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三百八十五話

――外にいるイオ達――


「ふむ、お主等はあの童達が気になっているようだな」

「ミャウ!!」

「マスター達はどうなってるの! 双葉達が助けに行くの!! 後、童って年齢じゃないの!!」


 バンバン! と張られた結界を叩くイオと双葉。風は全く何もしていないように見えるが、リッチの動向を窺っていたりする。

 そして、双葉が言う様に結弥達は童と言う年齢では無い。……だが、それは人としての感覚であり、人を止めてリッチとなった彼は年齢で人を見るのではなく、その者の資質や技術などで判断するようになっている。その為に、まだまだ未熟な結弥達は童と言う訳だ。


「吠えるな吠えるな、あの童達は無事だ」

「だから子供じゃないの!」

「能力的にまだまだ未熟。ならば……童であろう?」

「むむむぅぅぅぅぅ! で、無事ってどういう事なの!?」

「何、あの空間はそれぞれの共を深く知る為に作り出した空間。今頃は……ゆっくりと語り合っているだろうよ」


 リッチのやった行動といえば、先ずは徹底的に相手の攻撃を捌く事で結弥達との力の差を見せ焦らせる。次に、圧倒的な質と数を見せつけ心を折る。そして、お互いのパートナーとも言える〝豆柴〟や〝アラクネと魔剣〟達とだけ語り合える空間を作り出した。

 結弥には中途半端な〝精霊憑依〟を正しく使う為に、美咲には〝魔装〟のある使い方を学ばせる為に、それぞれその時間が必要だと判断したからだ。


「時間は掛かるだろうが、命の危機は無い空間だ。その内ひょっこりと出て来るだろう……と、それとは別にお主等が強くなる道しるべを示してやるとするか。童達だけが強くなってしまってはお主達が付いていけなくなってしまうからな」

「ミャン!?」

「それはダメなの! 可及的速やかに解決するべき案件なの!!」

「待っている時間も勿体ないし丁度良い暇つぶしにもなろう。それでは講義を始めるとするか……」


 こうして、結弥達が出て来るまでの間、リッチによるイオ達へのモンスターが強くなる為の授業が開始されたのだが……その効果が出るのは少し先である。




――メイン――


 一体どれだけの時間が経っただろうか。豆柴とはもうお互い知らない事は無いのでは? と思うぐらい色々と語ったと思う。

 いや……豆柴という呼び方ももう変更するべきだろうな。


「そろそろ出れそうじゃないか?」

「ワフ!」


 そう答えながら、頭の上で尻尾をパタンコパタンコと動かす。うん、背中に尻尾があたって少しこそばゆい。恐らくこいつも外に出るのが楽しみなのだろう。と言うか、正しく使う精霊魔法が楽しみと言った方が良いだろうか。


