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カトレア。これが俺達3人の住む街の名前だ。人口2万3000人、大都市と呼んでも差し支え無いだろう。
「植物採取の依頼なのにオークとは…ついてないですね。」
「ホントだよ…全く。」
所属するギルドに今回のオークとの接触について話すと受付嬢に同情された。
「取り敢えず、こちらが依頼の報酬金です。」
銀貨1枚と銅貨7枚。銅貨が10枚で銀貨1枚分。銀貨100枚で金貨1枚分だ。まあ、俺達の受けるような依頼では金貨なんて目にする日は来ないだろうけど。
「ただいまぁ…」
借りている宿の一室を開ける…
「あっ…」
リエラ・アルルエル。16歳。髪は透き通るような金髪の長く伸ばしている。胸は大きくお腹は引き締まっているとても女性的な体で最近は顔つきもあどけなさが抜けてきた大人の魅力が溢れるものだ。
「に、兄さん…」
フェニ・アルルエル。13歳。リエラよりも色素が薄い髪を肩くらいの長さに切っている。13歳らしい幼い顔つき、体付き。しかし確かに女性的な魅力を帯びていて可愛いらしいは勿論…それ以外の感想を抱かざるを得ない。
ちなみに俺はアイト・マーチス。17歳。この2人とは血は繋がっていない。そんな魅力的な異性2人の体を直視してしまった年頃の俺は当然色々考えてしまうわけで…
「す!すまん!!」
急いで床に伏せる、土下座だ。
「いや!い、いいよ。アイトなんだから。」
「に、兄さん!頭あげてください。」
っと言いつつ急いで服を着直す音がする。体を拭いていたのだろうか。
そう言っても恥ずかしさから顔を赤くする2人…。
ちょっときまづい…
「じゃ、じゃあご飯にしましょう!」
俺の出す申し訳ないオーラを汲み取ってくれたフェニが嬉しい提案をしてくれた。
「うん。そうしよう!腹減ってたんだ。」
「そうだね!今日はフェニも手伝ってくれたんだよ。」
俺がギルドで報酬関連の話をしていた間にリエラとフェニが今日の夕飯を用意してくれる。基本的に外食はしないのでいつもこうだ。
「じゃじゃーん!今日はビーフシチューだよ!」
テーブルの上に置かれたのはいい匂いがするビーフシチューだ。リエラは料理が上手で最近はフェニも教えて貰っているらしく、この2人の料理を家で食べるのが今の生活で最も心が安らが時間だ。
「お肉柔らかいでしょ!フェニが煮込んだの!」
「そうかそうか、フェニは煮込むのが上手だな。」
煮込むなんて誰がやっても変わらない。そんな事言う奴はフェニのビーフシチューを食べてみろ。
やっぱりこの子はオークの前に立つより鍋の前に立つ方がずっと似合っている。
「昼間のオーク…怖かったか?」
俺達は一応冒険者だ。この街を囲む壁の外へ出て指定の植物や魔物素材の収集。軍が動かない規模の有事の対処、軍が動く際はそのバックアップと常に危険と隣合わせの仕事だ。
リエラは治癒魔法と高い生命力でタンクとして非常に優れている。…が、後先考えずに動く思慮の浅さ。刃物を生き物へと振ることへの罪悪感と冒険者に必要な2点が致命的に欠けている。
フェニは生まれながらの魔法使いだ。あまり魔術について知る機会は無かったが、魔力を制御する精神力と高い保有量を兼ね備えている。だが元々気が弱く、明確な危機を前にすると思考が停止してしまう。
この2人は冒険者には向かないのだ。
「余り怖くなかったけど…あいつの攻撃は痛かったなぁ…」えへへとにこにこしながら答えるリエラ。下手に頑丈な為こうゆう無茶を平気でする。冒険者にとっては相手と自分の力量を正しく比べれない者には必ず死が訪れる。親父もそんな事言ってたっけな。
「す、凄く怖かった…怖すぎて睨まれた時足の力が抜けちゃったよ…」対照的にフェニは相手を過大評価しすぎだ。フェニ程の素質があるなら防護の魔術であの投石は防げたはずだ。最も防げなければ死ぬのでその線引きに慎重になるのは分かるが…
「2人とも…大変だと思うなら…」
「嫌だよ。アイトが冒険者として毎日お金を稼いでくれるなら私は絶対一緒に行く。」
急に真剣な顔になってリエラが言う。
「い、いつも迷惑掛けてばかりだけど…離れ離れで兄さんが危険な目に合うのは嫌だよ…」
フェニが悲しい顔で、小さな声で言う。
「まあ、だよな…悪い。今日はもう寝るか。」
「うん…一緒に寝よ…」
「私も、お姉ちゃんと兄さんの3人で寝たい。」
「えぇ、……」
横になると後ろからリエラが、前にフェニが潜り込んできた。前と後ろの柔らかい温もりを感じているとすぐに眠くなってしまう。
俺達に血の繋がりは無い。だが俺達はきっと家族と呼ぶに相応しい関係でと思う。リエラは正直に言って好きだし、フェニも愛しい。
だがこの幸せはありふれた不幸によって生まれた事を俺達が忘れる日は来ないだろう。