夏の月
司は、みんなが昼を食べるベンチに行った。
前と同じ様に3人が座っていた。前は、自分もあの中で楽しく話していたはずだった。周りからは、司が緊張しているのが手にとるように分かるだろう。
「よっ、司!久しぶり。」
彰が気付いて声をかけてくれた。
「久しぶり。」
歩、詩織とも挨拶を交わした。詩織を見るのは久しぶりだった。
そして、何事もなかった様に1日が過ぎようとしていた。
講義が終わった帰り道、歩が
「久しぶりにみんなでドコかに食べに行こうよ。」
歩がみんなを誘うのは、珍しかった。
「悪い、今日、ちょっと用があるんだ。」
彰が少し気まずく断った。
「バイトか何か?」
「いや、まあ、いろいろとね。」
彰は、言葉を濁した。
「いいよ、行ってきな。咲ちゃんでしょう?」
「悪い、また明日ね!」
そう言い残して3人とは、逆方向に向かった。
「彰の好きな子、咲っていうんだ。」
司が呟いた。
「正確には、美咲だけどね。やさしくてさ。彰には、もったいないんだよ。」
歩が冗談まじりに説明してくれた。
「お二人さん。あたし、邪魔なら帰ろうか?」
歩がちゃかしてくる。
「いいよ。3人で食べに行くんだろ。」
歩に話した時の俺の頬は、紅潮していたかもしれない。
「じゃあ、お言葉に甘えます。」
詩織がいきなり言ったので驚いた。
「じゃあね、お二人さん。」
そう言って、歩は悪戯っぽくウィンクして駅の方に行ってしまった。
「ゴメンね、歩とじゃなくて。それより、何か、司あたしの事避けてない?」
ドキっとした。避けてはいない。でも、ぎくしゃくしていると俺も思う。
「詩織は、謝らなくていいんだよ。ほら、俺が詩織に返事しないから悪いんだよね。」
思っている事を言ったらなんかすきっきりした。
「いいの。ゴメンね、いきなり告って。歩が好きなのにね、、、あたしは、謝れてすっきりした。歩に電話して、3人で食べに行こっか。」
そう詩織が言った時に、司の口が勝手に話し出していた。
歩は、他の奴好きみたいだし。気にしないで。あと、返事だけど、、俺も詩織が好きだよ。」
「、、いいよ、いまさら気をつかわないでさ。」
「俺は、本気だよ。詩織。」
何でこんな事を言ったか分からないが気付いたら発っしていた。
「付き合って、もし、別れたら気まずくなって友達に戻れないってずっと考えてた。でも、俺は分かったんだ。別れなければ、いい。それに、好きな気持ちに嘘はつけないんだ。」
「ありがとっ。」
また、詩織は泣いていた。夏と1番違うのは、嬉しくて泣いている事だ。
月に微かに照らされた公園を2人きりで歩いた。
その時、公園の時間は2人を中心に廻ってるようだった。