二百七十三話
ワイバーンに勝利した翌日は休日とした。むしろ、お祭り騒ぎが次の日まで続いたと言うのが正解なのだが。
ただ、その状態でダンジョンに潜れるはずも無く。なし崩しではあるが、体調を整える為にも休むしかなかった。
うん、探索者処か普通の人達まで騒いでたものだから、街を上げての休日みたいになってしまったよ。
と、その様なまったりした日を過ごしたのが昨日の事。そして、今日はやっとダンジョン探索の再開という事になる。
探索する場所は二十三層。目の前に見える光景は並木道といった雰囲気。
「まぁ、この中央を進めって事なんだろうけどさ」
「何かあります! って感じだよねぇ……」
馬鹿正直に進めば、間違いなく木から何か攻撃を受けそうだ。
ただ、他に道が有るかどうかと言うと……。
「周辺はと言うと、何としてでも並木道を通らせたいんだろうなぁ……」
思わずため息が出る。何せ、道以外の場所を通ろうと思ったところで人が通れる場所が無いんだ。
片方は崖で、もう片方は激流の川。うん、どう頑張っても進めるような雰囲気ではない。
まぁ、大人しく真ん中を歩いて行けって事なんだろう。
「ま、全方位に注意しながら進みますか」
「そうだね……編隊は?」
「イオ達が先頭。美咲さんと風が中央。俺が後方かな? まぁ、何時ものだね」
「了解。それじゃ、飛びすぎると木の影で確認出来なくなっちゃうから注意しながら行こうね」
「ピュィ!」
そんな訳で、全方位に注意しながら並木道を進んで行く。うん、例によって例の如く……魔力探査による周囲のモンスター反応はオールレッドだ。まったく……こんな防がれ方が有るとはなぁ。
並木道を進んで行く。最初の内は特に変化も無く前進出来たのだが、ある程度進むと周囲の木が騒ぎ始めた。
「そろそろって所かね?」
「トレントかな? それともドライアドかな」
「どうだろうな。もしかしたら双葉と同類が出てくるかもな」
「ん!?」
「その場合だと、双葉は戦い難いだろうから、最悪防御だけしてな」
「んー!」
ふむ。気を使って防御主体でも良いと提案したら、双葉は私もやる! と、やる気を見せた。
……同類が出るかもと言った時は、吃驚した声を出したっていうのにな。
まぁ、こちらをしっかりと仲間として認識しているって事だろうね。うん、いい子やな。
そんな会話をしていると、周囲の木々は更に激しく動き始め……何かを投げて来た。
「ガード! 正し生身で受けるな!」
植物が投げて来たものだ。毒ないし浸食系の何か……なんて可能性もある。いや、そもそもこのダンジョンの場合だと、実が爆発するようなものも存在するんだ。下手に受けるべきではない。
そして、そんなガードをと判断し、盾やマナシールドで防いだ物……。
「……イガグリ? その割にはかなり重かったんだけど」
「……栗だな。よく見る処理する前の奴だけど」
「ミャミャ!」「んー!」
棘の皮……イガに包まれた栗。秋の味覚の代名詞の一つである栗。だが、飛んで来たそれは異常に重く、まるで鉄球でも高速でぶつけられた衝撃だった。片手で持てそうなサイズだと言うのに。
そして、そんなイガグリをイオと双葉が興味を持ったのか、飛んで来たそのイガグリを爪や蔦で突いたり叩いたりしている。
「……爆発する可能性もあるんだから、下手に触るなよ?」
「みゃ!」
「大丈夫って……いやいや、二十一層は爆発物だったでしょうが」
「んー!!」
「問題無いって……あー、双葉は何となく解るのか?」
「え? 双葉ちゃん解るの!?」
どうやら、双葉がこのイガグリが爆発する事が無いと解ったらしい。……同じ植物系だからなのかな? まぁ、爆発しないと言うのであれば、他に注意する事と言えば毒とかもあるんだけど。
「状態異常とか植え付けられて乗っ取られるとか、そんなのは無いって事で良いのか?」
「双葉ちゃんを見る限り大丈夫そうだよね」
それならば、このイガグリは回収して持ち帰っておくべきだろう。何でこんなに重く感じたのか……ただの速度で重くなっただけなら良かったのだけどな。まぁ、モンスターの一部だ、そんなことは無い。
