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三百二十四話

 戦車での帰郷は思った以上に楽な道のりだった。

 特に、道と言う道が整備されていないので、揺れが大変で酔ったりしないか、桜井さんがゴロゴロと転がってしまうのではないか? などと心配したのだが、車内は微妙に揺れる事は有れど大惨事になる事が無かった。

 物凄く驚いたんだけどね。どうやらモンスター素材を利用して揺れや衝撃を上手く吸収しているらしい。……構造を見た訳じゃないので何とも言えないが。


 そして、道中モンスターに襲われる状況も有ったのだが……備え付けの魔法銃があるからね。距離が遠い奴はライフルタイプで、接近を許してしまった者はショットガンタイプ。

 そして、魔法銃だから弾薬もいらない。ただ、チャージ式なので撃つまで少し時間が必要と言うだけ。


 そんな、完璧とも言える戦車に乗っての移動だ。危険など有るはずもない。……まぁ、研究所の戦車開発メンバーはまだまだ満足していないそうだけど。




 そして、辿り着いた村で一番最初に行ったのは、桜井さんを研究所へと連れて行く事。

 本来ならば帰村の挨拶及び報告として協会に行くべきなんだろうけど、少しでも早く原因を調べて欲しかったからな。


「婆様、桜井さんの状況は解りそう?」

「待つんじゃよ……今来たばかりじゃろ、そうそう直ぐに解かるものでもない」


 確かに。精密な検査を行って結果が出るのは時間が掛かるものだ。うん、少し焦りすぎてるな。


「えっと、どれぐらい時間が掛かったりしますか?」

「お嬢ちゃんや、それは調べて見んと解らんのう。念のためにもう一度聞くが、こやつは腕と足がモンスターと融合されており、その手足を切り飛ばして上級ポーションを使ったのじゃったな?」

「うん、その通りだよ。まぁ、その後は見ての通りで一向に目を覚まさないんだ」

「ふぅむ……これは随分と時間が必要になりそうな案件じゃな。解り次第此方から人を寄越す故、お主等はやる事を済ませておけ」


 まぁ、そうなるか。

 後はもう、研究所の人体やらモンスターを調査しているメンバーに任せるしかない。……出来る事が少ないと言うのは実にもどかしいけどな。


 という訳で、先ず出来る事と言えば協会へと報告をする事なので、研究所を出て協会へと向かうのだけど……まぁ、研究所の人達が俺達を見て捕まえに来ない訳が無い。

 ただ、こちらも先に済ませる事が有るとお断りをしながら颯爽と研究所を脱出。うん、脱出だよ。何せ後方から叫びながら手を伸ばしてくるんだもん。あれではまるで……ゾンビ映画だよ。


 そして、協会では……まぁ、今まで報告して来たことと全く同じ内容を品川さんに行うだけだ。

 品川さんも品川さんで、前に来た報告書を読んでいたのだろう。なので品川さんとのやり取りは、報告書と現場に居た俺達の口から出る内容を照らし合わせていると言った感じで進んだ。


「それにしても、藤野さんの叔父さんだっけ? 見つかって良かったんだけど」


 そういう品川さんの顔には少し暗い。まぁ、品川さんも桜井さんの事は知っているからな。崩壊前の話だけど、受付嬢と探索者として顔を何度も合わせていたから。


「それと、お父さんの事は……残念だったわね」

「いえ、あの時にはそうなるモノだと覚悟はしてましたから……」


 そして、当然美咲さんのお父さんとも品川さんは会話をした事が有る。そりゃ、親子と叔父さん揃ってダンジョンに潜ってたからな。

 それに、殿を自分から進んでいった人達だ。そりゃ生きてるなんて考えないだろう。……とは言え、実際にその死を見ていないのだから実感が有る訳が無い。

 ただ、今回桜井さんに会ったことで皆が理解してしまったと言う話。


 そんな訳で、協会の探索者データには……藤野さんのお父さんはMIAからKIAへと変更され、桜井さんは帰還者と変更する、その書類作成に品川さんが暗い表情で手を動かしている。


 そんな品川さんが、急に話の内容を変更して来た。


「っと、そうだ二人ともこの後はどうするの?」

「少し村に残るつもりです。今のところ仕事も任されてませんので」

「私も少しゆっくりしたいです」

「そう……それなら、休暇として処理しておくわね。後、何か頼み事が出来たらその時は頼んでも?」

「勿論ですよ」


 何時までも重い空気で沈んでいる訳にもいかないのでと、今後の方針を決める話をしてから協会を退出する事にした。

 どのみち、今は疲労で何かやれる気力が無いしな。休みを貰えるのはありがたい。色々と事件が多かったからなぁ……。

 うん、多すぎた事件を思えば当分は何もない事を祈りたいけど……あの迷宮教とやらが在る以上何かしら問題がおきそうダなと思わなくもない。




 協会から家に戻るまでの間、美咲さんは口を開くことが無かった。何やら考えているみたいなんだけど、まぁ、何か有れば話しかけて来るだろうと放置。

 先ほど品川さんとの会話が会話だからな。踏み込んでいいのか解らん。


 そんな感じで歩いている内に家へと到着した。さて、誰か家に居たりするのかな?


