二百六十九話
改善点を話し合っては修正されていく避難訓練。当然だが昼夜関係なく突発的に行われるので、そろそろ住民の疲労も溜まってきている。
ただ、空からモンスターが襲ってくる。その脅威を常に話しているので不満に関しては多少問題がない状態だ。
だが、世の中どんな時でも反骨精神が有ると言うか、命令と思うと逆らいたくなるのか解らないが、避難訓練に参加しない人物が出てきたりもする。
これには、色々と協会や街の役場の人達が頭を抱えていたりする。まぁ、一定数居るってのが問題だからな。
「ワイバーンに食われてしまえばいいのに」
なんて、割と過激な事を言う探索者も居たりするが、言葉を口にしないだけで同じような事を思ってる人も多いんじゃないかな?
俺としては、其処まではと思うけど、多少痛い目は見た方が良いと思う。そんな彼らの所為で負傷者が出る可能性だってある訳だしな。
そして、物語としては盛り上がらないだろうけど、日々その様に避難訓練を真面目にやっていた為か、訓練中にて、空にモンスターが飛んでいる姿を確認したと報告が入った。
「タイミングとしては最高なんだろうけどな」
「このままシェルターに避難で良いからね。ただ、例のあの人達はどうするんだろうね」
「それに関しては、協会や役場から伝令が来てるな。ある程度避難が終え次第、彼らを無理やりに避難させる方針だそうだ」
俺と美咲さんが話している最中に、横から訓練の参加拒否をしている人達の対処に着いて、伝令として動いている影山さんのパーティーメンバーの一人が声を掛けて来た。
「三雲さんでしたか。それで、彼らの居場所とかは?」
「それに関しては、既に把握しているから大丈夫といった感じだな。それでだ、白河君達にはすぐに防衛ラインについて欲しいそうだよ」
「解りました。っと、避難誘導は任せても良いって事ですね」
「そっちは見てわかる様に、訓練の延長でそのままといった具合だからな」
ま、今更俺達が行っても逆に迷惑だろうな。まぁ、一番問題だった参加拒否者の扱いも決まってるみたいだし、安心? とはちと違うか、後ろは任せて街の壁から出て迎え撃つ準備でもしますかね。
「それじゃ、美咲さん聞いてたと思うけど俺達は移動するよ。装備を整えたら、イオ達を連れて防壁前で」
「了解!」
それぞれの準備をする為に各自で行動する。
自室で防具を装着し、必要になるだろう武器を手に移動開始。
今回持っていく武器は、と言うよりもまぁ、何時もと変わらないセットと言っても良いかもしれない。
ただ、少し遠距離重視ってだけだろうか。
足のホルスターにハンドガン二丁。背中にアンチモンスターライフル。腰にぶら下げるのは魔法銃と通常のライフル……うん、完全に遠距離装備の詰め合わせ状態。
後、すぐ取り出しやすい場所にマナブレードもセットしてある。
ただ、探索に行くわけじゃないので、バックパックは無しだ。持っていくのは、弾薬を入れてある腰に装着出来る小型の弾薬鞄ぐらい。
盾はマナシールドが有るので、荷物になるカイトシールドは置いていく。剣鉈もスコップも同様だ。
「さて、こんなもんか? ちょっと銃を持ちすぎ? いや、弾幕を張るなら必要だよな」
銃ならば、一時的に他者に渡して撃って貰っても良い。まぁ、ほとんどの人が持っていると思うけど。
兎に角、準備が出来たので移動開始だ。
イオと双葉を連れて防壁の門に行くと、タイミングが良かったのか他の人達も来ていた。まぁ、まだ美咲さんは来てないみたいだけど。
「田中さんも此方でしたか」
「そうだな。白河も、今回はよろしく頼む」
まず居たのはいつものメンバーである田中さん。彼に挨拶をしてから周囲をちらりと見渡す。
其処には彼のパーティーメンバー以外に、もう一パーティー居たんだけど、こちらは余り関わりが少ない人達。
まぁ、ただ魔石ダンジョンは攻略済みで、今回の件が無くても人が有る程度育ったら、この街の拠点に移籍する予定だった人達だ。
「今回は宜しくお願いします。白河結弥です」
「おぉぉぉ! よろー!」
おおふ……何ともフレンドリーに接してくる人だな。よろー! と言いつつ肩をバンバンと叩いてくるとは。
「そうそう、俺っちは水野 明。みずっちとかあきっちとでも呼んでな!」
キャラが濃い! うん、ただ、悪い人では無さそうだ。と言うか、魔石ダンジョンをクリアしている訳だし、防衛線に出る時点で腕は間違いないレベルだろう。
実に軽い感じだけどな。
「で、水野さんのパーティーはどのような構成で? 田中さん側は知ってますけど」
一応、メンバー構成を聞いておかないとな。戦闘中にお互いが邪魔にならない立ち回りをする為にも、必要な情報だ。
「むぅ……水野さんとか固いよ! っと、うちらはスタンダートかな? 盾が二枚に遊撃が一と後衛が