「それじゃ行きますか。ウォル〝精霊憑依〟だ!」

「グルゥ!!」


 ほんの少し前に、豆柴の名前である〝ウォル〟を知ることが出来た。なので、その名前を呼んでから精霊憑依を発動。

 すると、今まで周囲に見えていた精霊体と言えるウォルの体が、今は自分の内側にあるように感じる。


「って、これ……うん中途半端って言う理由が解るわ」


 そして、その言葉通りと言うべきか、使える力に随分と違いがある。……何と言うか、今までの精霊憑依の倍以上はスペックが上がっているな。

 ただ、それはアイドリング状態と言うか、何もしていない状態でと言う前提だ。これが戦闘行動をしているとなればまた変わって来るだろう。


「とは言え、今までは魔力を籠めた手で触れた事で魔法を発動させてたけど……これ、どうやるんだ?」

『ワフ!』

「あ、そうなの? やりたいと思った事を魔力を籠めて発動させれば良いのか」


 という訳で、さっそくウォルの爪撃魔法を発動してみる。

 今までの癖で魔力を籠めた手をウォルの爪に触れる動作をしてしまったのはご愛敬。

 ただ、その瞬間に何もない空間から巨大な狼の腕が顕現。そのままその腕が振り下ろされ……三本の爪撃が前方へと飛んで行く。


 そして、何処からともなくピシリと音が鳴った。


「これはまた……威力が上がってるし、しかもなんかガラスに罅が入るような音が聞こえなかったか?」

『ワゥ』


 聞こえた! と脳内に響くウォルの鳴き声。と言う事は、どうやら幻聴では無いようだな。

 もしかしたら、この空間にダメージが入ったのかもしれない。なら、これ以上の火力か継続的なダメージを与えれば、空間を破壊する事も可能では無いだろうか。


「こりゃ、外に出られる希望が見えて来たな」

『ガゥ!!』


 やる気に満ち溢れる吠えも頂いた事だし、さくっと脱出と行きますかね。




――美咲――


「……で、結弥君に対してお父さんが毎回暴走してたんだよ。必死なのとてんぱって居たのは解るんだけど……あれは恥ずかしかったなぁ」

『お主も苦労しておったか……と言うよりも、その父上殿はやりすぎでは?』

「一応、お礼として色々贈り物とかしてたみたいなんだけどね。って、何でこんな話!?」

『いや、お主の学生時代の話から飛んだのだが……その頃の二人の様子を聞いたのは確かに妾だったがな』

「そうだけど……あ、でもなんだか色々話したらすっきりしたと言うか、ライン? が繋がった気がするよ」

「おぅおぅ! 俺にもはっきりわかるぜ! これは元マスターが使っていたアレが出来そうだナ!」

「……やってみるべき」


 なんか赤裸々に全てを話し聞いたおかげか、今まで以上に魔力的な繋がりがはっきりと感じる。

 そのうえで、何やら魔剣達が何か出来そうだと訴えて来た。


「ん? 一体どんな事? こう、魔剣の奥義的な感じ?」

「奥義と言ったら奥義になるか? こう、意思を持つ魔剣等にのみ許された戦闘方法だしな」

「……ただ、その為にはマスターの器が我等を受け入れられる体制が出来てないと行けない」

『ま、その点は大丈夫だろうな。今回この空間で語らいながらも、マスターである美咲の魔力は極端に増えておる……どうやらこの空間は修行にもなる代物だったようだな』


 そういえば、不思議な圧力が有ったかな? 微妙に感じる程度だったから無視してたけど……どうやら、それに自然と対抗した為に知らない間にレベルアップをしていたのかも。

 まぁ、それなら何ら悪い事は無い。むしろ嬉しい誤算だ。


「と言う事は、今の私には皆を受け入れられる態勢が整っているって事?」

「……だと思う。が、念には念を入れて一体ずつやるべき」

「其れなら姫からだな! 最悪、俺達は後でも大丈夫だ」

『ふむ……それなら妾からいくか。妾の名は……はて? なんだったか。蜘蛛姫としか呼ばれておらんかった気がする』

「「……あ、そういえば元マスターも〝姫〟としか呼んでなかったな」」


 ちょっと!? 蜘蛛姫が正式名称なの! いや、それはそれで良いかもしれないけど。


『まぁ、折角魔装となった身だ。ここはマスターである美咲がどーんと決めてくれ』

「えぇぇぇぇ!? 責任重大だよ!! 〝姫〟じゃダメなの?」

『それは妾が落ち着かぬ。マスターであるお主が居ると言うのに〝姫〟と呼ばれるなど……』

「前のマスターは男だったからなぁ……姫呼びでも何の違和感もなかったんだぜ」


 なんで名付け親に……蜘蛛だよ蜘蛛! 蜘蛛と言えば……なんだろう? 某ラノベからとる? いやいや、駄目でしょう! あ、炎の魔剣を持っていた訳だし〝かぼたん〟と言うのも……あ、ダメですか。

