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夏の風  作者: 常盤夢人
8/13

静寂

「ねぇ、2人っきりになったんだから聞かせてよね。」


「何を?」俺は、わざとらしく聞き返した。


「歩についての想いに決まってるでしょ。」


何でよりによって詩織と2人になったかというと、彰が2組に別れようって提案したからだ。

そこまでは、良かったのだが彰が俺と歩で組ませようとする前に、詩織がじゃんけんで勝った方、負けた方で組もうなんて言い出した。

それでも、確率は二分の一なのだが。。どうやら、司は運にも見放されたらしいって事がこれでハッキリした。


「どういう所が好きなん?」


詩織はしつこく聞いてくる。人の事にいちいち口をだしたがるのだ。

「別に好きなんて言ってないでしょ。」

そう答えてみたが

「ほら、夏休み前の経済基礎でノートとらなかったの歩をぼーっと見てたからでしょ。いっしょに出てたのに目がおかしな方ずっとみてたしね。それで、教授に板書消されたんでしょ?別にいいんだよあたしは歩にこの事言っても。」


「分かった、わかった。」


「答えになってないじゃない。そんな事だと嫌われるよ。」


まったく余計なお世話である。

「あっ、クレープ食べてないね。」

「これも俺の奢りかよ。」

司がぶっきらぼうに言うと

「正解。」

まったく俺の財布の中は気にしていないらしい。

二人でクレープを食べながら歩いていると、

「優しい所かな。」

「えっ。」

「だからさっきの質問の答えだよ。」

司が言うと

「おお、素直に認めたね。」

時計を見ると10時を指そうとしていた。

「10時に駅前に集合だから戻るか。」

俺が提案して駅の方に歩きだした時、いきなり手を引っ張られた。

「ねえ、あたしじゃ付き合うのダメなの?」

一瞬、何を言ってるか分からなかった。

「あたし、優しくする。司の事好きなんだよ。」

突然でビックリした。

言葉を失うってこういう事なんだって司は思った。

「ゴメン。急にこんなの言われても困るよね。でも、歩と付き合うならいいかな。でも、あたし、司のこと。」

詩織の頬から涙がつたっていた。

詩織が泣くのを見るのは健が亡くなった時以来だった。

自分が原因で泣くなんて夢にも思わなかった。

「もう、何も言わなくていいよ。」

なぜか司は、そっと詩織を抱きよせた。

祭の後の静寂と詩織の髪の香りが、心地良かった。

詩織がこんな風に想っていたなんて、全然気付いてやれなかった。

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