「ただいまー。誰かいる?」

「お、お、お兄ちゃんだーーー!!」


 どたどたと駆けてくるのは……ゆいしかいない。彼女は定番の頭からのロケットダイブを行い……やられた俺はしっかりとキャッチとはいず……腹に頭が刺さって来た。


「ぐっ……スピードを途中で上げて来たか」

「えへへ! 途中で加速してみました!」


 元気よく返事をするゆいだが……それは他人にはやるなよ? 内臓を潰しながら相手を吹き飛ばしかけないぞ。


「え? お兄ちゃん以外にやる相手なんていないよ!」

「おい! 俺なら良いのかよ!」


 思わず突っ込みを入れてしまうが、まぁ、これも一種家族のふれあいだと思って甘んじて受け入れよう。


「あれ? 美咲お姉ちゃん……しょんぼりしてる?」

「え? あ、うん。大丈夫だよ!」

「本当? うーん……そうだ! 元気が出る様に美味しいモノ用意してくるね!!」


 ……嵐の様に突撃してきて、嵐の様に去って行ったな。


「あー……何かあれば聞くからな?」

「うん。大丈夫大丈夫! 少し色々と思い出してただけだから!」


 大丈夫を連呼する人の大丈夫程信用出来ない物は無い。とは言え、原因は解っている訳で、言うなら美咲さんはまだ自分の中で消化が出来ていないと言う事だろう。

 案外、家でぼーっとしながらゆいや風達と関わらせておけば大丈夫な気もするけどな。


 ま、とりあえず無事帰ってくることが出来た訳だ。今日から少しまったりと過ごすかな。




━━ゆい━━


「さぁ、双葉ちゃん! 美味しい美味しいおやつを作るよ!」

「おー!」


 さっき、お兄ちゃんと美咲おねえちゃんが突然戻って来た。

 お兄ちゃんはいつも通りだったんだけど、なんだか美咲お姉ちゃんの元気が無いようにみえたから、美味しいモノを作ってあげよう! と思ったんだけど……。


「ねぇ、双葉ちゃんは美味しいおやつって何だと思う?」

「んー……チョコやくだもの!」


 計画も無しに思い付きで行動したから、作るモノが思いつかなかった。なので双葉ちゃんに美味しいと思うモノを聞いてみると……チョコレートに果物さんかぁ……。


 その二つで直ぐに思いつくのが、果物をチョコでコーティングする物。チョコバナナみたいなやつ! 美味しいよね!

 でも、チョコレートはまだまだ貴重な物。家にはお兄ちゃんが採って来てくれたカカオさんが有るから、チョコの材料は無い訳では無い。

 それに、チョコレートとして作り上げてある物だってストックされている。……ただ、貴重な物なんだ。そうそう食べていいモノじゃない。お母さん達も「計画的に食べる様に!」って口を梅干しにして言ってる。すっぱすぎるよ。


「でも、今回は美咲お姉ちゃんを元気づけるためだもんね! 大丈夫だよね! ……うん!」


 という訳で、後の事は一切考える事を放棄して、チョコレートを冷蔵庫から取り出します! えっと……果物さん果物さん……どれが良いかなー?


「双葉ちゃんはどの果物さんが良いと思う? りんごさんかな? 梨さんかな?」

「マンゴー!」


 マンゴーさんかぁ。確かドライマンゴーさんが有ったはず……って、よく考えたらこれって全部お兄ちゃん達が、ダンジョンから手に入れて来た物なんだよね……お兄ちゃん達凄いなぁ。おかげで美味しく食べさせて貰ってます!


「と言う事で~溶けたチョコとマンゴーさんを……合体だ!」

「がったいだー!」


 そんな訳で作ったマンゴーチョコレート。お味は如何に……!




 結果は言うまでも無く、お兄ちゃんと美咲お姉ちゃん、ゆいと双葉ちゃんと風ちゃんで食べ過ぎたために、お母さんに一時間ほど正座の刑を受けてしまいました。

 うーん……元気づけるって難しい。でも、美味しそうに食べてたから、良かったのかな?

ブクマ・評価・感想・誤字報告ありがとうございます!!


ドライフルーツとチョコの組み合わせは好き嫌いが別れると思います。が、美味しいと思います!

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新しい話をアップしていきますよヾ(*´∀`*)ノ:孤島で錬金術師~修学旅行中に孤島に飛ばされたから、錬金術師になって生活環境を整えていく~
― 新着の感想 ―
[一言] 藤野父生きて登場してほしかった…。゜(゜´ω`゜)゜。
[気になる点] いくらなんでも中学生なのにゆいが精神的に幼すぎる
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