 うーん、悩ましいよう。蜘蛛姫、蜘蛛姫……姫はダメと言われたし、あ、アラクネモードはちょっと機械的っポイし、タチコ……げふんげふん。


「あー……うん。魔導鎧〝ラーナ〟でどう?」

「ふむ。ラーナか? 理由は?」

「色々捻っただけです。はい」


 とあるゲームに出て来るキャラの名前を省略しましたなんて言えない。ただ、あの作品には蜘蛛でるしね? てか、なんならさっき言った中にあるし。


「という訳でアナタはラーナです! 決定! で、如何すれば良いの?」

『何の問題も無いぞ? ほれ、良く感じて見よ。繋がりが更に強化されたぞ』


 あ、本当だ。なんかこう縄だった繋がりが神社にある注連縄になった位に大きくなった気がする。とは言え、これ……余裕ってあまりない気がするよ。


「ふむ……これはまだ俺達魔剣側は名前を教えない方が良さそうだぜ」

「……仕方が無い。ここは脱出第一。先ずはやり方を説明する」


 其処から魔剣による新しい力の使い方の説明。

 どうやら、この強くなった繋がりを利用して行う技術らしい。むしろ、今までの様な縄程度では下手をすれば繋がりが切れてしまう可能性も有ったとか……恐ろしい話だね。


「えっと、ラーナと魔力を同調・共鳴させるんだね」

『……難しいがやってみるしかないか』


 深く集中して行く。そして、それを阻むモノはこの空間には無い。だって光も音も自分達のモノ以外は無いからね。

 太くなった繋がりを使いアラクネ先生ことラーナの魔石に魔力で触れる。うん、なんとも荒々しく力強い魔力だろう。これと魔力の波長を合わせろと? かなり難しいんですけど!?

 とは言え、やらない訳にはいかない。


(ラーナ聞こえる? 今、貴女の魔力にパスをつないで語り掛けています)

『……何を馬鹿な事をしておるのだ?』

(いや……お約束かと)


 と、ちょっとだけ遊び心交えつつも、ラーナの魔力が混ざらないようにしつつ魔力を共振。


「……って、これ、かなりきついんですけどぉ!?」

「マスター頑張れ! 厳しいのは最初だけだ! 安定してしまえば問題ない」

「……これが、魔装との〝ユニゾン〟と言う奥義みたいなもの。成功すれば……その力は何倍にも膨れ上がる」


 それは解るけど、キーーーーーーーーン! って、キーーーーーーーーーーン! って耳鳴りがするし! 関節という間接がぎちぎちするよ!? 大丈夫なのこれ!


『むむ……妾の足もかなり震えて……お? 安定し始めたか』

「あ……耳鳴りがヒューーーンって音に変わって来た」

「とは言え、安心したら駄目だぜ? この状態を維持出来るのは数分程度だ。時間が過ぎれば共鳴は解けちまう」


 なるほど……制限時間ありの必殺技と言う訳だ。

 なら、今の内にこの空間を脱出する為の行動をしないとね!


「じゃ、どれだけ威力があるか行き成り最大火力で行ってみよう!」

『特弓だな。良し任されよ』


 何も無い空間に向かって弓を展開して射出。

 ドン! と、今まで聞いた事が無い爆音を立てながら矢が放たれ……何処かに当たったのかビシッ! と言う張った氷に罅が入るような音が響いた。


「お、これは行けそうだ? よーし、どんどんやっちゃおー!」

「はぁ、俺もユニゾンしてみたかったんだぜ」

「……仕方ない。姫が最初なのは当然」


 何やら魔剣が残念がっている。うん、ごめんね? 私の器がまだまだ足らないみたいだから。と言うか、コレ、彼等の元マスターさんって二つ同時に共鳴をしてたんだよね? ……正直、化け物と言っても良いんじゃないかな。私、ラーナとだけでも相当辛いんだけど。

ブクマ・評価・感想・誤字報告ありがとうございます!!


と言う事で、全てを語り合いお互いを理解しつつ、実は高度な魔法によりじわじわと強化訓練されていました。

こう、レベルが上がれば上がった分だけ負荷が掛かると言った感じ。ただ、体感は何か軽く押されてる? ぐらいにしか感じない程度をキープされている状態と言った感じでしょうか。

これにより、随分と二人のレベルはアップした事になります……さて、何処かで他の探索者達をレベルアップするイベントを用意しないとなぁ(==

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