二話
コツコツコツコツ半月ほどかけて、一階層の情報を埋める。マップも変化が無いか等確かめる為に三周ほど廻った。ダンジョンだからと言う事で、道が変わったりするかどうか謎だけど一週間や半月では変わらないみたい。次チェックするのは半月後、月が替わる時かな。
モンスターは犬モドキのみの様で、基本一匹がうろうろしてる。稀に二匹同時があるけれど、あっても何十回に一回有るかどうかだ。
壁に関しては貴重な物も出る事は無い様で、どれだけ壊して回収しても石ころにしかならないみたい。まぁ一階層だから願望外れか。その内貴重な金属とかでる階層とかあるかも? ただ他の人達は一切そういう事をしてないみたい。僕みたいに隠れてコソコソ調査してる人が居ないとは限らないけど。
ダンジョンと言えば、宝箱と隠し部屋! という事で探してみたけど無いようだ? まぁコレも一階層だからかもって事で、やり方を変えなければその内お目にかかれるかも? 怖いのはトラップやモンスターハウスだ。今から対策を考えておこう。
一階層の情報とマップはまだ公にする心算は無い。コレは切り札の一つであり、ゆりの為に作ってるから。まぁ何時かは公開する心算はあるけど……他の人が同じ事してたら、先に公開されるだろうな。
協会の受付で買取を、半月もすれば顔も覚えられる。まぁ三日に二日の割合で来てたら当然か。
「今日もやっぱり来てましたね。また一階層の魔石を沢山もってきたりしてます?」
「今日もお世話になります。まぁ一階層の魔石ですが」
「そろそろ値段が安めで安定してくると思いますが、二階層には?」
「命大事にで、ダンジョンに慣れる為に一階層をじっくり攻略してましたから。でもソロソロ二階層にも足を運んでみようとは思ってます」
「命あっての事ですからね。慎重なのは大切です。まぁ理解できず先走って怪我をしてる方も居るのが……っと、査定でましたね。一階層の魔石は本日一個三百円、持ち込みが二十三個で欠けたもの等も無し、六千九百円ですね」
「まだまだ良いお小遣いになりますね。その内一階層の魔石は二桁とかになるんじゃないかなぁ」
「値段を下げてる要因の一人と言う事をお忘れなく。本日もお疲れ様でした」
実際はもう十個ほどあるけど、弄ってみたい衝動がある。魔石もこっそり貯蓄して研究だ。
ダンジョンの階層には階層毎にボスがいるらしい? らしいと言うのも、民間に公開されてから二階層までしか攻略されてない。自衛隊や警察からのリークの一つにボスが居るので注意という、実際一階層にボスルームがあり、其処でボスと戦った人達が情報を上げているから正しいのだろう。
そういう訳で、明日はボスアタックだ。情報は出てる、大きめのワンちゃんと通常サイズの取り巻きが二匹。準備を確りしておこう。
帰宅して家族に空気扱いされつつ部屋に入る。ゆいが待っているみたい。
「お兄ちゃんおかえり、今日のおみやげさんはー?」
「ただいまっと、ほらコンビニティラミスとパックの林檎ジュースだ」
「やったーーーーーー、てぃらみすさんだー!」
「その言い方だと魔法みたいだな。ティラミスサンダー! うん強そう」
「魔法だよ! だってこんなに美味しいもん!」
今日も癒される。殺伐とした戦闘、空気な家族、ノー天気なクラスメイト達。ヒーラーの存在は大切だ! 其の為に貢ぐ異論は許さない! お金を払って教会で復活と何も違いがない!