「まずは回収っと……重いな!?」
と、思わず持った瞬間に大声を出してしまうほどに、イガグリは重たかった。
「そんなに重いんだ……飛んできたやつに当たったら大変だよね」
「棘はあるし重いしで大怪我必須だろうなぁ」
刺さりながら質量攻撃を受ける。うん、どこぞの鉄製金平糖だと言いたい。
とはいえ、これ問題なのはこの並木道で飛んで来たという事だろう。良く周囲を見渡すと、ざわざわと騒いでいる木々。
「……いやーな予感がするんだけどさ。これ四方と頭上からイガグリが大量に飛んでくるんじゃないか?」
「あはは……そうなるんじゃないかなぁ。って! 早速一個飛んで来たぁ!」
美咲さんが叫びながらもマナシールドでイガグリを防いだ。……ただ、少し美咲さんは勢いに押されて下がってしまったようだ。
「あー……美咲さんだと勢いに負けちゃうのか。これ全方位から集中狙いされたら不味いな」
「上! 上からも来るよ!!」
「んー!!」
叫ぶ美咲さん。その叫んだ方を見て見ると、大量のイガグリが今にも降ってきそうな状況。と言うか、数個その重さで先に落ちてきそうなんだが。
ただ、双葉が其れを見た瞬間、いつぞやの蔦で編んだ網を用意し、トンボをタモで取るかのように振り回しだした。
「さて、双葉に負けてはいられないよな! 焼き栗になっちまえ!! 散弾・炎!!」
防戦をするよりも攻勢に出る。という事で、植物が相手なんだから火だろう! 別にこの場所であれば山火事みたいな大惨事になることは無い。激流とはいえ川もあるしな。
とは言え、イガグリを狙って攻撃をしていても仕方が無い。そもそも、本体はイガグリを飛ばす木だ。
なので、周囲の木に向かい、俺は銃撃を美咲さんは爆裂矢と丸鋸魔法。イオと双葉はイガグリの対処をしてもらいつつ、風には美咲さんのフォロー。
飛んでくるイガグリを散弾魔法と双葉のタモで落とし、それでも防げなかった物はマナシールドで防ぎつつ、次々とイガグリを飛ばしてくる木を粉砕していく。
何と言うか、凄いのは双葉だろうか。
何故あの蔦で作った網は破れないのか? と言う疑問もあるが、網によって集めたイガグリが逆に武器になって……木を一撃で粉砕して行く。……重くないのか? 大量にイガグリを集めているのに。
そして、そんな状態の双葉を背に乗せながら駆けるイオもまた、とんでもないと言っても良い。
……正直この二体が居れば十分じゃないか? なんて思わなくもないが、それは宜しくないからな。うん、頑張らないと。
イオと双葉に負けない様にと、美咲さんと声を掛け合って並木道を制覇。
うん、恐らく総合討伐数……イオと双葉の組み合わせに勝てなかったと思うけど、まぁそれは置いておく。
実は、その二体……いや、風も合わせて三体は今、ものすごく夢中にもぐもぐしている。
何せ……この並木道でのドロップ品。「焼き栗剥いておきました」って書かれてるいる袋に入ってるんだよ! どこで知ったんだよ! この元ネタを!
てか、ポップコーンやひまわりの種と言い……ここのダンジョンはどうなってるんだ? 管理者は大丈夫なのだろうか……色々な意味で。
ただ、その栗事態は実に美味しそう。
「ん? 美味ひいぉ?」
……って、美咲さん貴方も既に食べていたんですか。まぁ、あれだけイオ達が美味しそうに食べているのを見たらなぁ。食べたくなるのも仕方ないか。
とは言え、此処はまだダンジョンの中だ。
「ほら! 皆まだダンジョンの中だから気を抜くなって。食べるのはダンジョンから出てからだ」
そう告げる俺に……全員の視線が向く。うん、食べたいのは解るけど、そんな絶望したような顔をしなくても良いじゃないか。ダンジョンから出たら食べても良いって言ってるんだから。
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栗が無性に食べたい……そんな気分になってます(まて




