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好転の星  作者: ベン マウント
7/10

決着

両脇は飲食店の路地を歩く、昔は賑わっていたのだろう、今は閉店している店がチラホラある、前方から男たちが出てきた、仲間で飲んで店から出てきたのだろう、すれ違おうとしたとき

「あんた、進藤さんか」

突然声をかけられた

「進藤だけど、なにか」

ただならぬ雰囲気に、麗子を安全そうな物陰に押しやる

「これからの事、スマホで撮って」

そう麗子に耳打ちする、すぐに無言で殴り掛かって来た、そう来るのは

分かっていた、トラックで命まで狙うとは、しかも麗子も一緒の時に、頭に来ていた、拳を交わしざまに、手首を手刀で叩き足を払う、もんどりうって転がった、骨折は免れないだろう、続けて掴みかかった男の腕を掴み、三人目の男めがけて投げ飛ばす、四人目は前蹴りで胸をけり、五人目は掌底で顎を打った、あっという間に五人の男達が、路地に転がっている、俺の自己流の合気道は、威力を増している気がする、一瞬の出来事に目を見張り、動かない麗子に

「行こう」

声をかけると、手を引いて足早にその場を去る

「あいつ等、何者かしら」

「見当はついている、うちの会社を乗っ取ろうとしている、奴らの回し者だろう」

「そうなの、え、乗っ取りって、大丈夫」

男たちが見えなくなったところで、路地を曲がる

「大丈夫だよ、それよりもう大丈夫だと思うが、一人で帰れるよな」

「大丈夫だけど、どうするの、あんたの強いのは分かったけど、無茶はだめよ」

「奴らの後をつける、社員にまで手を出されたらまずいから、早期解決だ」

「無理はしないでよ」

「大丈夫だ、気をつけて帰って」

「分かった、じゃあ」

先程の顛末を見ているから、なんとか納得してくれた、心配そうな麗子を見送ってから、少し戻って奴等の様子を見る

フラフラだが五人とも、なんとか立ち上がっている、深夜の為奴等の話声が聞こえてくる

「畜生、話が違うぞ、あんなに強いなんて聞いてねえぞ」

「全くだ、これじゃあ倍の金額でも、割に合わねえ」

「文句を言いに行くぞ」

しめしめ、予想通りに事が運ぶようだ、男たちが動き出した、動けない奴に肩を貸し、助け合ってて歩いている、すれ違う人たちは酔っ払いだと思っているだろう、タクシーを止めている、一台に乗り切れないため、もう一台を待っているようだ、その間にこちらも、反対から来たタクシーを捕まえて

「悪いね、Uターンしてあの車をつけてくれる」

そう言って先に一万円札を渡す

「走行の分は別に払うから、お願い」

「分かりました、任せてください、でも、こんなに良いんですか」

「良いですよ、すぐそこでも気にしなくていいから、取っといて」

「そうですか、すみません、いただきます」

そのうちに、もう一台が捕まって、二台のタクシーが走り始めた、十分ほど走ったところで停車して、五人はタクシーを降りた、料金を払おうとすると

「こんな距離では、先程ので充分です」

「そうですか、じゃあ、ありがとう」

タクシーを降りて、歩道を横切り近くの路地に入る、建物の陰から男たちの様子をうかがっていると、降りた場所に近いビルの裏側に行くようだ、先に路地を走り裏の通りの見える位置に陣取る、男たちがビル裏側に来ると中に入って行った、さりげなく男たちの入ったビルまで歩く、第一建設ビル、とあった、今回は此処まで分かればいいので帰る事にする、心配しているといけないので、麗子に電話を入れる

