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三百九十話

「もうやだぁぁぁぁぁぁ! 不気味だし! 数が多いし! 微妙に面倒なのが多いし!!」


 叫ぶ美咲さん。何故叫んでいるのかと言えば、まず俺達が居る場所なんだけど所謂地下街と言われる場所だろう。

 駅やらその周囲にあるデパートなどの地下。それらが重なって大迷路になっているあれだ。拡張に拡張を重ねた結果……毎日と言うレベルで通わなくては絶対迷うのでは? と思える。

 当然、俺達はそんな場所へと足繁く行った事など無いので全く解らないし、本物のダンジョン化されているのだから、更に拡張や改造されているだろう。うん、全く解らん! と叫びたい構造になっているハズだ。


 そして、そんな場所で襲って来ているモンスター……先ず一つ目はマネキンの大群。

 地下の明かりが薄暗く、偶に点灯したりもしているのでホラー感が出ている場所で、マネキンの大群がゾンビの群れの様に現れる。そんなもの不気味以外何者でもない。うん、美咲さんが叫びたくなる気持ちは良く解る。

 とは言え、こいつらはリッチお手製の甲冑に比べて弱すぎる。銃弾の一発でもヘッドショットを決めれば簡単に崩れ落ちる。まぁ、代わりに次から次へと補充されていくけど、其処はリッチのお城ダンジョンで旗持ち戦の時と変わらない気はしなくもない。

 ただ、それがマネキンだけならと言う話。


「確かに面倒だな! 的が小さすぎる!!」


 そう言いながら、散弾系の魔法を使って迎撃するのは、空を飛ぶ包丁やらペンやらカッターナイフやら鋏などのモノ。

 中には、本何てモノもある……が、これがまた実に可笑しな相手。いや、モンスターなのだから可笑しな相手と言う表現自体が可笑しいのだが。

 この本、なんと開いたり閉じたりしながら飛んでいて、しかも開いた時に何やらギザギザの牙の様なモノが見える。……なんで本に牙がと思うが、アレで噛まれようものなら痛いでは済まないだろう。


「あぁぁぁもう! ファイアショットガン!! ショットガン!! ショットガァァァァァァァン!!」

「ちょ! 美咲さん乱射しすぎ!!」

「だってこいつら回避上手すぎるんだもん!!」

「むぅぅぅぅ! 双葉の銃が中らないの!!」

「とりあえず美咲さんも双葉もマネキンを中心に攻撃して! 的が小さいのはこっちでやるから!」


 まぁ、美咲さんの言う通り、本などは特にだけど加速したりひらりふわりと飛んだりしながら回避している。

 なので、ある程度遠い位置からだと散弾系の魔法でもあいつ等はぬるりと避けてしまうんだよな。


「だからここで選択するのは……ウォル! 風障壁! ドーム状に俺達の移動に合わせて同じ速度で動くものを!」

「ワフ!」


 と、簡単には接近出来なくする魔法で対処。下手に突撃したらズタボロに切り刻む、精霊による風魔法の壁。ただ、此方の銃弾なども狙いから逸れるのでベースは魔法系の物が良いだろう。

 って事で、持つ武器は魔法銃を二丁。これと散弾系の魔法を合わせて使い前方に居る敵を撃ち落としながら進んで行く。


「とは言え、数が多すぎてじわじわとしか進めないか」

「むぅ……双葉の銃弾が逸れるの」

「あー言い忘れてたな。蔦の鞭ベースで頼む」

「解ったの! ぺしぺし叩くの!」


 これで双葉は大丈夫だな。ただ、イオが少し不満そうだ。何せ、駆けまわれないからストレスが溜まって居るかもしれない。


「イオはもう少し待機な。ここぞと言う時に駆け抜けて貰うから」

「ミャー」


 しょうがないなぁと言った感じの鳴き声。今は双葉を騎乗させているだけだからな。何と言うか私大丈夫ですよと言った感じでお澄ましウォークをしているけど、尻尾を見る限り実に不満ですと言っているのが良く解る。


