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好転の星  作者: ベン マウント
6/10

乗っ取り

社長室で一人くつろでいると

「社長、どういたしましょう」

専務の沢田正雄が入って来た、有村が俺の補佐役でつけてくれた人だ、頼りになる人だが、良い人過ぎて決断力に欠けるのが欠点、有村の関係する会社の、社長にしたかったのだが、それが問題で任せられなかったという、本人もそれを自覚していて、快く俺の補佐役になってくれ

「地区の商工会の会合に、出席してくれとの連絡がありましたが」

「そう言うのは、遠慮したいですね」

「でも、この地域に世話になっている事ですし」

「すみません、沢田さんまたお願いします」

「そうですか、また嫌みの嵐ですよ」

「すみません、そろそろ沢田さんが社長になって貰えれば、万事解決なのですが」

「それはだめです、社長だからここまでになった会社ですから」

「駄目ですかぁ」

「分かりました、代理で出席してきます、仕方ないですね」

「申し訳ありません」

どうも地区のお偉いさん達との会合は苦手だ、少し急成長したからって、御高く留まっている、そう言われているのは分かっているが、別になんと言われても良い、一人二人と話すとき、いろいろ誤魔化すことができたが、大勢集まる場所で判断の基を聞かれて、説明するのが面倒なのだ、経営方針のほぼ百パーセント、プラス方向に当たる事が、噂になっているようだ、社長としての決断が当たった、と言えばそれまでだが、生来俺にそんな能力は無かったが、あの星の瞬きが見えるようになってから、それが分かるのだ、それを説明しろと言われても、言う気もなければ、探ってこられるのも嫌だ、だからそういう場所に出席するにはごめん被る

収入も増えて遊びの感覚で、FXや株をやってみた、それが面白いように儲かる、パソコンがあればできる時代だ、だれに知られるわけでもない、調子に乗って稼いでいたら、今では別会社を作って、資金を回さなければ処理に困るほど、税金対策が大変な事になっている、単純に良いか、悪いか、その判断が的確に当たる、それだけの能力だが、FXも株も上がるか下がるか、判断が当たればいい訳だから損をしない、だから遊び半分でやっていたのに、恐ろしい金額になってしまったのだ、名前が世間に知られないよう苦心している、麗子には理由は言わないが

「FXと株が当たってしまって、大金になり過ぎたから、FXと株の専門会社を作ったよ」

そう言ってある

「運が向いてくると、そういうものなのね、良い事じゃない」

深くは聞いて来なかった

会社は順調だ沢田には申し訳ないと思っているが、お偉いさん達に媚びる気もない、社員と会社の事を考えるだけで、取引関係などは沢田さんにお任せだ、前社長有村も、社長とは名ばかりで、社員の俺でさえ知らなかったんだ、それに比べれば俺の方が余程ましだ、社員は俺を知っているからね

「社長、大変です」

沢田さんが慌てた様子で入って来た

「我社の技術力に目を付けた、大企業系列の会社が、系列に入らないかと言って来ました」

「急な話ですね」

「商工会の集まりなどで、何度か話はありましたが、聞き流していたんです」

「それが、正式に申し入れ」

「というより、傘下に入れてやる、という感じです」

「どうしましょう、話に乗りますか」

「子会社になるという事ですか、私はどうかと思いますが」

「じゃあ、断りましょう、赤字を出したわけでもなく、業績は順調ですし、断ってください」

「相手もメンツがあるから、素直には引かないでしょうが、断りますか」

「傘下に入る理由もないですからね、有村さんには俺から話しておきますよ」

「お願いします、それでは」

すぐに有村に相談をしたが

「あんたに任せたんだから、判断は任せますよ」

との返事だった、確かに我社は魅力ある会社に成長した、販売力においては、同程度の会社では群を抜いている、工場はわが社独自の技術を幾つも持っている、自慢ではないが、世界規模で我社しかできない技術も持っているのだ、大企業が狙ってくるのは当たり前と言えた、だが、その気はない、牛の尻尾よりネズミの頭、大企業の下っ端企業より、中企業でも自由でありたい

俺としては社員の給料を、大企業並みにしたいと思っている、会社を大きくするより、その方が先だ、社員一人一人が経営者のつもりで、意見を寄せてもらう、組合にその方針は伝えてある、その為社員の士気も高い、今は国内だけでなく、外国からの受注も増えている、販売は俺が良いと判断した、製品の販売権が当たり順調だ、右肩上がりの業績、今年も組合の要求通りに、昇給できそうだ、今日は組合との話し合いの日、会議室に行くと沢田を始め常務二人も揃っていた、仰々しい挨拶など抜きにして、直ぐに会議を始める、話し合いも終わりに近づいたとき

