Road12 怒り。生まれるは悪魔
前回の胸糞partから続きます。
前半の胸糞注意なので、気分を害されそうと思うかたにはおすすめ出来かねます
「オラァ!クソがぁ!」
「グッ…」
腹に一撃をもらった直後に強化結晶で防御を高めたので、先程からあまりダメージは受けてはいないが、埒が明かない状態が続いている。
(うわぁ、なんでこんなことになったのかなぁ…)
そんな憂鬱なことを考えながら目線を下に落とし、少年少女に目を向ける。
「お願い…しっかりして…死なないで…」
「姉…ちゃん…大、丈夫…だ、よ…。」
まだ10歳にも満たないような見た目の姉弟が掠れた声を出しながら互いに寄り添っていた。
自分の体力にまだ余裕があるので姉弟に注目がいかないよう、男を睨みつけたりしながら自分に注意が向くようにやり過ごしていた。
姉弟をしばらく見ていると目線に気付いた少女が心配した目をこちらに向ける。
(注意は引いてるんだ、早くいってくれ!)
何とか悟られないように、少女に目配せをおくった。
少女はうまく察してくれたらしく弟を抱え、その場を離れようとした。しかし…
「あれぇ?もしかして逃げれると思ってんの?」
いままで気にも留めなかったために忘れていた男女に見つかってしまい、阻まれてしまう。
「ず~っとなぶられてるの見てただけだったけどさぁ…」
(ッ!?しまった!)
アルトが気付いたときにはもう遅く、少女はもう一人の男に腹を蹴り飛ばされていた。
「やっぱり僕らだって楽しみたいんだ。ねぇ?」
「当り前じゃない、見てるよりはやる方が楽しいしw」
そういうと次は女性が少女を蹴り飛ばす。その次は男性が、その次は女性がと交互に少女に暴行を加えていく。
ある程度痛めつけたあたりで姉弟が小脇に抱えていた荷物に手をつけていた。
「ガキのくせに似合わない首飾りなんかしてさぁ」
「あっ、こんな武器あったのかよ。ガキと違って使えそうじゃんw」
少女さえも虫の息となって項垂れている中で持っていた金品を物色していく女性に少女は必死にしがみついた。
「離し、て…それ、持ってかないで…。」
そんな必死さも虚しく、少女は女性に殴り飛ばされてしまった。
それを最後に、少女も少年も、もう事切れたように動かなくなってしまった。
そんな事象を一部始終見せられていたアルトは自分がもしあのままこの姉弟を見捨てていたらという自分の非情さと、目の前のクズすぎる奴らに対して怒りが込み上げていた。
(コイツらでどんなやり取りがあって、こんなことになったかなんて俺は知らねぇ…。
けど…暴力を楽しんでたり何かのはけ口で殴り続けて、死にかけてんのにやめねぇのは見るに堪えねぇ…。
そしてなによりも…)
今一度、目の前の大男を睨みつけ自身の怒りを内に爆発させて決意する。
(そんな奴らを見ねぇフリしようとした俺を許せねぇ!ッ!)
副作用など後で考える、今は知ったことじゃない。
まだ防御の効果が残っているが、似たようなことなら前にもやった。
[赤い結晶を取り出し、砕き割る。]
気を引き締めろ。効果切れを考えるな。攻撃がくる。逃げるな。引くな。こんなクズどもの思い通りにさせるな。
「いい加減、くたばれやぁぁ!!」
大男の拳が振り下ろされる。アルトは拳を躱さず、正面から受け止め…
「調子に乗ンな。」
アルトの瞳が紅く染まった。それと同時に身体が自分のものではなくなったような感覚が表れた。
即座に受け止めた拳を払いのけ、意向返しとばかりに、筋力を強化された自身の拳を大男の腹に叩き込んだ。
「うげぇ?!」
大男は吹き飛ばされ、見事に後ろにいた男女にあたる。
「テメェ、死にてぇようだなぁ!!」
「いやぁ、3人相手に逃げられるとか思ってないよねぇ?ナメてんのかガキが」
「調子に乗るなってアンタでしょ?あーあ、ムカツいてきちゃった。殺しちゃおっか!」
3人の敵意は完全にこちらに向いた。アルトに引く気など等に無く、この3人をブチのめすことだけを考えていた。
「くだらねぇ戯言いえるんならさっさと来やがれジジババども。その小根、言葉通りにへし折ってやるよ。」
「ナメてんのかって言ってんだろガキがぁ!」
挑発をかますアルトだったがその言葉には確かな怒気が含まれている。
最初に向かってきたのは取り巻きの男だった。
全力で走り出し、こちらに飛び蹴りを仕掛ける。
蹴りを躱し、後ろの壁に当たった一瞬を逃さず
「はぁぁ!」
男の足を掴み、力に任せて思い切りへし折った。
「ぐ、あああ!!!俺の、俺の足がぁ?!」
「や、野郎、マジで折りやがった!?」
へし折り(物理)を本当にやられるとは思っていなかった賊達は動揺を隠さずにいた。
「人にナメんなとか言っときながらもうリタイアか?
