解決
第一建設社長は会社まで押しかけてきた、受付のカウンターの前で、呼ばれて来て見て驚いた、土下座しているのだ、仮にもこの地域のボスと呼ばれる男がだ
「この通りです、息子のやった事、許してください」
後ろでバカ息子も土下座している、それを見た社員たちは驚いて、土下座の二人と俺の顔を交互に見ている、これでは、まるで俺が悪者に見えてしまうじゃないか
「止めてください、分かったから、応接で話をしましょう」
応接に入りソファに向かい合って座る
「落ち着きましたか」
「ええ、まあ
「じゃあ、聞いてください、良いですか」
「はい」
「貴方の息子さんのやった事、貴方は本当に分かっているのですか」
「こいつにも聞きましたし、分かっているつもりです」
「普通の人だったら、今頃俺は霊柩車で運ばれているんだよ、息子の行為は殺人未遂なんだよ、それをどう許せというんだ」
「ですから、息子は刑務所でも、どこでも構わない、だが会社が潰れたら、何千の社員が、その家族が路頭に迷ってしまう、会社だけは何とか巻き込まないでもらいたいのです」
「社名を出さないで、SMSで流すだけなら、意味がないのだけど、良くある話で終わってしまう、そちらは痛くも痒くもないよね」
「いえ、あれを流されたら、今の時代の事です、すぐに社員の身元が割れます、そうすれば我社は終わりです」
「今までの実績があるでしょう、善い行いをしてきていれば、味方の方が多いはず、倒産まではいかないのでは」
「それが、生き馬の目を抜く業界で、生き残るには褒められる事は極わずか、恨まれることの方が多かった事のです、弱点が見つかれば、息の根が止まるまで、世間に叩かれて終わりですよ」
沈黙が部屋の中を占めた、黙っている俺の顔を見ながら、二人が黙って又も床に土下座を始めた
「ちょっと、辞めてくれ」
その時ドアが開いて、俺を襲った五人が入って来た、社長と専務が土下座しているのを見ると、黙って五人も土下座をし始めた、五人を案内してきたのだろう、沢田が
「社長」
そう言って俺の顔を見る、七人は床に頭をこすりつけ動かない
「分かった、分かったから座って」
頭を上げたが、床に座ったままだ
「ソファに添わってくれないかな、話しにくくてかなわない」
社長と専務がソファに座り、五人はその後ろに立っている
「分かりました、真剣に反省しているようだ、こうしよう、これからの第一建設を、見させて貰う、本当に反省している事に、確信が持てたら一切なかったことにして、水に流す、様子を見させてくれ、それじゃあ不満かな」
そう言って社長の顔を見る、社長は安堵の表情を浮かべると
「とんでもない、不満何て、そうしていただければ、ありがとうございます、それで結構です、見ていてください、貴方の期待に添えるような、そんな会社にして見せます、どうぞよろしくお願いします」
またも専務と一緒に床に座り、深々と頭を下げた、もう、好きにしてくれ
「そうなるよう、頑張ってください、俺は必ず約束を守りますから、期待してますよ」
「分かりました、本当にすみませんでした、そして、猶予を与えてくれてありがとうございます、命がけでやり遂げます」
七人は帰って行った、その後姿を見送りながら、沢田に
「ちょっとやり過ぎましたかねぇ」
そう聞いてみた
「いえ、これであの企業が生まれ変わって、社会に貢献するような会社になれば、あの人達の為にもなるでしょう」
「そうなる事を願うしかないですね」
その後、第一建設は町の福祉に貢献する、最優良企業として町の人たちに親しまれ、会社は近隣一の建設会社に成長していった
第一建設は片付いたが、バカ息子に依頼した大企業系列の会社、お仕置きが済んでいない、一番罪が重い奴等だ、ナナビシ製作所、家電関係の製造販売が主な会社だ、今ヒットし始めている製品に、我社も持っている特許部品を使用している、使用というより、その部分のお陰でヒットしている、と言っても過言ではない、それを無断使用という形になっているのだ、公になれば大変な事になりそうだ、その製品の独自性が人気で、世界に向けて販売予定だという、話が大きくなり過ぎて、お仕置きなんてちっぽけな事に思えてしまうが、ケジメはつけなければならない