「糖分を補給したら宿題だぞー?」
「やめて! てぃらみすさんの前でソレは猛毒だよ!」
馬鹿げた会話を楽しみつつ、日課のゆいの勉強監修とメモのノート起こし。一日終了するなぁとしみじみ。
ゆいが部屋に戻ってから、明日の準備をする。何時もの装備の点検と明日持っていくものの選別。
犬もどきに調味料が効いたけど、果たしてボスにも通じるのだろうか? 如何するべきか……あれとこれをこうして……カプセル? ペットボトル? 紙? うーん用意で寝不足にならないようにしないと。
今日は土曜日、朝からダンジョンに潜るよ! 準備もしたしチェックもしたし。
「おにーさんカードのチェックおねがいしまーす!」
「ん? 今日はもう潜るのか? っと土曜日だったか気をつけていけよ?」
「はい! 命大事にいってきます!」
命のやり取りをするダンジョンに潜るのに命大事にってのもアレだが、気をつけて潜るって意味合いでは正しい。大いに気をつけよう。
人の気配がしない所に足を進める。ちょっとした確認をする為に、前爆竹を束ねた物をぶち当てた時ダメージが無く音でビックリさせただけに終わった。果たしてダメージが無いだけなのか? って事で秘密道具! テストをしてみる……成功! これなら使えると思う。
ボスの部屋に向かって進む。道中はどうも人が行った後なのかモンスターに出会う事が無い。楽でいいけど、少しは戦闘しないとウォーミングアップできないよ! ボス部屋ではガチ戦闘になりやすい、まぁ広くて死角が無い部屋での戦闘だからね。体をほぐしつつ、戦闘のための意識を深くしないとだ。其の為には一度戦っておきたい。
運よく二回ほど戦闘が出来た、しかも一度は一対二だ。今日もスコップは良く研げている! 自分の足に刺さらないようにしないと。
ボス部屋の前に到着。少し広めの部屋に扉がある……うん、他の人達が整列してる礼儀正しいな? 最後尾に並ばねば!
「おや? ソロかい?」
「はい、ソロで探索してます」
前に並んでる人に尋ねられた! どうしようこういう状況下での話に慣れてない!
「大丈夫? 三匹出るけど」
「一応準備等は済ませてきてますので、後はぶっつけ本番ですかね?」
「そうか、俺等は二人で潜ってるから、ソロでのアドバイスはできんが……」
「お気持ちだけでも、ありがとうございます」
「おう、アレだボスの咆哮だけは気をつけろよ? そいつで怯んだ奴も居るらしいからな」
「ボスの咆哮はお約束ってやつですかね」
「そうそう、物語によくある奴だな」
そんな風にお話しつつ列が進む。この人達は良い人達のようだ、怪我せずクリアしてほしい! 願掛けしておこう……妹神ゆいさま彼等の安全を……って違った。爺様の名n……でもない。普通に神様仏様に!
そんなこんなで、僕の番だ。一人で入っていくのを見て後ろの人達が多少ざわめく。僕のように願掛けをしてくれれば良いと思うよ!
ボス部屋に入ると、中は雪げし……でなく、さっきまでよりも少し明るくかなり広い部屋。大きめの犬と取り巻き二匹だ、情報に誤差は無い。あの距離なら一足飛びと言う事は無いだろう。
じりじりと距離を縮める。片手でスコップを盾の様にしながら、もう片手を後ろに。
グルルと唸る犬を視界から外さないようにゆっくりゆっくりと前進かつ微妙に左にずれていく。なるべく正面は外す。尚且つ三匹とも見失わないように。
ある程度距離が縮まった時、モンスター達の行動が変わる。体を低くして飛び掛る姿勢だ。今!
後ろに回した手からハンドボール大の玉を投げつける! とっておきだぞ!
投げたのは、爆弾もどき。モンスター達の前で爆発する! 爆弾はダメージがなく驚かせるだけだから意味が殆ど無いだろ? って話になりそうだけど、事前に試したから使い方が違う。
火薬による爆破。コレにはダメージが無く音がすごい。だけど実はノックバック効果があるみたい。ならばと、中身を工夫してノックバックする物を入れる……内容は激辛パウダー!
爆破して一気にばら撒かれたソレは、爆破音と共にモンスター達を襲う! 音で怯んだ所に激辛パウダーが喉と鼻に勢いよくアタック。犬系がベースのモンスターだたまらないだろう。
「風ッ!」
素早く取り巻き一匹に接近して、息を吐きつつ首目掛けてスコップを突き刺す。何時ものなれた作業だ。一匹!
其のまま速度を落とさずにもう一匹の取り巻きの顔面を蹴り上げる! 浮き上がる犬モンスターの顔面に、上段に構えたスコップを振り下ろす! 二匹め!
残ったボス犬は未だに復活してない。きゃんきゃんと前脚で鼻を押さえ舌を出しながらヒーってしてる、目は深く瞑り涙がいっぱいだ。チャンス! 片手をスコップの半ばに、もう片手を取っ手の部分を握る。その状態で上にスコップを持ち上げてから……ボスに向かってダッシュ! 勢いを乗せて全身から飛び込みつつ……ボスの首に上からスコップを突き下ろし! ガン! という音と共にスコップが半ばまで突き刺さる……未だ生きてる!
