沈黙
あれから3日が経過しようとした。
司は、ただなんとなく過ごしている気がした。そう、なんとなくって表現が1番適当だった。未だに、気持ちも整理できていない自分がいた。
ふと、健ならこういう時どうするんだろうと思った。あいつなら、なるようになるさなんて笑い飛ばしてくれそうだ。いや、何を賭けても良い。少なくとも俺の知ってる健は、そういうやつだ。
そういえば、健の命日までに墓参りに行く事にしたのを思い出した。
明日に行こうって決めて眠りについた。
朝、起きるとなんだかすっきりした気分だった。
何の夢をみたかなんて覚えてないけれど、とっても心地の良い夢をみたなのは確からしい。
自分なんかが中心に世界は廻ってないのはとっくの前から知っている。けれど、今、この町、いやこの空間だけは、じぶんを中心に動いてる気がした。
ゆっくり仕度をしてから健の眠っている墓に向かった。
家から40分くらいの少し丘みたいになっている共同墓地の片隅にそれはある。
司は、自転車を丘のふもとでとめて、ゆっくりと丘をのぼっていく。
やっとのぼり終わるって時に、人影が目に飛び込んできた。
誰だろう、そんな事を思いながら近付くと相手は振り返り、司に気付いた様な感じだった。しかし、こちらを向いたままただ立っているだけだった。近付くと、そこには詩織が立っていた。
木の枝が風で揺れてザワザワと音をたてた。しかし、夏の風が司の背中を押してはくれなかった。
2人が黙って立っていた短いはずの時間がとてつもなく長く感じた。
それは、サッカーで勝っている時のロスタイムの様に。