三百九十六話
さて、今俺と美咲さんは報告の為にと村の協会にある会議室に来ている。
そんな俺達の前には、実に珍しい事に入谷さんと品川さんが並んで座っていたりする。どうやら、後続の育成が済んだ事で入谷さんは、その後続の人にズーフのダンジョン前拠点を任せる事が出来るようになった様だ。
で、今は拡張された為に人手不足となった村へと戻って来ている。うん、そもそも相思相愛だったこの二人が、長期に渡り別々の場所で働く状況になったのは皆の気がかりだったからな。一安心と言った処だ。
と、それは今は横に置いておくとして。
そんな二人相手に、お城ダンジョンのリッチについてや駅ダンジョンについての報告。
報告をしていると、次第に顔が険しくなっていく二人だけど……まぁ、其処まで考え込む必要は無いんだよな。だって、駅ダンジョンは崩壊する予定だから。と言うか既にただの駅に戻っている可能性も有る。
それは何故かと言えば、ダンジョンを支配していたコアを俺達が持ち帰ったからだ。
という訳で、そんなダンジョンのコアについてなんだけど、これに関してはリッチが大活躍してくれた。
「で、この大きな魔石みたいなものがダンジョンのコアだと言う事ね」
「はい。リッチが手を加えた事で最早なにも害が無いものになってます」
リッチ曰く、そもそもダンジョンコアとは魔力の溜りと言える場所から自然発生する物だそうだ。
そして、ダンジョンコアは自らを守るためにダンジョンを造り、その護衛として強力なモンスターを呼び込んだり作り出したりする。
そんなモンスター達の中からボスクラスのモノが誕生すると、今度はそのモンスターを狂わせ、寄生し、最終的には乗っ取ってしまうらしい。
と、まぁ、此処までが普通の高難易度ダンジョンにおけるモンスターの末路だ。アラクネ先生やラミアなどは間違いなくこの流れの被害モンスターと言えるだろう。
しかし、何処の世界にも例外と言うモノがある。
そう、清州の御城ダンジョンに居るリッチだ。ダンジョンのボスとしてお呼ばれしたリッチは、コアにその身を乗っ取られる前にダンジョンを逆に制圧した。その方法は良く解らないけど、後はコアだけだ! となった時に、コアはその自衛本能を全開に逃げ出した。
……ダンジョンのコアが逃げるなよと思わなくも無いが、コア自体に戦闘能力は無い。コア達に出来る事は創造のみだ。
違うダンジョンと繋がるゲートを作り、そのゲートに飛び込み、其処に元々あったコアと合流した事で出来上がったのが、あのある意味凶悪と言える駅ダンジョンだった訳だ。
「で、駅ダンジョン側のコアとやらも、本来であればモンスターと融合する予定だったけど……逃げ出して来たコアのモンスターに対するトラウマをもろに浴びてコアのまま隠れる事にしたって事かしら?」
「リッチが言うには恐らくそうだろうと」
本来であれば、ダンジョンのコアを入手する事など出来ない。何故なら、モンスターに寄生したコアはそのモンスターが討伐されると消滅してしまうから。
此処に今加工されたとは言えコアが有ると言うのは奇跡に等しいと言える。うん、どれだけリッチが規格外か良く解る話。
「コアを持ち帰った後、そのコアをリッチに渡して城ダンジョンのコアと駅ダンジョンのコアに分けた事で、此方には駅ダンジョンのコアを譲ってもらう事が出来た訳だ……本当にリッチさまさまと言ったところかな?」
入谷さんの言葉に全力で同意だ。
このコアが有れば出来る事は大量に増えると思う。何せ、ただの魔力の塊としてみたとしても完全に魔石の上位互換な訳だし。それだけでも村の研究者に渡せばとんでもない何かが作られる可能性だってある。
それに、詳しい調査は必要だろうけど、もしかしたらダンジョンコアとしての能力だって残っている可能性も有る。まぁ、コアとしての意識などリッチが加工した時点でなくなっているのだが、コアを二つに戻すのとコアの意識を消すこと以外は何もしていないとリッチが言っていたからな。
「もし、そのリッチが言っている事が正しいなら、防衛力の強化が一気に進むな」
「……入谷さんダンジョンマスターにでも転職する気ですか?」
「いやいや!? そんな大役は無理があるよ。こう、皆で共同管理するのが一番良いかなぁ」
加工コアによる村の一部をダンジョン化。そしてダンジョンの平和利用……うん、それが出来れば実に素晴らしい事ではないだろうか。
「と、それとですね……リッチについてなんですけど。どうやら友好的な関係が作れそうなんですけど」
「おっと、その事も有ったね。しかしズーフ達とは違ったダンジョンのマスターか……本当にそのリッチは大丈夫なのかい?」
まぁ、リッチに関して疑うのは仕方の無い話。だって、リッチと言えば物語においてラスボスだったり災厄の象徴だったりと、実に恐ろしいアンデッドの頂点と言える存在の一つだ。
大地を腐らせ、大量のアンデッドを召喚し、禁呪と言えるとんでもない魔法を研究する存在。うん、これを警戒するなと言う方が無理な話。
