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三百三十四話

━━ 祖父宅 ━━


「お兄ちゃん達大丈夫かな?」

「結構な間戻って来てないね。まぁ、兄さん達の事だから大丈夫だとは思うけど」


 居間ではゆりとゆいの二人が、結弥達が戻ってこない事について、「大丈夫だよね」と言い聞かせあう様に会話をしている。

 不安にならない訳が無い。なんだかんだと言っても結弥達はちょくちょくと村に戻って来ていたのだ。

 この間の海に向かった時ですら、実際に村から出ていた日数を考えれば一月有ったか無かったで……此処まで戻らないのは初めてである。


「うーん……美咲お姉ちゃんと双葉ちゃんも居るから会話には困らないと思うけど……」

「兄さんにはイオちゃん達が付いてるからねぇ……お蔭で、私達が皆に会えなくて寂しいけどね」


 まったくだと頷くゆい。まるで兄の心配よりモンスターズ達! と言った感じの言葉を口にしているが、それは別に本気で言っている訳でなく、ただの強がりだ。

 とは言え、二人は知りはしない。今、結弥達は森の中で彷徨っている事に。いや、知らないからこそ大丈夫だ! と言えるのだろうが。


「早く帰ってこないかなぁ……お兄ちゃんならきっと凄いお土産を持ってきてくれるはずだよ!」

「そうだね。どんなものだと思う? こう、ドラゴンのお肉とか仙人が食べる桃とか?」

「伝説の武器とかはどうかな? あ……あ……飴のむらさきいろ!」

「何その甘そうな何か……それを言うなら天叢雲剣でしょ。ただ、日本の神話的な武器は無いんじゃないかなぁ……」


 ゆりは知らない。神話の神をベースにされたコピーが作られている事に。そして、そんな柱達が必死に異空間の壁を修復している事を。

 もし、彼らの存在を知ることが出来れば、伝説の武器も有るのでは? と思いを馳せているだろう。

 そもそも、〝神樹〟と呼んでいるが、言うなればその樹は物語に出て来る「世界樹」でもある。……神話は既に実現しているのだが……まぁ、大抵の人がその事に目をそらしていると言うか、気が付いていないのが現状だ。


「ま、兄さん達は何処かで元気にやってるよ! その内ひょっこりと顔を出すんじゃないかな」

「そうだと良いね!」


 二人は結論として、「皆が無事でありますように」と祈る事にした。それしか現状出来ないからどうしようもないのだが。


「あ、そうだ! 皆が帰って来た時に美味しいモノが食べれるように料理の訓練をしよう! ダンジョン産の面白果物とか、まだまだ研究の余地があるし!」

「そうだね! よーし、この間はチョコで叱られたけど今度は上手くやるぞー!」


 実に微笑ましい光景である。

 だが、二人は忘れている。貴重な物資を計算して使おうと言っているのはそれらを持ってくる兄では無く父や母。

 当然、彼女たちの運命は……。しっかりと理由を伝えて、少しでも雷が落ちないことを祈るばかりである。




━━ メイン ━━


 ん? なんだか雷が何処かで落ちる気配がしたけど気のせいか。

 それもそうだ。今、この森では雨すら降っていないと言うか雲一つない天気のはず。……木々の隙間から太陽光が見えるからな。と言うよりも、此処はダンジョンの中だったな。


「さて、ぐるぐる森の中を彷徨っている気がするけど、目印が見つからないと言う事は新しい道を進んでいるはずだよな」

「そうだね。木が動いたり目印の傷が治って無ければだけど……」


 知らない間にぐるりと一周して元の位置に戻ってました! と言うのが直ぐに解かるよう、木に様々な傷をつけて目印にしている。まぁ、こういった時の基本行為だよな。

 印も、どちらに向かったか直ぐ解るようにしつつ、幾つ目かの印と言うのも解るように記号と数字と矢印を刻んでいる。別に暗号化する必要も無い。何せ、これを見るの俺達だけだろうし。


