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三百八十二話

 目の前に居る骸骨を警戒しながらも会話を試みてみる。何せ、高難易度ダンジョンだと言うのに会話が出来る存在だ。そりゃ、会話するしかないでしょう!


「よくこのダンジョンに居て正気を保っていられる……何か方法でも?」

「ふむ、そのような事が気になるのか。何、ダンジョンを吾輩が乗っ取っただけに過ぎぬよ」


 何と! ダンジョンを乗っ取るなんて事が出来るのか。

 そんな事が可能なら……ファンタジー鉱石取り放題のダンジョンを永久に確保出来るのでは無いだろうか?


「何を考えておるか何となく解るが、其れが出来るのは吾輩レベルのモンスターぐらいと言うモノだ。そもそも、人間はダンジョンのボスになる事は出来ぬから諦めよ」


 あ、そうだった。ただ、うちにはイオ達も居る訳だけど……彼等のレベルで出来るかと考えてみる。うん、無理だろうなぁ。目の前にいる骸骨と明かに格と言うかレベルと言うか、存在そのものが違いすぎる。


「で、そのダンジョンを乗っ取った骸骨さんは此処で何をしているの?」

「カカカ、骸骨さんか! 面白い呼ばれ方をしたものだ。うむ、何をしているか……か。元々吾輩は、対魔王の為に力をつけていた。しかし、どういう訳か空間が歪み居た場所が変質してしまってな。周囲を探ってみれば全く解らぬ場所な上に奴の気配も無い」


 やれやれ、と言った感じで手を頭に当てながら首を横に振る骸骨。

 と言うか、美咲さん……骸骨さんって、相手が怒らなかったから良いモノの、少しびっくりしたぞ。


「言ってしまえば何もすることが無くなったのだが、目の前に現れたダンジョンが殊の外面白そうだった故、ダンジョンに飛び込んでみたのだよ。そしたら、出るわ出るわ吾輩の知らぬ情報の塊! その成果は、童達がこの場に来るまでに体感したと思うが……どうやら童達が使って居る武器を見るに、この情報にある武器は過去の産物のようだ」


 火縄銃に炮烙玉の事かな。


「とは言え、魔力を使わずに長距離を攻撃する武器など弓以外に知らぬ。色々と試したくなった……と言うのが答えだろうな」

「……それじゃぁ骸骨さんは「まて」に……って何?」


 美咲さんが何かを言おうとすると、骸骨が手を前に出して静止を促した。何か気になる事でも有ったのだろうか。


「〝骸骨さん〟は面白い呼び方だが、その呼ばれ方だと吾輩がスケルトンと何ら変わらん。吾輩の事は〝リッチ〟と呼ぶがいい」

「名前が〝リッチ〟という訳では無いですよね?」

「種族名だな。だが、名など遥か昔に捨てておる」


 あ、やっぱり〝リッチ〟なんだ。しかし、〝リッチ〟と言えば、マッドというか不老不死に狂ったと言うか、そんな思考をしたとんでもない実力を持った魔法使いがなるイメージなんだけど、そこら辺はどうなんだろうか。

 それにしても、名前を捨てたかぁ……何か理由でもあるのかな。


「ふむ、名前を捨てた理由が解らないと言った顔だな。何、吾輩は以前魔王に殺されかけたのだよ。その際、仲間を全て失ってな。復讐の為に力を求めていたら……いつの間にかに〝リッチ〟になっておった。その時に吾輩は名前を捨てたのだよ……覚悟の為にな。とは言え、世界を渡ってしまったからなぁ」


 何やら遠い目をするリッチ。いや、眼球なんて無いから、目があった場所が明後日の方向に向いているだけなんだけどね。


「さて、少し話を戻そうか……と言っても何をしているかだったな。言うなれば実験の日々だろうか」

「実験ですか……あ、因みにダンジョンを乗っ取ったと言いましたが、元あったダンジョンの意思的な物はどうなったんです?」

「ソレは逃げ出したぞ」

『ふむ、だからか。このダンジョンには違う場所へと繋がるパスがある……それはその逃げ出したモノが作り出したゲートだな?』

「正解だ。と、面白い物を持っているな少し調べてみたいが……まぁ、其れは止めておくとしよう。で、その逃げ出された際に出来たゲートを吾輩は逆に利用しているのだよ。本来であれば閉じるのだが……無理やりこじ開けたままにして、あちらから魔力を奪っているのだ」


