7月末
結局、何をしに彰は俺の家に来たのだろうか。しかし、いつも何の理由もなく彰は俺の家に来る。さっき話しにでた中嶋歩や幼なじみの長谷川詩織もだ。大学から俺の実家まで近いという理由から主に4人のたまり場になっている。
中嶋歩は18で大学1年で経済学部。俺と彰の誕生日が6月だから19であるが歩と詩織はまだ誕生日がきてないから18だ。
長谷川詩織は、文学部である。しかし、蝉の鳴き声は相変わらず衰えない。ぼーっとしている訳にもいかない。なぜなら、7月中に大学に行って締め切りが過ぎたレポートを頭を下げて提出しに行かなければならないからだ。
「おい、まだこのレポート終わってないのかよ。歩に嫌われるぞ。」
「うるさいっな。今から、やるんだよ。第一、このレポートとは関係ないだろっ。」
そうは言ったものの、やはり詩織や彰に手伝ってもらって終わらす事になりそうだ。なぜなら、今日はもう7月28日だからだ。
そういえば、
「司は、時間にルーズだしだらしがない」って歩に言われたっけ。あの日の夜は、胸がナイフで刺されたみたいに痛かった。大学から家までの距離がこんなに暗くて遠いと思った事はなかった。
「おじゃましま〜す」
この声は詩織の声だ。
「おばさん、相変わらず綺麗ですね。」
「あら、やだね。暑いでしょ。飲み物でも持ってくからね。司は部屋にいるよ。」
「ありがとうございます。」
遠くから会話が聞こえてくる。詩織は話し上手ですぐ人をその気にさせる。
詩織も部屋に入るなり俺のレポートから性格にいたるまで分析し、あんなに良いお母さんなのに、と嘆いた末に昼ご飯をおごれば手伝わない事もないと言ってきた。
もちろん、俺はもちろんその要求を飲むしかなかった。レポートを書いていたら詩織が
「そういえば、司と彰。夏休み8月2日は暇でしょ?」
「何で?」2人は、ほとんど同時に答えた。
「みんなで花火見に行こうと思って。」
「バイトだからパス」
俺の返答が気に入らないらしく
「歩も来るし、来なかったら、歩にレポート終わってない事言うから。」
こう言われると行かざる終えない。
いつもこんな調子で、詩織のペースに乗せられている。彰は、いつもそれが楽しい様だ。歩が来るなら良いか。2人が帰った後で、2人のおかげで完成したレポートをバックに大事にしまいながらふと思った。
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