ナナビシにはどういう手が良いか、思いつかない簡単に訴えてしまうか、そうなるとマスコミが、裁判が面倒な事が山住になるが、放って置くのは我慢できない、どんな罰を与えよう、悩んでいる時、受付から連絡があった
「社長に会いたいという方がいらっしゃいました」
「用件は」
「社長に直接話したいそうです、どういたしましょう」
「分かりました、応接にお通しして、沢田専務にも来るように伝えてください」
応接室の入り口で待っていた沢田と共に部屋にはいると、三人の男たちが待っていた、やはり一流は違う予想通りだ、来るのではないかとは思っていたが
「弁護士の佐々木と申します、こちらはナナビシ製作所の一木さんと春山さんです」
「進藤です、まず、ご用件を伺いましょうか」
分っていない振りをする
「突然お伺いして申し訳ありません、第一建設の件は、誠に申し訳ありませんでした」
一木と春山が深々と頭を下げる
「ご存知でしたか、確かに大変迷惑でした、命の危機に会いましたから」
「本当に申し訳ない事をしてしまいました、話の行き違いでして、我社の社屋の増築の時、仕事をしていただいた関係で、知り合いまして、同じ町にあるので中に立ってくれる、と言う話でしたので、あんな暴挙に出るとは、私たちは想像もしていませんでした、重ねてお詫び申し上げます、お願いしたとき、問題の早期解決の為と言ったのを、取り違えて解釈していたようなのです」
そう言ってしきりに謝った後
「それで、お詫びと、改めて特許の使用について、お伺いしたくて参りました」
先手を打たれたというか、拍子抜けしてしまった、第一建設専務の早とちりという事なのだ、沢田と顔を見合わせてしまった
「そう言う事でしたら、事件は直接第一建設と話し合ってありますから、了解しました、いろいろ文句は言いません、特許の件に関しましては、担当のものと話し合ってください、一般的な条件で結構です」
「ありがとうございます」
「なにもトラブルを、大きくする必要はないですからね」
「分かりました、寛大な対応感謝します、お詫びと慰謝料と言っては、語弊がありますが、うちとして最大限の条件で、契約させていただきます」
「それは、ありがとうございます、私は異論はございませんので、良しなに取り計らってください」
あっけなく事件は解決してしまった、後日、大企業という物の力を見せつけられるはめになった、ナナビシの新製品が、世界的に大ヒットして、そのロイヤリティー、つまり特許使用料が凄かった、我社の売り上げの倍近いのだ、うちで何か製品化して売り出して、たとえヒットしたとしても、売り上げ全額でもこの金額は無理だろう、規模の違い、力の違いを見せつけられた思いがした、お蔭で社員の給料を、一流企業並みに上げる時期が、早々やって来た、組合との交渉など待っていられなかったので、即月、昇給を決断実行した、それでも経理が対策に追われるほど、資金が残ってしまった、嬉しい悲鳴とはこの事だろう、そんな事も有って、最近はお偉いさん達の集まりにも、沢田さんと共に顔を出すようになった、何でどうして、という質問がなくなったからだ、急成長はナナビシとの特許の件が、公になったからだ、そういえば通るから、大企業とつながりができ、おまけに貸しがあるような、状態でつながっているから、何かと有利な取引もしてくれる、我社は順風満帆に輪をかけた状態になった
「なんで、信也がかかわると、良い事ばかりに化けるのかしら」
麗子が不思議がるが、一番不思議に思っているのは、俺だという事は誰も知らない
今日も麗子と食事の後、街を歩きながら空を見上げると、あの星が一層明るくきらめいていた、今が最高の時だと祝福してくれているように感じる
お読みいただきありがとうございました




