三百九十五話
双葉の言う場所を確かめてみると、確かにモンスター達は其処を嫌がっているように見えた。
なので、俺達はそのモンスターが嫌がる場所……〝モニュメント〟の前へと陣取ってみた。
「おお……まじで正面と背後からの突撃が無くなったな」
「なんで気が付かなかったんだろ……前までのウェーブでも同じ状況だったハズだと思うんだけど」
「双葉もさっき気が付いたばっかりなの……」
今更後悔しても仕方が無い。そもそも高難易度ダンジョンと言われる場所で、こんな安地と言うか弱点があるなんて誰も思わない。
だけど、実際有る訳だし、それに気が付いたのだから存分に利用させて貰おう。
「それに、まだここのボスを発見してないんだよな」
「リニアでも新幹線でも車でも無かったもんね……大型のマネキンも大量に破壊してるけど」
今の所どれも間違い。折角リニアを倒せたと思ったんだけどなぁ……因みに、倒したリニアの代わりに出て来た新しい奴は、今の所突撃出来ずに困惑しているようだ。
モニュメントを中心にグルグル回りながら位置調整しているみたいだけど……突撃する為の角度が得られないらしい。そして、それは他の電車たちも同じ。まぁ、車や人形なら襲って来てるけど此方は対処が楽。
「うーん……全くボスらしきもので出てこない。ってか、そもそもな話なんで此処は安地なんだろうな?」
「確かに何でだろう? こう、モンスターが嫌がる臭いでも出てるのかな?」
「ミャン?」
「双葉達は問題無いの!」
もし、モンスターが嫌がる臭いやら気配があるのなら、イオ達も此処に近づけないはずだから其れは無いだろう。いや、ゴーレム特有の何かがあるとかか? もしそうだったら俺達には解らない。
「風、上から何か見えないか?」
「ピュィ……」
「解らないかぁ……風ちゃん引き続き空からの牽制お願いね!」
「ピュィ!」
上空から見ても何かがあるようには見えないか。
あ、この場を嫌がる理由って実は破壊したくないからだった場合もありえるだろうか。こう、例えばボスがこのモニュメントに隠れているとか。
確かにそれなら突撃を中心としているモンスター達が近寄れないのもうなづける。
「それなら一つ割ってみるとするか。さてさて、一体何が出るかな」
「モニュメントを攻撃するの? それをやったらリニアとか突撃して来るんじゃない?」
あ、その問題もあるか。破壊しないように動いてたものが破壊されたとなれば、制限が解除される訳だから突撃してくる可能性が高くなる。
「とは言え、やってみないと先に進めないだろうし、警戒は怠らないようにしつつだろうな」
「了解! それじゃ、私達がリニアとか見てるから結弥君はさくっとやっちゃって」
さて、モニュメントに対して中を確認する為に切断してみる訳だけど、生半可な攻撃では刃など通らないだろう。
それならここは、俺の使える切断系で最強と言える方法で行くとしようか。
「選ぶのは時空間魔法。これをマナブレードに付与して……〝次元断!〟」
斬る方法は横薙ぎ。スパーンと切断した後、切断したのが解らない様な状態で乗っかったままだったので、切り裂いた後の上の部分を思いっきり蹴り飛ばす。
蹴り飛ばした後のモニュメント上部が、たまたま反対側に居た新幹線にぶつかり更に他の電車にも……と、連鎖し始めたのはまぁ良いだろう。うん、俺にとっては実にラッキーな話だ。
と言うか、アレだけ密集してグルグル回ってたら連鎖するのも当然か。
「さて、中にあるのはなんじゃろな……っと、おや?」
覗いてみると、それなりに大きい鉱石みたいなモノが台座に乗っている。しかも何と言うか……二つのソレがくっついたかのような歪な形。うん、左右非対称だ。
これを回収してみたら良いのだろうか? しかし、そのまま触れると言うのは問題が有るか? と言う事で、久々の十フィート棒さんの出番です。
「距離を取りつつ突いてみるけど……うん、突いた瞬間それが嫌なのか点滅しているな」
「結弥君、こっちはまだ突撃して来ないけど何か有ったの?」
「あー、ちょっと変なのが有った。襲ってこないなら見に来るか? 恐らくコレが有るから突撃して来ないんだろうし」
という訳で、美咲さんを読んでみる。外はイオや風達に任せておけば大丈夫だろう。そもそも、連鎖衝突でかなりのモンスター達が体勢を立て直すのに時間を掛けているハズだし。