「用事は済んだよ」

「そう、何もなかった、心配したんだから、帰ってから確認したらスマホにばっちり映っていたわよ」

「そうか、ありがとう、何れそれが役に立つと思う、奴等の後をつけただけだが、第一建設が絡んでいるようだ」

「そうなんだ、何かやる事ある」

「うん、ある、調査会社で良い処ないかなぁ」

「うちが利用している、調査会社良いわよ、信用もできるし」

「麗子が信用できるなら、大丈夫そうだな、頼みたい事があるんだ」

「何なの」

「此処まで執拗に出てくるのは、単に乗っ取りたいだけでなく、乗っ取る理由があるような気がするんだ、それを調べて欲しい」

「分かった、私の方から依頼しておく、結果は連絡するね」

「ああ、そうしてくれる、じゃあお願い、頼んだ、そう言う事で、お休み」

「おやすみなさい」

いろいろあったが、けがもなく済んだ家に帰って寝る事にしよう


翌朝、会社に出勤すると、沢田が玄関に待っていて

「社長、銀行さんが朝一番で会いたいそうです」

「何事でしょうね」

「担当者だけでなく、支店長が来るらしいですよ」

「誰が来ても、困る事はないけどね」

そんな立ち話をしている所に、銀行さんが到着したようだ、応接に通し

「進藤と申します、いつもお世話になっています」

「野沢と申します、よろしくお願いいたします」

何となく上から目線で見ている気がする、気のせいか

「早速ですが、今日のご用件は、つかぬ事をお聞きしますが、社長さんがメインバンクを、変えるような事をおっしゃったとか」

「ええ、審査が厳しくて、借入できないならという事で、言いましたが」

「うちから何処に変えるかは知りませんが、引き受けるところがあるでしょうか」

「どういう事でしょうか」

「うちが取引しないという事は、御社の信用はゼロになるという事と同じだからです」

「ほうー、お宅と取引しているから、我社は操業していられると、そう言うのですね」

少し腹が立ってきた

「うちのお陰でとは言いませんが、失礼ですが、こちら程度の会社が、大企業に歯向かっても、良い事はないと老婆心ながら、申し上げているのです」

「要するに、あなた方銀行の後ろに、大企業がいるから、大人しく言う事を聞けと、そう言うんですね」

「まあ、要約するとそう言う事ですね」

「分かりました、そちらからの借り入れは、即返済します、それから会社の預貯金は全て、他の銀行に変更そましょう、それから私の関係する預貯金は、一切貴方の銀行から引き揚げます」

「そんな事をして、会社が遣って行けるのですか」

支店長は余裕の顔でそう言う

「大丈夫です、お帰りになって、調べてみればわかります、借り入れの何倍も預金があるはずですから、無借金でやっていけるが、今までの付き合いで借りてやっていたんですよ、審査がどうの大企業がどうのと、あんた、自分の仕事を何だと思っているんだ、貸しているから偉いとでも思っているのか、こっちは借りてやっているんだ、利子を払って稼がせてやっているんだよ。預金者の金を使わせてもらって、貸して威張っているのか、貸した金で利息を取って稼いで、給料をもらっているんだろう、貸す方が偉いような顔をするなよ、借りて稼がせてやっているんだよ、勘違いするな」

支店長少し顔色が青くなってきた

「お帰りください、もう用はない」

そう言って席を立つ、沢田や後から来た常務も、後についてきた、社長室に入り四人でソファに座ると、経理を担当している常務に

「そう言う訳だから、メインバンクを変えてください」

「大企業を敵に回してまで、受けてくれる銀行がありますか」

「預金を断る銀行はないでしょう、借り入れは必要ないですから」

「新しい設備資金は、どうしましょう」

「こういう時の為の資金があるでしょう、使ってください、足りなければ言ってください、都合は付けます」

支店長は帰って行った、結局何を言いたかったのだろう、銀行が偉いとでもいうのか、大人しく従えというのか、ばかばかしい話である

借り入れの話でなければ、どこの銀行も大喜びだ、あの銀行の支店の業績はガタ落ちしたはずである、個人の何千人分の預金が減ったのだから、思い知るがいい

麗子から連絡があった

「凄い事になりそうよ、今度売り出した新製品に、信也の会社の特許と被る部分があるようよ、特許使用契約もなしでは、どのくらいの金額を請求されるか、彼らは焦っているのよ、傘下にしてしまえばその心配がないわけ」

「成程、そう言う事か、ありがとう、後はうちの特許部で調べてみるよ」

「相手は死に物狂い、気を付けてね」

「いや、気を付けてじゃないよ、今夜時間ないか、例の映したやつ欲しいんだ」

「良いわ、じゃあ何時もの処で、良いわね、あっ、七時で良い」

「それで、頼む、ありがとう」

忙しくなって来た、調査結果を沢田に話すと

「うちに有利な話ばかりじゃないですか、汚い奴等ですね、こうなれば中小企業の意地を見せてやりましょうか」

「そうです、意地を見せなきゃ、舐められては黙っていられません、頑張りましょう」

こんな話、社員の士気はさらに上がるはずだ、大人しく話会おうと言えば、こっちも無理を言うつもりはない、事を荒立てなくて済むのに、大企業のエゴという奴だろう、中小企業何てどうにでもなると思っているようだ