暴れるボス犬を上から押さえつけ……スコップの足で踏む部分を思いっきり踏みつける! 土掘りの要領だ!
ゴロっという音と共に物体がコロコロっと転がっていく。終わったな……変わらず終わると慣れない命を奪う行為。何時もの様に奪った命に手を合わせてから、良い戦いでしたと声をかけ、ドロップ品を回収してメモを録る。
少し感傷にふけりたいけど、ボス部屋が空くのを待ってる人も居るからイソイソと二階層へ。
二階層も周りの風景は変わらないようだ。ただ降りてきた階段の横に扉がある。恐らくコレが地上とのショートカット階段なのだろう。ルームキーを持ってないと開けれないらしい、よくできてるな。因みにボスを倒した時に鍵はゲット済み。
軽く周囲をチェックしたいけど今日は戻ろう、ボス戦は思った以上に疲労した。
扉の鍵を開け、階段を上っていく。階段を上がった先の扉を開くと……あら不思議! 入り口受付にいたおにーさんがいるではないか!
「おや? 其処から出てきたって事は二階層に進んだのかい?」
「はい、ボス倒せました」
「そうか、おめでとう! ソロで倒したの君が最初じゃないかな? 大体PTを組んで入って行く人しか居ないからな……君何時も命大事って言ってるのに、ソロで潜るとか命知らずと言っても良いよね?」
「あはは……やらなきゃいけない事があるので、どうしてもPTが組めないんですよね」
「そうか……そのやる事が終わったら誰かと組む事も考えた方が良い。生存率的にもね」
「はい、ご忠告感謝します」
おにーさんとの会話を一言二言で終え。協会の買取へ……受付の綺麗なお姉さんは健在だ!
「買取おねがいします!」
「はーい、今日も魔石たっぷり?」
「いえいえ、今日はちょっと違います、こいつで」
「あら……一階層のボスの魔石じゃない。とうとうクリアしたのね、おめでとう」
「ありがとうございます!」
「それにしてもソロでしょ? 危険よ?」
「あはは……入り口受付のお兄さんにも言われました、まぁ目的があるので終わるまでは」
「そう……まぁ個人のやり方ってのもあるからね、十分に気をつけるのよ? っと査定出たわよ、通常の魔石が五個にボスの魔石が一個ね。通常の方は値段が変わらず一つ三百円、ボスの方はまだ出回っても無いから一個一万七千円。合計一万八千五百円ね」
「うわ……ボスそんなに高いんですか」
「仕方ないわよ、ボスを倒せる人は未だ其処まで居る訳じゃないし、倒すのに時間もかかるから。並ばないといけないし回数こなそうにも、入り口まで戻らないといけないから、一PTでも一日一回な所が多いのよ」
「なるほど……それでは余り手に入らないですね」
「そうそう、だから行けそうな時はボスの魔石拾ってきてね?」
「了解しました」
良い金額になりすぎた……調子に乗らないようにしなきゃ。ボス討伐の方法確立もしてないし、今回が上手く行き過ぎたのかもしれない。検証は必須だから何度か廻らないとな!
後、ボスドロップだけど査定に出してないのがある。なんだろうか? 何かの本みたいだけど……魔道書とかかな!? だといいな! この本も確認事項だろう。
今日もお土産を買っていこう、ちょっと贅沢に……番号アイス屋のカップアイスにしよう、チョコミントとチョコクッキー辺りが無難だな!
帰宅して、ゆいとアイスを堪能する。もちろん食べ終わったら宿題とノート起こしだ。一日の終了の儀式とも言える。
「お兄ちゃん、アイスさんがいなくなっちゃった!」
「それはね? ゆいちゃんのお腹の中に引越ししたんだよ」
「お引越ししちゃったの!? お引越ししちゃったら、私もう食べれないよ!」
「また今度買ってきて上げるから。今日はもうだめですー」
「うー……またお土産おねがいしまーす」
バカわいい。こんなマッタリな時間を過ごしつつ、もう一人の妹のためにノートを纏める。
ただ今は知らない未来なんて読めないから。やってる事が無駄だったなんて、今年の夏休みが歴史的に残る〝惨劇の夏休み〟なんて言われるとは。