「さて、アラクネ先生これが何か解ったりする?」
『ふむ……何やら妾達の意思を奪ったモノと同じ気配を感じるな』
「となると、これがダンジョンを造りだしてる何かって事かな? だとすると、リッチの頼まれごとはコレを回収する事だけど……どうやって回収しようか」
下手に触れたらモンスターの様に洗脳でもされるかもしれない。かといって、これを何とかしないとダンジョンから出ることが出来ない訳だし。
「破壊したら良いのかな?」
そう言いながら十フィート棒で殴りつけてみる……が、鉱石みたいな奴はガン! と衝突音をならしただけで傷一つ付くことなくその場に残っている。いや、少し嫌だったのか点滅しながら抗議している様にも見えるが。
それにしても、この十フィート棒ってさりげなくバージョンアップしてるんよ? 使われた素材、何気なくミスリルとかだったりするからね。だと言うのにも拘らず、傷もつかないとか硬すぎるだろ。
『ならネットでも作って其処に入れていくか。その棒に引っ掛けられるようにすればいいだろう』
考えているとアラクネ先生からその様なお言葉が。しかしその内容は、実に豪華すぎるタモである。
ただ、直接触れたくないという事を考えると……それがベストなのかもしれないな。
と言う事で、即席タモを作り上げ鉱石っぽい奴をタモに入れて、十フィート棒で引っ掛けながら持ち上げる。
軽く振り回してみたりしてみたが、どうやらタモは破損する事も無く鉱石っぽい奴が飛び出て来る気配も無い。回収完了と言った処だろうか。
「よーし、イオ撤収って……あれ? モンスター達が停止してる?」
タモを前に出してこいつを壊されたくなければ! と言った感じでモニュメント内から飛び出したんだけど、モンスター達が完全に沈黙している。
何と言うか、燃料不足で動けませんと言った感じだろうか?
「ミャン……」
「少し前から全く動いて無いの。見てるだけで良かったから楽だったの!」
ふむ……と言う事は、こいつを台座からどかしたからだろうか。少し前と言えばタモを作ってとやってた頃だろうし。
そして、肝心のタモの中に居る鉱石っぽい奴はと言えば……必死にリニアに向かって飛んで行こうと抵抗している。だが、アラクネ先生のネットが突き破れず無駄な努力と言った状況。
とは言えだ。何度も繰り返している内にネットが破れる可能性だってある。此処は一気に撤退するのが吉だろう。
「それじゃ、此処から清州城があるゲートまで駆け抜けるぞ!」
「了解!」
「イオと双葉は先頭で、風は空中から自由に、俺と美咲さんは……今回こいつの運搬があるから俺が真ん中で美咲さんは殿をお願い」
「ミャ!」
と、いつもと少し違う編成で移動。
とは言え、移動中は実に楽な物だ。何せモンスターが動いていないのだから……アレだけ面倒だった爆弾駅弁やら包丁やらも全てが停止。ただ、地下街の至る所に転がっていて景観が凄まじく悪い。これが崩壊前ならばゴミ処理をしっかりしろよ! とクレームラッシュモノだろう。まぁ、今転がってるのモンスターなんだけど。
そんな訳で、リッチが占領している清州城ダンジョンへと帰還。さっそくリッチに会いに行きお使いクエストの報告をする。
「おぉ! 思った以上に早く戻って来たようだな。して、吾輩の頼んだものは?」
「これで合ってますか?」
「ふむ……ふむふむ、少し見た目が変わっておるがコレで間違いない」
「其れは良かった……で、それって何ですか?」
疑問だったので聞いてみる。何せそれ、ただ硬いだけで全く攻撃手段を持っていない……と言うのに、立ち位置はダンジョンのボスと言った感じのモノだ。不思議に思わない訳が無いだろう。
必死に抵抗はしていた様だが、タモの破壊など最後まで出来なかったしな。
「こやつか……こやつは言うなれば〝ダンジョンのコア〟だ」
おっと……ダンジョンコア。うん、サブカル好きには心が引かれる言葉だけど、今までのダンジョンではそんな物を見た事も聞いた事も無かった訳だけど、それっていったいどういう事なんだろうな?
これは、リッチに詳しく聞く必要があるようだ。
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ダンジョンコアだぁぁぁぁぁ! と言う事で、ダンジョンなのにコアが今まで出て来ませんでしたが、今回等々出現しました。
まぁ、その理由は次ですがw




