表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

今日から学校と仕事、始まります。②莞

クレマの裏側

作者: 孤独

ガララララ


「ご注文はかつ丼で、以上で宜しいでしょうか?」

「ありがとうございました」


とある飲食店のどこにでもありそうな風景。

注文を受け取り、調理し(あるいは作られている)、提供する。そして、お客様が食べて、料金を支払う。

なんてことは風景である。まだ社会の仕組みが分かっていない子供ぐらいか、ボケた老人ぐらいが戸惑うものか。


「カウンター12、オーダー、かつ丼でーす」

「了解ー」


高校生でもバイトができるところの一つであろう。社会勉強には良いところだ。

店をやるという働きも案外大変であり、単純作業の連続だからこそ、苦労も知れる。


「お待たせしました、かつ丼です」


こんな簡単だからこそ、絶対にできなきゃいけない。なんてことが難しいのだ。

周りと変わりなくオーダーをこなし、次のオーダーを受ける。もう少しで忙しい時間が終わる。まさにそんな時である。


「おい!俺が食いたいのは天丼だぞ!なんでかつ丼を持ってくるんだよ!」


ドキッとするなって、言うのは無理であろう。

オーダーミスの申告である。


「すみません、オーダーを間違えてしまいましたか?」


店員の川中明日美はいそいそとお客様の”食券”を確認する。

こーいうとき、伝票や食券というのは大事である。声を挙げたお客様の食券は……


『かつ丼』


「え?……かつ丼ですよね?」


目の前に半分食われたかつ丼と合致する。しかし、お客様はそんなことなど。


「だからなんだよ!俺は天丼を頼みたいんだよ!なんで、かつ丼になってんだよ!」

「はぁ」


これがあれか、クレーマーというのだろうか。


「ちゃんと注文したのに!運べねぇのか!?」

「あのー。失礼ですけれど、ここはそこの券売機の食券で注文するところでして。かつ丼を頼まれたのでは?ご確認しましたよね?」

「俺は天丼のスイッチを押したんだよ!そしたらかつ丼が出てきたんだよ!おかしいじゃねぇか!」

「ですけれど、私がご確認しましたよね?このかつ丼のオーダーを受けましたが」

「確認なんかされてねぇよ!!」


記憶などというのはこんな場で、ハッキリさせるのは無理だろう。

機械の故障と訴えられても困るとこ。


「作り直せよ!これもういらねぇから!」

「少々お待ちください」


オーダーミスからの作り直しは出来なくもない。しかし、この場合どーいったものか。

アルバイトである川中は、先輩主任からこの時の対応を教えられる。なんとなく想像が付くが。


「すみません。作り直しはちょっと、できません。こちらのかつ丼はもうご提供して、お客様が半分も食べているので。また改めて、天丼を注文してくれないでしょうか?」


何も手をつけていなければ、ギリギリ作り直しが間に合う場合がある。

ただし、注文を受けて提供され、手をつけてしまっているともうアウトである。記憶だの、故障だのでの理由は店側として無効である。


「ふざけんじゃねぇぞ!偉いの呼んでこい!あんたに言っても分かってくんねぇな!」

「わ、分かりました(先輩の指示だったんだけど)」


とはいえ、クレーマーと化した人には何をしても無効である。自分本位で回っているから。

正直、ウンザリ気味で先輩にご相談。客には見えない店の奥で話せば、


「え?あれで納得しなかったの?」

「はい。もう手をつけてるし、食券もかつ丼ですよって伝えたんですけど」


大抵、相談された側や対処法を伝えた側はこんな反応をし


「うわぁ、相手にしたくないなぁ……」

「ですよね……」


拒絶反応を出す。しかし、どーあれお客様に入るので仕方なく対応しなきゃいけない。そして、分かってる。どーんなことしても、法律があったとしてもだ。


「新たに注文してくださいか、諦めてくださいの2択なんだけどね」

「先輩とか偉いとか関係なく、そーですよね……」


誰かに文句を言いたいだけなんだろう。滅茶苦茶を言いたいだけなんだろう。こーいうのに当たった時、思い浮かぶのは


「馬鹿以上に説明するのってめっちゃムズイのよね」

「お客様に言っちゃいけませんよ」

「絶対に向こうも分かってんのよ。たぶん。その上であーだこーだ、言うんだから」


逆にそーじゃなかったら、何しにここに来たんだが。よく食券を買えましたね、偉いでちゅよ~って褒めてあげるべきなんだろうか。よくこんなことを言えるなぁって思うのよね。


