この世界の強さ、俺のパーティの強さ。
のんびりしていけたらなと思います。勿論皆様が許して頂けたらですが…
人は弱い。人々はその事を理解し、異形の生物や人に牙を剥く精霊達と相対する時は必ず複数人で挑む…すなわち『パーティ』を組む。
絆から産み出される連携と個々の能力が『パーティ』の強さの全てだ。
「がぁぁっ!」
3メートル近い巨躯の人型異形、その人の顔程もある拳が長い金髪の美しい少女の腹にめり込む。
俺なら奴の打撃を避けれた。だがこの頑固者は言うことを聞かない。
「リエラ!俺より前に立つなと言っただろっ!」
「ご、ごめん…アイト…。でも…私は『パラディン』だから…。」
悲しい、飛ばされた先で横たわった彼女の顔に痛みと、ほんの少しの悲しみの表情が浮かぶ。
クソッ…心の中で毒づく。リエラでは無い。彼女を前に立たせてしまった自分にだ。
異形がのっそりと足元の大きな石を拾う、そうするとそのまま振りかぶり投擲の構えを見せる。
異形の目が捉えた標的は…
「ひぃっ…」
俺ではなく…その後ろに控えていた幼い魔術師…
「フェニ!避け…」
女の子座りをしている。ペタンと、地面に座り込んでいる。幼い彼女、その細い小さい四肢から力が抜けた様は愛らしい…しかし、その表情からはそれが自分の意思による行動ではない事がよく分かった。
異形が動く、大きく振りかぶる。最初はゆっくり、そこから一気に加速していき頭の上を腕が通り過ぎた瞬間、腕は振り下ろされ石は砲弾と化しフェニの元へ…
「クソがァァァァ!!」
俺は腰の剣の柄を握り、2メートル程横に飛ぶ。異形とフェニの間に立つ。
親父から受け継いだ剣。刃が片方にしか付いていなく、緩かに曲線を描き、横殴りにされるとすぐ折れてしまうらしいがその刃で撫でたものは容易く切り裂く。『刀』とゆう物らしい。
「俺を…見ろよぉぉお!!」
柄を握りしめた腕を振り上げる。それだけでは鞘から抜ききることは出来ないので腰を捻る、捻られ前に出た右足は、その勢いのまま前に。後ろに押し込まれた左足はそのまま地を蹴る。
両足で生まれた加速を上半身に伝え、腕に伝え、刀に伝え…目の前に迫った大きな石に伝える。
ギィィィィィィイイッッ!!!
硬いものが強く擦れる音が響きフェニの両脇を両断された石が穿つ。
異形の顔が若干歪んだ気がした。嫌な顔に。
前に歩き出す異形が足元にある石を左右の手にそれぞれ拾う、すると再び投擲の構え。今度は先程のような全身投擲ではなく半身で勢いよく腕を振る。
だがその弾速は俺を殺すには充分だ。
「オラァァァ!」
バギィィンッツ、バギィィンッツ…
左右の石を投げ終えると再び歩き出し、また左右に手頃な石を拾うと止まり、投げる。
バギィィンッツ、バギィィンッツ
短い感覚で失敗が許されない致死の攻撃が来る。
石を切る度手に衝撃が伝わり痛みに顔が歪む。しかし異形は息すら切らさずこちらに迫ってくる。
「来るならさっさと来いや!!刃が届かねぇだろーがよぉお!!」
あの程度の異形なら、魔物よりかは珍しいが数は居る。『強い』冒険者なら簡単に倒せて然るべき相手だ。だが今俺は奴に切りかかれない。後ろに守るべき相手が居るからだ。
「アイトばっかり虐めるなぁぁあ!!」
はっ!リエラ!?石を斬ることに集中しすぎてリエラの事をすっかり忘れてしまっていた。
異形に突撃するリエラ。体の丈夫さと神聖魔法への高い適正から来る治癒力は仲間の前に立つ『パラディン』に相応しいものだ。だがリエラはバカだ。どんな奴の攻撃にも平気でぶつかりに行く…
異形がリエラに向き直り、左右の石を投げようとする。
いつも通り無策に異形に向かうかと思っていた、が、リエラは左手の盾を顔の前に。顔への直撃を防ぐつもりだ、確かに頭部は最も致命傷に繋がりやすいが…
「アイトは私が守るんだぁぁぁ!!」
「いや当たる!!顔以外全部当たるって!!」
言っても仕方がないバカだから。
腰を落とし、刃の背を左脇腹に当てるようにして構える。全身の血の巡りを感じながら息を吸う。
目を閉じ、吸った息をリズム良く吐き出すように唱える。
「『凪の一刀 斬鬼』っ!!」
目を開き全身に力を込める、いや力と共にこの世界を満たす魔力を込める。
爆発的に増した身体能力、先程の抜刀術の何倍もの距離を駆け、何十倍もの切断力ででかい図体の異形を
「死ねやぁぁぁあ!!」
ぶつ切りにする。