 ……このリッチさん、めっちゃチートやないかい。乗っ取って、自分にとって心地よい空間にして、更に他のダンジョンから魔力を奪うとか。


「おっと、そういえば先ほどそちらのお嬢ちゃんが何か言おうとして居たはずだが何だったかね?」

「あ、はい! えっと、リッチさんは人と敵対する事は無いって事ですか?」

「ふむ……それはYESでありNoだ。吾輩も元は人だが今は魔物である。そして、人と魔物は基本相容れぬ存在であろう? それがアンデッドなら尚更だ。とは言え、こうして自我もある故な、そちらから襲ってこない限り基本的には何もするつもりは無いのだよ」


 この場で色々と試すのも楽しいしなと、笑いながら語るリッチ。ただ、カタカタカチカチと骨を鳴らしながら笑うのは結構な恐怖だな。存在そのものが強烈なので更にそういった印象を受けるのだけど。


「そういえば、アレだけの甲冑や火縄銃ってどうやって手に入れたんです?」

「……童、此処がダンジョンと言う事忘れてないか? 吾輩程の能力と知識、それとダンジョンの力があればアレぐらい創造するのは容易い事だ」


 あ、そういえばそうだった。思わず此方の世界で使われていた武器だっただけに、ダンジョンで生成するのは無理だと思ってしまった。


「さて、聞きたい事は他に無いか? 無ければ……少し吾輩の趣味に付き合って貰おう」

「えっと、今のところは無いかと。で、一体何を?」

「童達の持っている力だな。お主等……その力、使いこなせておらぬだろう?」


 指を指されながら言われ、ドキっとなった。

 リッチが言っている力。俺の場合だと精霊魔法で美咲さんの場合だとアラクネ先生達の事だろう。

 そして、その力は確かに全く使いこなせていない。何せ、俺達は彼等の名前を知らないのだから。


「思い当たる節が有るようで何より。では……少し手解きをしてやろう。全力で掛かって来るがいい」


 クイクイっと手招きをするリッチ。うん、めっちゃ挑発されている。

 とは言え、格上の相手が色々と教えてくれると言っているのだから、ありがたくその話に乗るとしようか。


 チラリと美咲さんを見ると、彼女も此方を見ているので軽く頷いてから戦闘準備。後、全力でと言われているので最初から飛ばすとしよう。


「来い! 〝豆柴!〟から〝精霊憑依!〟」

「ワフ!」

「行くよ! 〝モードアラクネ!〟」

『……ま、楽しみではあるな』


 今出せる全力で! と言う事で、精霊憑依モードな訳だけど……。


「ふむ、やはり中途半端。それでは〝憑依〟と言うより〝纏い〟だな」


 と、ダメ押しをされてしまった。とは言え、これでもかなり強いんだけどな。そう思いながら、魔力の籠った手で狼の爪に触れる。


「行け! 風爪!」


 アラクネ戦で使った三つの風で出来た爪が飛んで行く攻撃。


「ふむ、そよ風だな」


 アラクネも魔剣で何とか迎撃出来たような攻撃だったんだけど、このリッチは〝そよ風〟等と言いながら軽く腕を振り、三つの斬撃をいとも簡単に消してしまった。


「うぇ!? でも良いや、ランスチャージ!!」


 本来であれば、風の爪でよろけさせて其処に美咲さんのランスチャージだったんだけど、簡単に消された事で予定が狂いってしまった。とは言え、走り出していた美咲さんは止まることが出来ない。


「突進? それは早歩きの間違いでは?」


 そう言いつつ、ガシッとランスを折れそうな骨の手で掴んだことにより、美咲さんの突進は停止。そして、リッチがそのままクルリと腕を反した事により、美咲さんがポーンと軽く飛んで行く。……おいおい、アラクネモード時の美咲さんって重量半端では無いんだけど。