「社長、最近うちの技術者の、引き抜きが横行しているようですが、知ってますか」

組合の委員長が言い出した

「いや、初耳です」

「主だった技術の連中が、ターゲットのようですよ」

「人事は変わっていないようですが、誰か引き抜かれた者はいるんですか」

「いませんよ、こんな遣り甲斐のある会社、他にありませんから」

「ありがとう、褒めて貰えて嬉しいよ」

「でも、最近急になんですが、何故でしょうね」

「うん、大企業の傘下に入れという話が有るんだ」

「それで、会社を弱らせて有利に、傘下に組み入れようってわけですね」

「そうなんだろうね」

「それでは、組合も周知させて、対応しましょう」

「そうしてくれるとありがたい、傘下になんかなったら、いろいろと押さえつけられてしまうからね、今の体制を維持したいんだ」

「組合だって、今が理想の状態です、負けませんよ」

「お互い頑張ろう、よろしくお願いします」

考えていたより、組合に好感度なのが嬉しかった、その時常務の一人が

「それでだと思うますが、銀行も何かと参加の方向が、望ましいようなことを言ってますよ」

「早速圧力がかかったんでしょう」

「その様です、新しい設備の関係で、借り入れをしようとしていますが、審査が厳しそうです」

「駄目な様なら、言ってください、俺の方で何とかします、正直なところ銀行には、借りてやっているのですから、ダメだったら銀行を変えましょう」

「分かりました、それではその方向で」

聞いていた組合の幹部が

「銀行と仲良くしなくて、大丈夫ですか会社は」

そう心配そうに言う

「ええ、大丈夫です、みんなが頑張ってくれているから、うちは無借金経営でも大丈夫なんだ、銀行何て付き合ってやっているだけだよ」

「そうなんですか、良し頑張るぞ」

目を輝かせて言っている、なんとか傘下に入れようと、画策しだしたようだ

「株の方は大丈夫ですか」

沢田に聞くと

「はい、株は有村会長と社長名義、それと、社員の持ち株、部外ではわずかですから、心配ありません」

「分かりました、それではこれで、お互いに頑張りましょう」

組合幹部も意気揚々と、職場に戻って行った


麗子と食事をしながら

「後、どうする」

そう尋ねると

「ねえ、そろそろ父に会ってくれない」

そう切り出された

「うん、俺はいつでもいいよ、麗子の言うとおりにするから」

「いやに素直ね」

「いつも素直だろう、俺は麗子にメロメロなんだから」

「そう言って、今まで何人泣かせてきたのかなぁ」

「嘘だと思うかもしれないが、心から好きになったのは、麗子が初めてだよ」

「じゃあ、ちょっと好きになった人は、いっぱいいたわけね」

「いや、そんなに持てるわけないだろう、こんな俺だぜ」

「そうかしら」

「白状するけど、今まで一人だけお付き合いした人はいる、けど手をつないだ程度までだった」

「嘘、幼稚園児じゃあるまいし」

「それが、どうしてか、食事をしたり、映画を見たりしたんだが、それっきりだった、それ以上の気にならなかったんだ、俺って変だよな」

「うん変、信じられない」

「早くに母を亡くし、親父一人に育てられて、女性というものに縁が薄かったから、女性とどう付き合えばいいか、分からなかった、疲れるんだ、でも、麗子といると安らぐんだ、どうしてかわからないけど、ほれているからかなぁ」

「なんか、はぐらかされたような気がするけど、そういう事にしておいてあげる」

「いや、真実だから」

実際、数年前、今の自分は想像すらできなかった、大学も出ていない中小企業の平社員が、社長になって、恋人が地区では知られた会社の専務、想像できるわけがない、どうしてこうなった、神社のおみくじと、あの星が見えるようになってから、俺の人生は変わった、良い事ばかりで時々不安になる、恐ろしい地獄が待っていないか、麗子の両親に会うのは、ちょっと気が引ける、一流大学出で地区の名家のお嬢さんと、田舎出で高卒の男、誰が考えても釣り合いが取れない、まして、親だったら受け入れられるだろうか、これが試練になりそうな気がする

「じゃあ、父たちと相談して連絡するね」

「ああ、そうして、だけど、俺で良いのか、麗子に対して俺じゃあ、役不足な気がして」

「今更何言ってるの、信也でなきゃダメなの」

「麗子がそうなら、どんなことがあっても覚悟するけど」

「何大げさな事を言ってるのよ、何時もの信也らしくない」

「そうかな、まあ、よろしく」

レストランを出て夜空を見上げると、あの星が見えた、光がかすんで消えそうな、何時もの輝きがない、何か嫌な感覚が体に走る、通り過ぎようとしている、横道に入らなければいけない、そんな思いが頭に浮かぶ麗子の手を引いて、横道に入った途端、ドッカーン、ガシャン、振り返るとトラックが小路の入り口に、突っ込んでいた

「信也さん」

振り返って驚いている

「この道の方が近道だから、良かったようだ、危機一髪ってやつだな」

『そうね、ついている男は凄いわね、命拾いしたんだ」

騒然とし始めた現場を眺め

「面倒が起こらないうちに帰ろう」

「そうね」

危ないところだった、麗子まで巻き添えにするところだった、麗子には気付かれずに済んだようだ、あの星が輝きを取り戻して輝いている



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