「あ、これ面白い! アラクネット射出!」


 などと突如美咲さんが楽しそうな声を上げた。

 なのでそちらを見て見ると、アラクネの糸をネット状に作り上げて射出している美咲さんの姿が。

 ただ、そのネットはまっすぐ飛んで行ったかと思うと、風の障壁にぶつかった瞬間にネットが風に乗り? 流され? ぐるんぐるんと周囲を回転しだした。

 そしてそのネットに囚われグルグルと回転しながら風に斬られる本などといった小型のゴーレムモンスター達。


「こう、刃物系は風の障壁を他のモンスターよりも抜けて来やすいみたいだけど、ネットを風に乗っけておけば勝手に捕らわれてくれるみたい」

「これはまた、実に相性の良いトラップの技の誕生だな」


 そう言っていると、鋏型が今度はネットに囚われ洗濯機状態に。

 こうなると、俺達としては狙いが付けやすい。だって回転しているだけだから次に移動する場所の予測など簡単に出来る訳だ。


「クレー射撃みたいなもんだな……っと、散弾・凍結」


 流れて来るモンスターをネットごと凍結させイオの前へ落とす。

 すると、イオが待ってました! と言わんばかりに爪撃で凍ったモンスターを叩き割る。パリーンと砕け散るので、ストレス解消には丁度良いはずだ。


「ミャン! ミャン♪」


 と、楽しそうに鳴いているしな。やはりこの選択は正しかったと言える。うん、だってねぇ、霜が出来た土を踏んだりとか氷が張った水たまりを割るのって以外と爽快だからね。


 こんな感じで、危なげなく進んでいるように見えるが……実はそうでもない。何せ風の障壁を張りながらゆっくり進んでいるんだ。当然の話だが魔力がどんどん消費されている。

 と言うのにも拘らず、進めば進むほどモンスターの密度が増していく。


「あぁ……駆け抜ける事が出来たらどれだけ楽か!」

「そうだね。マネキンだけならその選択もあったけど、小型タイプがどうしてもね……」


 色々ある小型のモノの大半はさして問題は無い。トレーだったりハンガーだったり……中にはお菓子みたいな物もあるけど、それらは全て障壁で防ぐことが出来る。何やら着てしまえばズタボロに怪我をしそうな服とかもあるけどな。


 実はある一定のラインを進んだ後、実に恐ろしいモノが襲ってくるようになった。それは何かと言えば……。


「なんで駅弁が爆発するんだろうな……」

「パッと見た感じ、凄く美味しそうなのにね」


 普通に突撃して来るモノの中に、何やら爆発するのが紛れ込んでいる。

 いや、パッと見れば解りやすくはあるんだけどね。ほら、加熱機能付きの駅弁って有ったと思うけど、あのタイプが爆発するんだ。

 紐を引っ張るとシートが外れて、生石灰と水が化学反応を起こすあれ。それにより、百度程の熱蒸気を発生させて温める機能なんだけど、どうやらダンジョンでは熱を発生させるのではなく爆発を発生させるらしい。


 ただ、この爆発が実は面倒だ。


 爆発により、一時的に風の流れが狂う。するとその狂った場所から小型のモンスターが今だ! と言わんばかりに突撃を仕掛けて来る。

 まぁ、其処に散弾魔法を撃ち込んで対処するのだけど、それが数か所で起きようものならその対処も大変だったりする。


「進行速度がアップさせれない上に、面倒なモンスターが次々増えていくとかマジで止めて欲しいな」

「うーん……この障壁を張った状態で駆け抜けたらどうなるかな?」

「一気に障壁が削られてモンスターの群れに無防備で突撃だろうな。恐らくマナシールドを張って突撃しても同じだと思うぞ」


 特に刃物はシールドブレイカーかシールドをすり抜けやすくなる能力を持っているからな。

 これが、モンスターが出した攻撃ならばまだ問題は無いだろう。例えば植物ダンジョンのマシンガンひまわりとかもろこしランチャーとか。

 だけど、此処のはモンスターそのものが突撃して来ている。と言う事は、突撃後も継続して攻撃して来る訳だ。うん、ガンガンとシールドは削られて行くよね。なので、直ぐにバッテリーが消費されてしまう。

 という訳で、障壁やマナシールドを展開しながらダッシュでの突破は却下だ。ちまちまとでも良いから撃ち落としながら進んだ方がマシ。


「うーん……手榴弾とかで吹き飛ばすのは?」

「距離があるなら有りだろうね。ただ、これだけモンスターが密集した上で接近されている状態だから……破片とかがこっちに飛んで来るんじゃないかな」


 中にはその爆発を利用して突進を加速させて来るモンスターも出て来るだろう。それが爆破駅弁だったりシールドを抜ける刃物系であれば実に面倒な事になる。


「ま、そう言う訳だから最悪ウォルには魔石で頑張ってもらう事になるかな」

「……ワフゥ」


 ウォルが実に残念そうな鳴き声を上げる。うん、其処は少し我慢して頑張ってもらいたい。俺としても魔力を温存したいしな。

 なに、此処を攻略したら少し多めに魔力団子を作るから、ここは一つ魔石でお願いします! ってことで、先ずはオークの魔石でも渡しておこう。

ブクマ・評価・感想・誤字報告ありがとうございます!!


物語の初期で妹達と廻った場所がダンジョンになるとは誰が思っただろうか( ̄д ̄)

えぇ、最初からこれは決まってました。漸くフラグ? 回収です。まぁ、駅ダンの話だしてましたしね。

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