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三百八十六話

――外に居るイオ達――


「まだまだ魔力の使い方が甘いな。それでは吾輩でなくても通用しないぞ」

「ミャン!」

「むぅ……リッチさんは強すぎるの!」


 リッチがイオ達の特訓を始めてから数時間。その間に教えた事を使いこなせという方が無理な話ではあるが……それでも、実践に近い模擬戦での訓練なのでその成長スピードは限りなく速い。が、リッチである彼は脳筋的教え方で、兎に角使って覚えろ! な口。所謂スパルタ形式であった。


 そもそもな話だが、モンスターは人よりも魔力の扱いについて天然でやって居る部分がある。イオの身体強化などが一番いい例だろう。生まれつき出来る力と言うのは其れだけで他よりも強いと言うのは当然だ。

 しかし、その逆の生まれ持ってない使い方を学ぼうと思えば人の数倍は掛かってしまう。……イオがやって居るのはそんな特殊な使い方だったりするのだが、今の所芽は出ていない。


 逆に双葉はまだまだ本人自身が幼い。幼いが故に自らの能力すらまだまだ使いこなせていない。故に彼女の植物系魔法を徹底的に訓練している段階。

 扱える蔦の数を増やす、蔦の先端等に花を咲かせて種を飛ばす、蔦自身を棘だらけにして威力を増す……と、蔦系の魔法だけでも出来る事は沢山ある。

 ……が、今まで双葉に出来ていたのを上げれば、最大六本の蔦を操るぐらいで、その内容も、網を作ったり綱を結ったりして鞭として使ったり、ソーントラップを作り上げたり、専用の銃を持たせていた位だ……まぁ、銃を持たせてと言うのはとても驚異的な物だが、それ自体は花から種を飛ばす行為を見た結弥が双葉に即戦力を持たせる応急処置であったのは否めない。


 次に風。

 彼は一番幼い。とは言え、鳥の成長と言うのは早い。早いのだがモンスターである彼はまだまだその伸びしろを持っている。

 偵察機兼爆撃機として、空からの支援をこなしている彼だが……その反面もとより持っていた風系の魔法は、移動能力の向上やグレネードの投下位置修正ぐらいにしか使って居なかった。

 という訳で、彼は現状風魔法について特訓中である。

 高速で渦を巻く風を纏い空を飛び……上手く風を翼で掴めずきりもみしながら壁に激突したりしているのは愛嬌だろうか。


「まだまだと言った処か? うーむ……やはりモンスターの成長は壁にぶつかると難しいものが有る」


 そもそも、人の様に魔力を操作する必要が無いから当然な話。

 モンスターで魔力を自在に操る存在など、リッチの様な魔法を使う技術に長けたモノ達ぐらいだろう……そういった意味では、双葉は一番可能性を秘めている訳だが。




 と、この様にイオ達が訓練をしていると、突如として黒い球体といった牢獄に罅が入り始めた。


「お? そろそろ出て来るようだぞ」

「ミャン!?」

「キュィ」

「罅が入ってるの! まるで卵が割れる時みたいなの!!」


 そして、その黒い牢獄は双葉の言った通りで、雛が内側から出て来る時の様な感じで罅が入り……孵化する時とは違う反応を見せる。


 全体に罅が入った後、甲高い音でパリーーーーーーーーーン! と、ガラスでも叩き割ったかのような音が響き渡った。

 その後は、まるで其処には黒い牢獄など存在しなかったかの様に、結弥達が捕らわれる前と同じように戦闘態勢で立っていた。


「……ふむ、成功したようで何より」


 そんな結弥達の姿を見て、リッチは楽しそうにカッカッカと骨を鳴らしていた。




――メイン――


 暗い空間に魔法を次々と撃ち込む。その行動で空間に罅が入り、所々光の様なモノが見え始めるが……まだまだこの空間から出ることが出来そうにない。


「うーん……じわじわと修復されているみたいにも見えるし。此処はマナブレードと時空間魔法を合わせてみるか!」

『ワフ?』


 ウォルが精霊魔法でなくて良いのか? と、問いかけて来るが、此処は空間を破壊すると言う事で……良くある必殺技を再現するべきだろう。

 何せそれは空間に対して強い攻撃力を持つわけだし。


「ちょっと試したい物が有るからね。ウォルも上手く魔力の出力調整を頼んだよ」

『ガゥ!』


 良いよ相棒! みたいな感じでウォルが鳴いた。本来精霊と言うのは、精霊魔法以外だと非常に協力的でなくなる……と言ったのはウォルだ。まぁ、その理由って、精霊魔法以外の魔法だと使う魔力がウォルの餌にならないからだけどね。