 ただ、逆に此処まで前に書いた印が見えないとなると逆に不安になる……美咲さんの言う通りでは? と言う事がな。

 とは言え、イオに双葉に風の協力もあるのだ……流石にそれは無いと思いたい。


「っと! たまに来る虫が鬱陶しいな!」

「きゃ! 虫が! 虫汁が!」

「あぁ! 悪い。倒し飛ばす方向ミスった!」


 迷った事以外にも面倒なのがこの虫。

 今やった感じに、突然飛んで現れる虫たちに対処するのは、ほとんど反射神経テストみたいな感じだ。

 そして、当然だけどその倒した虫は勢いよく飛んできている訳だから、其れを攻撃すると……潰れたり、バラバラになったり、汁を撒き散らししながらそこらじゅうに散らばる。

 その為に……体のあちこちに奴等の破片やら汁が……。


「うぅ……髪の毛の先が悲劇的な事にぃ……」


 ……そう。髪の毛に飛び散った時など、もう最悪だろう。虫の匂いが染みつかない事を祈るばかりである。


「ま、ただ救いなのは、こいつらに毒性の物が無いって事か」


 それらを所有していたとすれば、悲劇だなどと言える状況ではないからな。

 それこそ、毒で体調はやられ最悪は死ぬ事だってあるし、溶解性の液体であれば装備は溶かされ、液が掛かった髪もまた……下手をすればテルテル坊主だろう。


「そうだね……でも、なんかこうぞわぞわするよぉ……」


 まぁ、其処は我慢してもらうしかないな。何せ此処は虫だらけだし。


 そんな感じで、虫を排除し森を彷徨いながら前へと恐らく進んでいる。

 しかし……見えてくるのは木・木・木・虫・虫・虫と代り映えのしない景色……之では精神的に滅入って来るものがある。


「何か地形の変化でも有ればまだ違うんだけどな」

「木以外の植物も似たり寄ったりの物ばっかりだよね……一応、村に研究所に持って行って無いと思うモノは回収したけど、同じものばっかりが生えてるよ」


 如何言えば良いんだろう。こう、木も草も花もまるでコピーをしてから、適当に置きましたと言った感じで全く一緒の見た目をしているんだよな。

 本当、変化が無くて全く楽しくない。果実すらないからなぁ……まぁ、有った処でこんなコピーだらけの木だ食べられるかどうか不安過ぎる。


「あ、果実も無いなってので思い出した。このまま迷ってたら食料も不味いよな」

「えっと、一応モンスター肉とかも有るから当分は大丈夫だと思うけど」

「それって……虫肉?」

「違うよ!? この虫たちが出て来る前に倒したオークとかだよ!?」


 だよね。うん、美咲さんが虫食をしない事は解ってたけど、倒したモンスターは虫が多いからついという奴だ。

 ただ、最悪……ここのモンスターである虫を食べる事になる可能性も有る訳で……うん、毒性が無いことが解ってるから食べれるだろうとは思うけど、最後の手段だよな。


「うぅ……出来れば虫は……食べたくないなぁ」

「ほえ? 虫のモンスターはえいようがたっぷりだよ?」


 嫌がる美咲さんに双葉が驚愕の言葉を口にした。いや……よく考えたら双葉は元々植物型のモンスターだ。それなら昆虫ぐらい栄養分として取り込む事は有るだろう。

 ……だけどまぁ、あまり知りたくなかった事実! だよな。美咲さんも思わず目を丸くして、抱きかかえている双葉を見つめている。

 ただ、上空で聞こえていたのか、風もまた双葉に共感するかのように「ピュィ!」と一鳴きしている。うん、君は鳥がベースだしな。


 と、そんなある意味当たり前である意味驚愕する事実を耳にした訳だが、それで迷子や食糧問題が解決する訳が無い。

 なので、今聞いた事は一度棚の上に上げ、どんどん前へと進んで行く。




 そして、進んだ先でとんでもないモノを見つけてしまった。


「まじかよ……これは無いわ」

「えぇ……これって、やっぱそういう事だよね」


 俺達の目の前に現れたモノ。

 それは、少し前にアタックは辞めようと出たはずの屋敷。そう、あの高難易度ダンジョンだよな? と予測した場所だ。


 と言う事は何だ? 俺達はダンジョンから出たつもりだったけど、実際はダンジョンから出ておらず、ずーっとこの屋敷があるダンジョンでウロウロしていた訳か。

 とは言え、確かにダンジョンから出たはずだ……俺達はダンジョン入り口のゲートを通った記憶が間違いなくある。


「まったく、これは一体どういう事だろうな」


 本当に、こんな頭の痛い内容は勘弁して欲しいモノだけど……これってこの屋敷を攻略しないと出れないのかな? イオ達ですらブルブルと震える場所なんだけど。

ブクマ・評価・感想・誤字報告ありがとうございます!!


最初からダンジョンに囚われていたんだよ!! って感じですかね。

まぁ、屋敷が有った場所から出たけど、出ていなかった……一体何が! と、ポルナレフ状態という奴です。

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新しい話をアップしていきますよヾ(*´∀`*)ノ:孤島で錬金術師~修学旅行中に孤島に飛ばされたから、錬金術師になって生活環境を整えていく~
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[一言] 上→左→下→左と進んだら出られないかなぁ。 もし出られたら、黄金の三角の欠片を8枚集める羽目になりそうだけど。
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