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「アイトは私が守るんだあぁぁぁっ?!、うわっ!」
腹で真っ二つになった異形の死体に躓き盛大に転ぶリエラ。盾で顔を隠していたから前が見えていなかったのだ。
「もう!倒したなら言ってよ!!」
「いまさっき倒したんだよ…お前が突っ込むから急いでな…」
体に力を込めれない。あの異形を倒すのに今のはオーバーパワー過ぎたがリエラが攻撃を受ける前に仕留めたかった。俗に言う過負荷の状態での斬撃の為切り終えた後は酷く疲れるが…まあ、リエラの無事には変えられない。
「アイト兄さん!ごめんなさい!」
とことこと駆け寄ってくるフェニ。恐怖で動けなくなってたのだから、仕方ない。
最も…そんな子が城壁の外…魔物や異形達が歩き回る場所に出るのは問題だが。
「全く、難易度を考えて近場の森で希少植物の採取を選んだのに…結局これか…。」
「よぉ、アイト。『オーク』相手に全力か?」
槍を持った長身の男が挑発的に声を掛けてくる、名前はジーク。Bランクの冒険者で4人パーティだ。その仲間達もジークと一緒に近ずいて来る。
ちなみに『オーク』とは先程倒した異形の事でCランクのパーティならば充分倒せる相手だ。
「仕方ないだろ。俺たちはDランクなんだから…」
「ははっ!確かにそうだ。たかだかオーク1頭に息を切らすのも無理ねぇなw」
声を上げて豪快に笑うジーク。残りの3人もクスクスと笑っている。これでも今俺たちが住む街、『カトレア』のギルドに6組しか居ないBランクパーティなのだが…それに見合う態度ではない。
「ま、『残り』は任せとけよ。Dランクじゃあ死なねえ事すら難しいだろうからなw」
そう、オークは大抵の場合群れを作る。一体ならばDランクでも倒せて然るべきなのだ。オークの脅威とは数の脅威そのものだ。
「ほら、5体出てきやがった。」
のそのそと先程倒したオークと良く似た異形が五体、木の影から現れた…
「フレイム・イグニッション!!」
ジークパーティの魔術師が魔術を詠唱。するとオークの内の1体が突如燃えだし、数秒の間を置いて絶命した。
「エンハンス・フィジカル」
金属を用いて作られた弓。それを魔術による身体強化で引き、射る。同じく金属製の矢は高速で放たれることで硬い肉質のオークすらも射抜く。
「残りは俺が仕留めてやる!」
残った3体に向けて走り出すジーク。ヒーラー兼バッファーのもう1人が強化の魔術を掛けることで圧倒的な速さで迫り、最も近い1体の心臓に槍を突き刺す。すかさず槍を引き抜き、その力を回転運動に変えもう1体の首をへし折る。
残された1体が後ろを向き逃げ出す。
「『ボルト・ボルグ』!!」
ジークから雷光が迸る、それは手に握られた槍へと向かい、蓄積される。
後ろに引いた右足を大きく前へ、槍を無理やり前に投げ出すように上半身を振る。すると槍が手を離れた瞬間突如現れた魔法陣により急加速される。発電、強化、加速の3種の魔術を一呼吸で発動させつつ寸分の狂いも無く理想的な動きをトレースする体術。Bランクパーティのリーダーに相応しい技量だ。
打ち出された雷槍は矢のように背中を向けたオークを突き刺し…
「ゴアァァァアア!!!!!」
体内に届いた槍からの放電により内蔵を焼かれたオークの叫びが響く。
「まっ、もう大人しく帰っとけよ。城壁までの帰り道は自分達で何とかしろよ。」
そう言い残し去っていくジーク達。
「疲れた…帰ろう。」
「「うん。…」」
とぼとぼと帰路に着く俺たち3人。
このピンチが俺達の日常だったりする。