第2話 蟻の巣
剣蟻の巣にて。
1匹の蟻が、剣を天に掲げて、仲間たちに宣言する。
「我々は何のために戦うのか。それは女王のためである。我々を生んでくれたのは誰だ?女王だ。我々を育ててくれたのは誰だ?女王だ。今こそ、我々剣蟻の真骨頂を見せる時だ」
ー今、剣蟻と火蟻は領土を広げるため、日々戦っています。彼らにはまだ勝つことが出来ない。彼らにはまだ勝つには決め手がない。
あと少し。あと少し。
そんなことを考えてから3年が経った。そしたら戦況は一転して、今剣蟻達は負けそうになっている。
そして彼の名は蟻村幸太郎。元々は虫の研究をしていた科学者であった。だが彼は火蟻に刺され、死んだ。と思ったら蟻になっていた。
そして生まれ変わった先で、火蟻に殺されそうになってる。悲しい話だ。こんなんだったら火蟻に生まれた方がましだった。
火蟻の巣にて。土のテーブルを囲む火蟻は余裕の笑みでデザートを口に含む。
「なあ閣下殿。もうじき剣蟻どもは終わりますな」
「ああ、そうですな。全く、向こうから攻めてきたのに返り討ちにされるなんて思ってなかったでしょうな。わっははっは」
土の中に響き渡る笑い声。
「では明日にでも滅ぼしますか」
「そうですね。精鋭が帰ってくると厄介ですから」
「どうせ死んでるでしょ。彼らは人間を殺せないのだから」
「はっはっは。これは傑作」
その話をこっそりと聞いてる者がいた。彼は急いで女王のもとに向かう。
「女王。大変です。明日、ここは終わります」
その場にいる誰もが諦めた。いや、諦めていた。だって既にここは終わっているのだから。
だが……指令部の部屋のドアが開き、謎の男はドアに寄りかかり挑発じみた発言をする、
「ねえ、諦めちゃうの。上層部って人間の世界も蟻の世界も、ろくな奴いないんだね」
彼は……蟻村幸太郎は舐めた口調で上層部にもの申した。だって彼は勝ち方を知っていたから。
(ってか、こう見ると皆人間なのかなって思っちゃうな。二足歩行で顔がある。腕は二本で心もある。頭から生えてる触覚だけが気になるけど…)