えられなかった。
「何でお兄ちゃんは震えてるの? もしかして怖いの?」
僕はアカマルを護る。だから頼もしい風によそおうため、強がりも言った。
「違うよ。これは武者震いって言って、戦闘態勢の時になるんだよ。だから僕は全然怖くないよ」
「さすがお兄ちゃん。頼りになるな」
「幸太郎。大丈夫だった?」
ふとした声。アカマルの声では無かった。最近何度も聞いている声。安心できる声。頼れる声。
「シャーロット…なのか?」
「何ですかそれ? 顔を見れば分かるでしょう」
(そうか。シャーロットは毒ガスにはかかっていないのか)
僕はシャーロットが見えていないこと。そしてシャーロットが見えなくなった原因。それら全てを話した。
「なるほど。じゃあアカマルはその手を離しちゃだめだよ。私たちとはぐれないよう、しっかりその手を握っててね」
「分かった。シャーロットちゃん」
そして、弓蟻、爆弾蟻、弾丸蟻の連合の追跡を再開した。