 ただ、ウォル自身は俺がやる事が楽しいらしく、色々試す時は精霊魔法でなくても協力してくれる。彼はどうやら楽しい事も大好きなようだ。


 という訳で、ウォルの協力を得てマナブレードに時空間魔法の属性を送り込みつつ、ブレードを形成して行く。

 サイズは……うん、やっぱり大剣サイズだろうな!


「やっぱこれはロマンっしょ! って事で! 〝次元断!〟」


 意味は無いけど軽く前へ飛び込みながらマナブレードで唐竹割。まぁ〝ジャンプ切り〟という奴だ。ただし、時空間魔法を付与している上に、振りながらその刀身をニュッと伸ばしながらだけど。

 ただ、思った以上にこの技は凶悪だったらしい。今まで罅しか入って居なかった空間に、ズバッ! と、一筋の線が入った。それも、実に巨大な断裂と言った感じのものが。

 そして、そこから差し込む光の量は今までの比でなく実に眩しい。……うえに、その断裂を中心に一気に周囲の罅の量も増えていく。


「これなら外に出られそうだな……もう一閃いっとくか?」

『ワゥ? クゥーン!』


 もう大丈夫でしょ? それより魔力を温存するべきだ! と、ウォルが告げる。うん、確かにここから出たらリッチと再戦の可能性も有るか。

 それなら少し様子を見るとしよう。駄目そうならもう一撃入れれば良いしな。


 と、そんな事を思っていたんだけど、この暗かった空間に出来た罅は既に修復される様子もない。そして、何と言うかもう出られそうな雰囲気すらある。


 という訳で、断裂に接近して外に出ようとしてみる……が。


「眩しすぎるし、なんか見えないバリアみたいなのがあるぞ」


 うーん。このまま待つのも何だし、ただのパンチでも一発入れてみるか? と言う安易な気持ちでただのストレートをバリアらしきものに軽く打ち込んでみた。

 その瞬間……甲高い音でパリーーーーーーーーーン! と、ガラスでも叩き割ったかのような音が響き渡る。


「うぉ!? 耳が耳が痛えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」


 ほぼゼロ距離まで接近していた為に、その割れる音を直撃してしまった。……魔力は消費しなかったが、聴覚にダメージが……こんな事なら、一度離れてから銃弾でも撃ち込んでおくんだったよ。




 少し時間が経って視覚と聴覚が回復し始めた。

 どうやら視覚の方は、真っ暗だった空間にずっといたと言うのに断裂を作り眩しい光を目にした為か、思った以上にそちらにもダメージが入っていたらしい。

 真っ白! と言った感じで、視覚が完全に消えていた状態ではあったけど、周囲に何か居ると言うのは魔力で探知出来ていたから問題無いけどな。……まぁ、その魔力を詳しく探ってみれば、イオ達やリッチだったので無事出られたこと自体は直ぐに解かった。


「……は……で…………ダメー……う。少し……い……するだろう」


 何やらリッチの話声が聞こえて来たけど、ある程度しか聞き取れなかった。が、敵対している様では無いので問題は無いな。

 そして、手に温かい感覚。あ、どうやらイオが手にすり寄ってきたようだ。なんか顔をスリスリとこすりつけている感じだな。

 そして、背中にはズシっと……こっちは双葉だろう。どうやら随分と心配を掛けたようだ。これは後で美味しいモノで買収しておくか。


「悪かったな。だが、問題無いぞ」


 と、声を掛けながらそれぞれ撫でておく。パタコンパタコンと尻尾も触れる感じがするけど……ウォルなんでお前も撫でて欲しそうにしているんだ? お前はずっと傍にいただろうが。