二の編成っさ」
「なるほど。確かにスタンダートですね。となると、田中さん達は確か盾三の斥候一で後衛二でしたよね。似た構成ですね」
「うむ。その通りだ。まぁ、我々の人数が一人多いだけだな」
「うちのメンバーは、モンスターが三の遊撃一と後衛一なので……田中さんどうしますか?」
此処では出張らずに、一番年長で複数の部隊を同時に動かしたことが有るだろう田中さんに任せる。
いやぁ……俺と美咲さんって基本パーティープレイすらまともに出来る訳がないからな。部隊を指示するなんてもっての他だ。
「盾五人か……それなら、交代でやっていった方が良いだろうな。常に前線で防御するのも疲労がたまるだろう。まずは、盾二人を前に出し、他二人には後衛のガード。残り一名は待機……と言うより保険だな」
「それなら、うちの盾役がまず前にでるっさ! 俺盾使いだし、一番活躍できそうじゃん?」
おおう……このキャラで水野さんは盾使いだったのか。言動は軽いのに、行動は重いとか……ギャップが激しいな。
「そうか、なら任せた。後、後衛部隊はガードがやりやすい様にある程度纏まった方が良いだろうが、それだと一気に狙われた時がやばいからな。二つに分けよう」
盾使いに合わせて二部隊に分けるのかな。確か、後衛が五人いる状態のハズだ。となると、三と二に分けるのか。
「斥候と言うか遊撃はどうします? 俺も含めて三名なんですけど」
「伏兵にするか、それともかき乱してもらうか。少し悩んでいる状態だな……何せ相手は空から来るわけだしな」
確かに、空からの攻撃ともなれば、地上戦と違ってかき乱そうとしても空に上がられたら終わりだし、隠れたとしても発見される可能性が高いか。木々に隠れるってのも手だけど……。
「因みに、うちの子達もどちらかと言えば遊撃なんですよね……イオと双葉と風。まぁ、猫と植物娘と鳥ですから」
「ふむ……だとすると一番良いのは。なんとか地上に叩き落して、盾で相手の攻撃を防いでから一気に攻撃を叩き込む。まぁ、一番スタンダートなやり方か」
「対空砲火で落ちますかね?」
「因みに、うちの部隊の遠距離攻撃は弓なのさ」
「我々の所は銃だな」
「俺達は、俺が銃で美咲さんが弓を持ってますね」
遠距離武器に関しては、大体弓と銃が半分と言った所か。まぁ、ただ俺にはアンチモンスターライフルが有る訳だが。
「魔法はどうだ? 一応此処に居るメンツだ。中級及び派生を覚えている人は多いと思うが。我々の部隊だと、全員がどちらかを覚えている」
「俺と美咲さんは両方覚えてますね」
まぁ、俺に関しては上級以上も使えるけど……その事は協会から自分で口にする事を禁止されている。ただ、田中さんは知ってそうだけどな。協会側と言うか、守口さんの懐刀的な位置だし。
「うちらもどちらか必ず覚えてるよ。もちろん! 俺は両方覚えてたり!」
なるほど。水野さんは両方覚えているのか。だが、盾使いだよな? 後衛に覚えさせなかったのは何故だろうか。
まぁ、パーティー内の事だし、深入りしたら駄目なラインだろうからな。ここは気になるけどスルーだ。
「後は、相手の動きを見極めないと決める物も決めれないか? ゲームや物語と同じ動きならば戦術も立てやすいんだけどな」
「そうっすねぇ……でも、その考えは危険っさ。それで、崩壊前に怪我人を大量に出したんだから」
水野さんが曇った表情で正論を……。これは、身内に怪我人でも出たのか? もしくは自分が大怪我を負ったとか。
フレンドリーな雰囲気で周りと関わるのも、反動だったりするのかもな。
とはいえ、彼の言っている事は間違っていない。
相手がワイバーンだからと言って、物語やゲームみたいな行動をとるとは限らない。
ワイバーンはブレスを吐かない、もしくは火を吐いても威力は弱い……なんて思われてるが、ドラゴン並みのブレスを吐く可能性だってあるからな。
と言うか、作品によってはとんでもないブレスを吐くワイバーンの種類があったような?
と言うか、まだ相手がワイバーンと決まった訳じゃないんだけどね。
「とりあえず、まずは様子見って事ですね」
「盾使いにはかなりの重労になるだろうが……任せた」
「了解っさ! 俺っちの盾捌き、とくとご覧あれ!」
そんな会話をしていると、空からモンスターの影が近づいてきた。うん、戦闘開始だな。
因みに、美咲さんはさりげなく合流していたり。うん、本人が水野さんのキャラに追いつけずに、黙っちゃってる状態だ。これは相性の問題だから仕方ないだろうな。
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という事で、タイミング良く? 現れてくれましたが、まずはちょっとした作戦会議。