とは言え、俺達が会ったリッチはどちらかと言うと……新しいもの好きの趣味人……いや、死んでいるのだから趣味アンデッドだ。ぶっちゃけ、村の研究者達と同じ匂いしかしない。
「うーん……白河君の言葉を疑う訳じゃないけど、これは実際に会ってみないとかな。何せ、色々な技術についての意見交換とかもするのだろう?」
「そうですね。俺の一存では判断できない事だったので明言は避けましたが、俺としてはあのリッチに技術提供をするのは有りだと思ってます。こうしてお土産も貰った訳ですし」
ま、お土産と言うのは駅ダンジョンのコアに幾つかの魔本だ。……まぁ、魔本に関しては俺の場合被りの魔法なので使えないのだが。
それに、それ以外にも色々と提案を受けて居たりする。
「高難易度ダンジョンへと急に足を踏み入れるのは危険だから、試練ダンジョンをクリアした者にステップアップの場を用意する……か」
「はい。モンスターの強さなども色々と調整してくれるみたいです」
まぁ、この条件は友好的な関係を結び、技術の相互研究が行われる事になればと言う前提がつくのだけど。
それでも安全に高難易度ダンジョンについて学べるのであれば、それは俺達に探索者にとって途轍もなく大きな財産となる。
「品川さんどうしようか? この事はやはり直接リッチと会話する必要が有ると思うんだけど」
「そうね……私も同意見だわ。ただ、その場合もう少しリッチと対峙する人を増やすべきよね」
「其れから守口君を呼び戻そうか。彼なら現場のトップとしての目線で判断してくれるだろうし」
ふむ……と言う事は、入谷さんと守口さんが共同でリッチと会うと言う事だろうか。これまた豪華な事だ。
「あ、その時は白河君護衛を頼むよ」
「え、俺ですか?」
「当然じゃないか。城ダンジョンまでの道のりは白河君達が一番良く知っている訳だし、リッチと顔を直接合わせたのも君達だろう?」
確かにそうなんだけど、もしかして俺達は休日など無しと言う事だろうか。
「あぁ、休みの事は気にしなくて良いよ。守口君が戻るまで時間が掛かるだろうし、その間に装備のメンテナンスも白河君達が休む事も十分に出来るはずだから」
「なるほど……でしたら、護衛の件承りました」
アレだけの戦闘を行って来たのだから、休息も無しだと正直しんどい。なので、休めるなら何でもいい。
まぁ、次の仕事が決まったという事だし、休んでいる間に次何をしようかなんて会話を、美咲さんとしなくて済むのは楽な話ではあるか。
「それじゃ、私達はこの後この件について話し合いをするから、白河君達はこのコアを研究所に持って行ってくれるかしら」
「はい。……ただ、モノがモノですのでコアは婆様に渡そうかと」
「……それが良いわね。下手に研究者の誰かに渡せば、とんでもない事に使いそうだし」
あぁ、うん。良く解ると言うか、そうなる未来が明確に見えてしまうな。
きっと……ダンジョンのコアだ! 良しダンジョンを造るぞ! どんなダンジョンだ? よし、空を飛ぶ天空の城でも作るか! とか、馬鹿みたいな魔力の塊だ、これなら巨大ロボットが作れるに違いない! よーし、スーパーなロボットつくっちゃうぞ! とか言い出すに決まっている。
ただ、そんな物を作ってみろ? 空には航空機を意味不明に破壊した何かが居るし、巨大ロボットなど何処にしまっておくのだという話。ロボットもせめて作るなら五メートルから七メートルクラスまでにしてくれ。
まぁ、どちらにしても問題が起き掛けない予感しかしない代物だ。浪漫はあるけど此処は入谷さん達が言う様に、防衛施設の為に使っていただきたい処である。
なので、間違いなく婆様に渡す必要が有るだろう。きっと婆様なら適切にコアを使ってくれるはずだ……うん、アラクネアーマー時みたいな暴走はきっとしないと思う。
「それじゃ、美咲さんそろそろ行こうか。村に戻って来た訳だし色々と顔を出したい処も在るしね」
「そうだね! 叔父さんの様子も見に行かないと! まったく……何時まで寝てるのやら」
そんな風に軽く返事をしてくる美咲さんだが、実は少し思案顔。
実は美咲さんはある物を手に入れているんだよね。そのある物ってリッチがコアを二つに分けた時に出て来た。
「それにしても……〝歯車〟かぁ。これってやっぱり、結弥君が前に手に入れた〝アレ〟に関係があるのかな?」
「かもしれないね。でも、あの時みたいに渡された訳じゃないからな……少し様子見と言った感じかな? 何か有るならきっと言って来ると思うよ」
とは言え、十中八九関係が有ると思う。何せ俺と同じで美咲さんはその〝歯車〟を取り込んでしまったのだから。
しかし、本当に一体何に使うのやら……全く予想が付かないんだけど、出来ればさっさと教えてくれませんかね。
ブクマ・評価・感想・誤字報告ありがとうございます!!
無事に戻ることが出来ました。が、体調はまぁボロボロでしょうw