「カッカッカ! 童も随分と好かれている。うむ、絆と言うのは大切だ、それは思わぬ力を発揮する事もある。今回の事で解ったであろう?」


 どうやら俺の聴覚が完全回復するのを待っていてくれていたらしい。そんな待っていたリッチは実に楽しそうに笑いながら俺達の様子を見ていた。


「全く……結弥君なんでそんなダメージ受けてたの?」

「あーゼロ距離で空間を破壊する音を耳にしたんだよ」

「あのとんでもなく高い音を? よく鼓膜が無事だったね……」


 確かに! なんで破れなかったんだろう? と思うぐらいの音だったからなぁ。


「それは童が精霊憑依状態で強化されて居ったからだろうな。ふむ……ふむふむ、見た感じ完璧では無いようだが、それでも八割から九割程は正しく使えておる」


 ありゃ? これでも十全には使えていないのか……何が問題なんだろうか。


「お嬢ちゃん、童を見て見よ……こう、はみ出しておるモノがあるだろう?」

「あ……豆柴ちゃんの尻尾が出てるよ!? 何と言うか、うん、見た目は……なんで女の子じゃないのって言いたくなるかな」


 え? と、兎に角確認してみるかと、後ろを見て見ると……うん、精霊体の透明掛かった尻尾が生えているな。……えええええええええええええ! 確かにこれは美咲さんでやるべきだった見た目だ! なんで俺なの!?


「マスターももふもふなの! でも、尻尾掴めないの……」

「ミャン!」


 何やらイオ達も尻尾に戯れようとしてる。

 それにしても、この尻尾は俺の意思では動かない。と言うか、先ほどからパタパタと振っていた尻尾……ウォルが振っていたはずなんだけど、周囲からみたら……うわぁ。これは厳しい見た目だな。穴が張ったら入りたいよ。


「先ずはその尻尾も内側に入れる事が出来れば、十全に使いこなせていると言う事になる……が、見た目に花が有るから良いかもしれんな」


 ……何を馬鹿な事を! まぁ、精霊憑依を解けばウォルが離れるから問題は無いけど。


「それと、嬢ちゃんの方は……ふむ、魔装との技は身に着けたようだが、魔剣の方はまだまだか。二人とも惜しいと言った感じではあるが、其処まで出来ればその内全てを使いこなせるようになるだろう」


 中々に厳しい判断だ。

 リッチにとっては及第点と言った処なのかもしれない。とは言え、今回のやり方で全てを身に着けるとも思っていなかったのだろう、彼は十分に満足している様にも見える。


「さて、では最後の仕上げと行くか……二人揃って吾輩に向かってくると良い」


 あぁ、やっぱりそうなるよね。うん、外に出たからはい終了とはいかないか。解ってたよ、だってこのリッチの性格を考えればこうなるのは当然だ。リッチなんて魔法のマッドサイエンティストみたいな存在なのに、その実脳筋だからな、こう、強い相手と戦うのも楽しいのだろう。

 とは言え、俺達の強化を手伝ってくれたのは事実な訳だし、此処は彼の楽しみに付き合うのも必要だろう。


「ま、ここはリッチの言う通り身に着けた力をぶつけるとしようか」

「そうだね……それに私達もどれだけ差が縮まったか気になるし!」


 暗い空間に閉じ込められる前は手も足も出なかったからな……うん、此処はどれだけ戦えるか気にはなるか。せめて、一太刀は入れたい処だな。

 と言う事で、此処からはリッチとの戦闘か。また、イオ達には結界の中にいて貰うとしよう。










 因みに、リッチとの戦闘はボコボコにされました。あるぇ? 随分とパワーアップしたはずなんだけどなぁ。

 とは言え、攻勢に出てリッチに数発入れる事も出来たので、随分と強くはなったと思う。……次に合う時はせめてボコボコにされないようにしなくては!

ブクマ・評価・感想・誤字報告ありがとうございます!!


と言う事で全員の強化を下と言いながら、フルボッコです。えぇ、まだまだ色々と異世界で勇者パーティーに与していた賢者? 大魔導士? のなれ果てたリッチにはまだまだ勝てませんでしたとさ。

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新しい話をアップしていきますよヾ(*´∀`*)ノ:孤島で錬金術師~修学旅行中に孤島に飛ばされたから、錬金術師になって生活環境を整えていく~
― 新着の感想 ―
[一言] リッチさん、体に筋肉が無いのに脳味噌は筋肉ですか。・・・あっ、脳味噌も無かったか。
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