さて、傷害事件が起こらないうちに、と言っても、俺でなければとっくに傷害事件になっているが、これ以上騒ぎにならないように、止めをうちに行く事にする

第一建設のロビー、一般家庭のキッチン用品、ふろ用品が展示してある、いかにも検討しているように、製品を見ている、もう小一時間になるが、同じように見ている、若い夫婦が二組いるので、怪しまれる事はない、目的の人物が二人現れた、スマホのカメラを用意すると、近づいていく、スマホを見ているふりをして、写真を撮る

「昨夜はご苦労さん、もう痛いところは治ったかな」

「お前は」

「話をつけに来た、お前らのボスを出せよ」

「何を言っている、警察を呼ぶぞ」

「良いでしょう、呼んでくれ、これを見ても呼べるかな」

そう言って麗子に移してもらった、動画を見せる

「く、くそ、どうする」

「専務に相談するしかないだろう」

「そうか、専務から頼まれたのか」

慌てていたので、思わず口にしてしまった専務という言葉

「うっ、しまった、まずい」

大慌てしている

「こうなれば仕方ない」

男の一人がスマホを取り出すと、どこかに連絡している、専務の処だろう、連絡を終わると

「専務が合うそうだ」

そう言って先に歩き出す、エレベーターに向かっている、最上階で止まったエレベーターを降りると案内の男が、専務と書かれたドアをノックする、中から応答があり、部屋に入ると、俺と同年代の男がデスクの向こうにいた

「黒田です」

立ち上がるとそう名乗った

「俺は言う必要はないよな、名前を確認の上襲ってくれたんだから」

「それは申し訳ない事をしました、で、和解するにはどんな条件で」

「別に、暴力団のようなことを、辞めてくれれば何にも要求しないよ、ただ今度何かしたら、これをSMSに流すからな、それだけだ」

「分かりました、今後一切うちは手を引きます、出来たらその画像を、此処で消してもらえませんか」

「虫のいいことを言うんじゃないよ、これは保険だよ、昨日の手口で下手をすれば、俺は交通事故で死んでいたんだぞ、それを図々しく良く言えるな、そう言う事を、本来ならお前たちはとっくに、留置場の中なのに、勘弁してやっているんだぞ」

「じゃあ、力で消すしかないな」

「なんだと」

「私はこう見えても、柔道で日本一になったこともある、大人しく消せばいいものを、少し痛い目を見ないと、自分の愚かさに気が付かないらしいな」

『そうか、そう来たか」

「専務、辞めた方が」

「うるさい、黙っていろ、お前たちがだらしないから、仕方なく私がやるんだろう」

掴みかかって来た、柔道は掴まないと勝負にならないが、合気道はつまむ程度触れば、相手の力を利用して投げられる、専務の体が宙を舞い、絨毯の床に転がる、さすがに慣れているようだ、受け身を取ってすぐに起き上がる

「やるじゃないか」

再度向かって来るが、何故か俺にはその動作が、凄くゆっくりに見える、顔に掌底の一撃、足を払う、もんどりうって倒れたところを、近づき当身を入れる

白目をむいて気絶した、こうしないと解らない奴だと理解した

「馬鹿を相手にするのも嫌だな、この会社は終わったな」

案内開いてきた男二人は、呆然として気絶した専務を見ている

「待ってくれ」

六十代と思える男が飛び込んで来た

「社長」

案内してきた二人が合唱する

「待ってくれ、話は聞いた、全面的に息子が悪い、だが、待ってくれ、何でも条件を言ってくれ」

「さっきも、そこのバカ息子も同じことを言ったよ、そんな奴の親なんて、信じられるか、警察には面倒だから行かないが、SMSに流してやるよ、世間がどう判断するか、見物だな、楽しみに待っていろ」

「頼む、頼みます、それだけは勘弁してください、それをやられたら、大企業でも傾いてしまう」

「別に、俺は被害者で、こんな会社がどうなろうと、知った事か、そうならないように、話に来てやったのに、この馬鹿が壊したんだろうが、それをまだ許せって、俺はそんなに器の大きい人間じゃないよ、あばよ」

専務室を出るとエレベーターに向かう

「待ってくれ、頼む、お願いだ」

廊下に出てまだ騒いでいる、無視してエレベーターに乗ると、一階に降りビルを出た、近くのコイン駐車場に置いた車に向かう、清算して車を乗り出すと、社長さんがビルから飛び出してきたが、無視して会社に戻るため車を走らせる、少しお灸をすえないと、懲りないだろう、今までどんなに弱者を泣かせて、伸びてきたか想像できるような会社だ、しっかり怯えしっかり反省するがいい




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