二百六十七話
村の滞在期間をオーバーしない様に拠点へと戻る。まぁ、期間を延ばしても良いんだけど前にやったからな。連続でやる訳にはいかないだろう。
そんな訳で、予定通り街へと戻って来たんだけど……。
「なんか慌ただしい?」
「皆右へ左へと駆け回ってるね……何かあったのかな?」
戻って来た街では美咲さんが言う様に、探索者非探索者関係なく駆け回っている。
ただ……街へと向かってる最中には、モンスターの群れとかも無かったので本当に謎な状況。
「兎に角、何かあった可能性は高いから協会で聞き込みでもするか」
「そうだね。何か起きてるなら手伝った方が良いかもしれないし」
理由を調べる為にも協会に移動する。……まぁ、何もないと良いんだけど。
協会の中に入ると、施設内では職員が外の人達よりも慌ただしく動いている。あぁ、これは何かあったなと直ぐに理解出来るレベルだ。
そんな中、俺達の姿を確認した職員が「はっ!」と言う顔をしたかと思うと、大きな声で俺達の事を呼んで来た。
「白河君! 藤野さん! 戻って来たんですね! すぐ会議室に!!」
あぁ……これは大問題でも起きてるんだろうな。なんだろう。またオークが拠点でも作ったのか? いや、それなら別に大慌てになる前に討伐隊を組んでいるか。
となると、それこそ前の地下王国並みの事が起きている?
「うーん……何か嫌な予感しかしないなぁ」
「オークとの戦争レベルって考えた方が良いかもな」
「あれかぁ、あの時よりも装備も皆の強さも上がってるから、あの時よりも戦いやすいと思うけど」
「まぁそうだろうけどね。驕る平家もなんとやらって言うし、気を付けるべきではあると思うよ」
「慢心良くない! って奴だね」
そんな会話をしつつ、会議室へと移動をする。
そして、会議室の中では何時ものメンバーで、守口さん影山さん田中さんが勢ぞろいしていた。そして、それ以外にも魔石ダンジョン前から援軍が来ているのだろう。他にも人が何人か居る。
「おぉ、ナイスタイミングでの復帰だな。白河達、良く戻って来てくれた」
「戻りました。っと、村の中も相当でしたけど、何が有ったんですか?」
「それがだな……飛行系のモンスターが昨日の昼間に目撃されたんだ」
飛行系のモンスターが目撃された? 美咲さんの風や魔石ダンジョンに居る鳥であるならば、別に此処まで騒ぐ事はないはず。
だとすると……アンゲルでも出たのか? ただ、其れだとしても此処に居るメンバーは奴とのボス戦闘を経験している。十分に一パーティーで倒せるはずだ。
となると……。
「大量に空を飛ぶ虫系モンスターとか、単体でも恐ろしく強そうな相手ですかね?」
「蝗の群れとか? モンスターの蝗害とか恐ろしすぎて想像もしたくないけど……」
美咲さんが恐ろしい事を言い出したな。それは、虫が嫌いな美咲さんでなくても恐怖する話だ。
スズメバチのモンスター。あれのサイズから考えて、蝗がモンスター化のサイズを考えるとなぁ。うん、巨大な蝗モンスターが群れで全てを食らい尽くしていく。悪夢だな。
っと、蝗蝗と言っているが、本来蝗害と書かれているけど、その犯人は蝗では無かったりすると蛇足。
少し調べたらわかるんだけどね。まぁ、蝗の文字を誤ってイナゴに宛てたと、何とも閉まらない話だ。
まぁ、ただ相手はモンスターだ。蝗型モンスターが蝗害を起こすこともあり得るかもしれない。なので、美咲さんの蝗の群れ発言はスルーしておこう。
「いや、虫では無いな。単体で強い方だが……恐らくと言った話だ。姿をしっかりと確認した訳じゃないからな。……ただ、その形からしてワイバーン等では無いか? と予想している」
おおう……此処に来てダンジョン内でも無いのに竜種系が出てくるのか。
まぁ、高難易度ダンジョンのモンスターも外に出て来ていた訳だし、強いモンスターが外に出てきても可笑しくはない。
ただ、その高難易度のモンスター達と言えば、自衛隊のエースクラスの人達による決死の防衛戦で、その数を随分と減らしていたハズ。
……そうじゃなければ、もっと早い段階で強いモンスターの存在を発見出来ていたと思う。……ただ、今回の事で間違いなく生き残っているのは確認が取れた訳だが。
「それにしても、空を飛ぶモンスターですか。対空装備はまだ充実してないのでは?」