 ただ、軽く飛ばしただけなので、美咲さんも空中でクルリと回転し体勢を整えてから畳の上へ着地。うん、完全に手加減されているというか遊ばれていると言うか……。


「お主等それでは宝の持ち腐れだぞ? もっと繋がりを感じよ、もっと深層に潜って見せよ……さすれば、それらの真髄が見えてくるはずだ」


 深く……ね。繋がりはしっかりと感じているつもりだけどまだまだ足りないって事か。

 とは言え……じっと豆柴を見て見る。繋がり……繋がり……うーん、フリスピーで遊べば良いだろうか? それとも骨を用意するか? ん? 豆柴が首を横に振っている。と言う事はそういう事じゃないか。

 いや、まぁ骨やらなんやらは冗談だぞ? 真面目に考えるとして豆柴の力は風だ。と言う事はもっと風を感じろと言う事だろうか。語り掛けを聞けばいいのか? 何時だかにネットで話題になった饅頭が出て来そうだ。


「……童、先ほどから脱線してないか?」


 あ、バレた。

 とは言え、繋がり何て言われても簡単に理解出来る訳が無い。何せ、突如として豆柴から〝仮契約〟の印を押された訳だからな。

 そして、その後は何だろう? アラクネ戦で〝憑依〟を使って体がボロボロになったり、豆柴を呼んでイオ達と一緒に遊びまわったり、戦闘で〝憑依〟以外の魔法で戦ったりしたぐらいだ。名前は聞いても教えてくれないしな。


「それに、そもそも〝精霊〟と言う存在自体が良く解らないんだよな」

「……よく考えてみれば、童は我等の知る世界の住人では無かったか」


 そう! それって結構重要な問題だよね? こっちの世界って精霊信仰はとうに廃れている上に、様々な現象は化学で説明が出来る。いうなら、科学信仰だ。

 そもそも魔力なんて存在しなかったしな。

 言ってしまえば、俺も美咲さんも魔力に対して無知すぎるんだ。正直、何となく使えるから使って居るみたいなところもあるし。


「ふむ……仕方が無い。しっかり手加減するが故、戦いの中でそれらのモノをしっかりと感じよ!」


 ……あかん。このリッチさん、学者肌かと思ったら割と脳筋だった。

 美咲さんも少し青い顔をしながらリッチを見ている。……兎に角早い事〝精霊〟や〝魔装備〟について理解しないと、ぼこぼこにされる未来が見える。


 そんな訳で豆柴さん。アナタの事をしっかりと教えてくださいな! でないと、リッチの強引な教育か、精霊憑依によるデメリットで体がボロボロになってしまいますから!

 ……てか、これ、終わった後動けなくなること間違いなしだよな。

ブクマ・評価・感想・誤字報告ありがとうございます!!


ほい! と言う事で、リッチさんは主人公達のパワーアップイベントでした。


因みに、このリッチさん。元の世界では〝勇者パーティーの賢者〟と言う裏設定。しかし、全滅してしまい自分だけ生き残ったと言う悲劇まで。と、まぁ、その時の傷と恨みが原因でリッチになってしまう訳ですが。

その後色々と彷徨う訳ですが、世界の異常に巻き込まれて地球に飛ばされると言う何とも言えない結末。


 因みに、彼が所属して居た勇者パーティーが全滅したために、集団失踪事件が発生すると言う……これまた何とも言えない因果関係が有るのですが、それをリッチが主人公達に語る事は有りません。

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新しい話をアップしていきますよヾ(*´∀`*)ノ:孤島で錬金術師~修学旅行中に孤島に飛ばされたから、錬金術師になって生活環境を整えていく~
― 新着の感想 ―
[一言] 流石はアンデッドの最上級、つおい! 何だか、研究所の連中と話が合いそうな気配が・・・しかし、決して会わせてはいけないような気もする。結託されたら、どんなトンでも兵器が生まれる事やら!
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