根性腐りきって、何一つ残ってないらしいな!」
足を押さえる男に罵倒を吐き、追撃に折れた足を蹴り飛ばした。
男が足を押さえて息を殺して倒れている後ろから今度は女性が短剣を取り出して向かってくる。
「チッ…死になさいよ!」
勢いに任せ短剣を突き刺さそうとした…が短剣を持った腕を掴み取り、そのまま背負い投げた後に武器を持った腕の関節を逆に曲げた。へし折った。
「い、イヤアアアアア!!!!!!」
「チッ…うるせぇんだよ!!」
こちらの鼓膜が破けるのではないかと思うほどに大きな悲鳴を上げる女性の腹をアルトは容赦なく踏み付けた。
「ゴ、ゴホッ…オェエエエ!!」
腹部を踏み付けられた女性は堪らず嘔吐してしまった。そんな女性をアルトはゴミを見るように見下し
「うわっ、ゲロ吐いてやがる…汚ねぇな。」
少年が吐いた時に女性がかけた言葉を、そっくりと女性に返し、ゴミを払いのけるが如く女性を蹴り飛ばした。
「ふ、ふざけんじゃねぇ!この化け物が!」
無残にやられた仲間の惨状を目の当たりにし、自身も一度殴られたためか、大男は既に足が震えていた。
そんな大男が、取った行動がアルトを更に激情させる。
「う、動くんじゃねぇ!このガキどもの首を跳ね飛ばすぞ!」
背負っていた斧と腰につけたナイフを取り出し、小さな姉弟の首元にそれぞれ突きつける。
アルトは足を止め、その場に立たずんだ。
「そ、そのまま動くんじゃねぇぞ。その減らず口を引き裂いて殺してやる。オラ、そのマフラー取りやがれ!」
震えた足で子供を抱え、アルトに距離を詰めていく。
止むを得ず、そして考えがあったアルトは素直にマフラーとボロボロになった伊達メガネを外した。
「あ、え、お前、まさか…!」
大男が見たアルトの顔。それは紛れもなくこの町でも指名手配されている大罪人。[アルター・ロード]の顔そのままであった。
目の前の人物が誰か。それを理解し動揺した男は抱えていた子供を落としてしまった。
その隙を見逃すはずもなく、子供に対して人質にしたクズ度合いに怒りを増していたアルトは剣を抜き、男に斬りかかる。
辛うじてなんとか防御した男であったが、アルトのあまりの力加減に斧の肢は壊れ、ナイフは刃先が折れている。
「わ、悪かったよ、ゆ、許してくれ!」
戦意は既に消え失せ、もはやこちらに謝り倒す醜態を晒している。大男に対してアルトは更に心を地獄に叩き落とす。
「ダメだな、今更謝りが通用するわけ無ぇだろ。
まぁ、許さねぇ理由なんぞいろいろあるが…」
かける慈悲など毛頭無い。最後に悪魔とも思える冷酷な顔を男に向けて
「そもそも君を許す理由が僕にはない。」
言葉を発し終え、左手に持つ剣は無慈悲に振り下ろされる。
表にはしっかり描写できていませんが、主人公は年頃の男子のようにカッコいいものが大好きです。しかし自分がダサいと思うものには、たとえ自身であっても嫌悪する難儀なやつです。
性格に関して、この部分だけは絶対に変えたくない部分ですね。
まぁ、変えちゃったらこの小説のタイトルまで変えなきゃいけなくなるので…