「あー。私、店の主任ですけれど。ご注文はそちらの食券機のご利用でお願いします。こちらは食券で出された料理を提供するのでして」

「だーから!天丼を押したら、かつ丼の食券が出て来たんだよ!」

「では食券機を調査してみますね」


壊れてるわけないし、経年劣化が起こるまで調査するわけにもいかない。わずかながら、こいつが故障している可能性もあるが……。天丼は天丼で食券は出るし、かつ丼もかつ丼で食券も出る。他も同じであった。

知ってた。


「特に異常ないんですけど……。天丼のご注文でしたら、もう一度注文してくれませんか?これ以上の調査ですと、別の業者を呼ばなきゃいけないんですけど」

「ふざけんじゃねぇぞ!調査にたらたらしやがって!!」


早いとこ退いてくれない?


「飯も冷めちまったじゃねぇか!」

「はぁ~」

「あんたも使えねぇな。それで主任かよ」


もう天丼とかかつ丼とかどーでも良くなってるし。

それはこちらも大体同じだよ。


「ああ、いいですよ。それで。もう一度お伝えしますが、あなたは食券でかつ丼を注文し、こちらはご提供し、あなたはもう口にしてるんです。ご注文の間違いはもう聞けないんです。ご返金なども受け付けませんので、これ以上の騒ぎにするなら警察を呼びますよ」

「すぐに警察警察か。こんな店、二度と来るか!!」


すみません、来ないでください。

というか、早く出てよ。他のお客の相手をしなきゃいけないんだから。



◇        ◇



「はぁ~……疲れましたねぇ」

「まぁ、月に1回か2回来るもんだから。シフトの時に来なきゃ良いだけよ」


クレーマーのせいで何人かお客様が逃げてしまった。店側から問われる事じゃないが、完全な営業妨害を喰らっている。速攻で警察に通報する方が早かったか。とはいえ、こんなくだらない事で警察を呼ぶのもどうかというもの。ぶっちゃけ、警察も自分達と同じような対応になるだろう。


「どーしてあーいう人ができるんでしょうか?」

「さぁね。分かんないけど」


ミスの指摘なら反省の余地がある。しかし、文句をつけているところから間違えていると、どーすりゃええねん。どーやったら伝えたらええねん。といった具合である。

そもそも言うべき相手を間違えていたとか、思わないのだろうか。意思疎通は難しい。


「百歩譲ってね、あーいう見本の悪い人がいたら。そーならないように生きるべきよ。そんな切り替えを軽くすりゃいいの」

「先輩は前向きですね」

「あんな馬鹿げた文句に良いとこないんだから!私だって文句言うけど、ちゃんとしたミスで、絶対にマウントがとれる時にしか文句を言わないから」

「それもどうかと……」

「人を許すってのは難しいから」


そーいう人がいるからこそ、まともって言葉が成り立つんだろうと思う。

川中は先輩とは違うが、おおらかに許せる人に成ろうと思った一日だった。



配達業をやってるんですけど。


『今日は在宅してたのに不在票が入ってるぞ!どんな仕事してるんだ、テメェ!!』


みたいな感じで怒鳴りに来るのは、まぁ良いんですよ。


『この不在票、ウチの会社じゃないし、一昨日の不在票じゃないですか……』


色んな配送業者があるから、お客様にはどれも同じに思えるのかもしれません。

再配達の依頼までやってあげるのは、本当に面倒なんです。

せめて、不在票入れている会社と日にちくらいは見て欲しいです。


色んな問題と戦うのが社会でしょうか。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