「その通りだな。今出来る事と言えば……ライフル銃と魔法による弾幕を張るぐらいだろうな」
連射が出来ないライフル銃。そして、魔法銃も連射が出来る訳では無い。魔法によりリロード及びチャージ時間を埋める。そんな戦術が現状は一番弾幕を張れるやり方だろう。
「我々としては、銃の追加を要請したい」
銃を要請したのは田中さん。一番簡単に戦力を充実させるのには便利な武器だからな。
とは言え……。
「各拠点から集めるのは無理ですね。それぞれの防衛が有りますから」
「む……しかし、今ある量では足りないだろう?」
「そこは弓も投石も使ていくしかないでしょうね」
「……因みに、そのワイバーンらしきモノが向かった方角は?」
「此処から南ですね。魔石ダンジョンや村と反対側の方向です」
なるほど。その点は良かった。もし北側に向かわれたら、同時に警戒しなくてはいけない場所が一気に増える。
だが、向かった先が逆という事ならば、まず最初に此処の街で奴の姿を確認できるはずだ。
「銃と同じで人員の補充も無理か……となると、俺達のパーティーで奴の向かった方向に捜索に出るか?」
「まてまて影山君。ここより南は未探索エリアが多い。そうなると、下手に捜索にでれば例のワイバーンらしきモノ以外にも引き当てる可能性がある」
「……藪蛇という事か」
全く探索やっていないという訳では無いが、調べつくしている訳では無い。何せ、まずは復興が先という訳で、そちらに人員を動員している。
まぁ、問題が無い様に多少周辺の調査だけはしているという状況だ。
「兎に角だ……今は厳重警戒態勢という訳で、探索者はダンジョン探索を中止。拠点に待機して奴の襲撃に備える様に」
守口さんからダンジョン探索の停止命令が出る。
一度対戦してみて、相手の特性が解ればまた違うのだろうけど。今は、何が起きても良い様に警戒するべきと言う判断。
そんな感じで、突如現れた飛行モンスターにより拠点が慌ただしくなり、待機令を出されてしまった。
まぁ、今はあれかな? 大人しく対空戦闘についての対策を考えておくとしよう。
━━父と娘達━━
「お父さん! 見て見て! パーフェクト!」
「お……おぉ。ゆいは凄く強くなったみたいだな」
その様な会話をする父と娘。
パーフェクトとは何かと言うと、父である匠も見た事がある、跳ね回るスーパーボールを避ける遊びと言うなの訓練。
ただ昔にゆいのプレイを見た時と違い、スーパーボールの数は異常なほど増え、ゆいの動きはそのスピードが上がっており、更にアクロバティックになっている。
「あはは……お父さんも吃驚だよね。この三年ぐらいで、此処までレベルアップしているんだからさ」
「まぁなぁ。アスレチックで子供達の動きを見た時も吃驚したが、まさかゆいが此処まで凄い事になっているとはなぁ。因みに、ゆりも出来るのかい?」
「それなりにかな? 私はどっちかと言うと回復と弓をメインにしているから」
「ハハハ……それでも凄いと思うよ」
微妙に笑顔が引きつる匠。
離れている間に此処まで村が普通から逸脱しているなんて……しかも娘達まで! 彼の脳内はその様な考えがぐるぐると巡っている。
とは言え、此処まで出来ればモンスターから身を守るという事を考えると、必要な事なのも理解している。
匠にとって一番の問題は……彼が皆に追いつくのが大変そうだと言う事だろうか。
「……父さんも訓練しないといけないかなぁ」
「ん? お父さんも一緒にやる? 楽しいよ!!」
「いやいや……いきなりゆいに合わせるのは大変そうだから、基礎体力をつけるところから頑張るよ」
「えー……残念。それじゃ、お父さん今度一緒に遊ぼうね!」
笑顔で父を誘う娘。しかし……その身体能力を考えると、その今度と言うのは一体いつになるのか……。
父である匠の口が引きつるのも仕方ないだろう。……頑張って笑顔をキープしているのだが、チラリとみるゆりからすれば、父のピクピク動く口元が良く見えている。
「あはは……父さん。協会に行けば、良い訓練方法を教えてくれるから」
「あ、あぁ。解った今度行ってみるよ。ありがとうな」
訓練をする。その決意をする父だが……遊んで暴れて楽しんでいるゆいに追いつく事が出来るのかは、実に難しいと言わざる得ない。
ブクマ・評価・感想・誤字報告ありがとうございます!
ダンジョン探索に戻るかと思ったら……。




